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日本で報酬を上げるべきなのは経営者だけではない

茹でガエル日本への処方箋(5)日本の給与水準はおかしい

小林喜光
株式会社三菱ケミカルホールディングス 取締役会長
情報・テキスト
官僚や教授など、社会で活躍すべき人材の給与水準が、日本はあまりに安すぎる。シンガポールの官僚は1億円以上もらっているのに、日本は総理大臣でも3000万円。グーグルの初任給が3000万円、4000万円なのに、日本の教授は1000万円。これでは優秀な人材が集められるはずがない。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:09:39
収録日:2019/05/14
追加日:2019/09/02
≪全文≫

●「優秀な人の給与水準」があまりに低すぎる


―― 財務省の主計局もかわいそうなのは、とりあえず2~3年で変わるから、たまたまなって、半年間くらい猛烈に勉強して、それで転がすので、そのやり方では頭のいい人もロングランで考えられない。くるくる回されていったら。もったいないですよね。良い人材はいるはずなのですが。

小林:いまや、東大法学部を出ても、財務省になかなか行かない。行くのは、アクセンチュアなどといった海外のコンサルティング。日本ではせいぜい商社にしか行かないという。何か、次を暗示していますよね。

 やはり優秀な人間は日本の政策に関与してほしいですよね。

―― それが結局、国民のために一番なりますよね。

小林:なると思うのです。これでは先行き危ないのではないかと思います。

 もう一つ、コンペンセーションプランというか、企業の報酬体系ですが、日本の大企業の経営者の平均が1億円強、アメリカが14億円。大体10倍以上ですね。だから、日本のコーポレートガバナンスも、報酬をもっと上げるべきだと海外の方々もいいます。そうすれば、もっと、その気になるだろうと。

 しかし逆に一方では、事務次官が二千数百万円。大学教授が優秀な人も、たいして優秀でない方も一千万円ちょっとではないですか。そういう社会のなかで、民間の社長だけがそんなにもらっていいのか。ここもすごく大きな問題だと思います。

 AIの時代に、統計とかデータをきちんと解析できるスペシャリストを、アメリカなり国内でも優秀な人を取ろうとしたら、4000万円から5000万円出さないと来てくれないですよね、向こうの人は。1000万円では、ロクな人が来てくれませんよ。無理でしょう。そういうことを、もっと本当に真剣に考えないと。

―― 防衛省が、いくらサイバーセキュリティユニットをつくろうとしても、資格をつくれないから、ようやく尉官と並べるくらいでは来ないですよね。

小林:来ないと思いますよ。たとえば、イスラエルの優秀な人間を何人かリクルートしようと思っても無理です。アメリカへ行って、平気で一億円くらいもらっているわけですから。グーグルの初任給が2000万円~3000万円の時代に、日本の大学教授が1000万円というのは、無理というものです。シンガポールの官僚でも1億くらいもらっているじゃないですか。民間の社長、CEOの給与が安いという以前に、日本の総理大臣が3000万円くらいしかもらわないという状況、これも相当な問題だと思いますよ。

―― これ以上、パブリックセクターを安く抑えるというのは、かえって誤りますよね。

小林:そのような気がします。その代わり、できる人とできない人は、もっとはっきり区別しないと。そうするとまた「平等じゃない」というようなことを言いますが、それは結果の差なのですから。

―― キャリアのなかでも、一軍、二軍、三軍といまは一応分かれていますが、給与は年次でやるからほぼ同じです。

小林:出世の早さだけは違いますがね。この時代に、そこももう限界に来ているような気がします。中国などは、全然大きな差ですからね。

―― 中国共産党は、なんだかんだいっても、一番やる気がある人間が集まっていますよね。あれを見ていたときに、本来、2億円くらいもらえる人が、定年まで勤めて2300万円だったら、やらないですよね。

小林:「武士は食わねど高楊枝、学者も霞(かすみ)を食って生きるんだ」などという明治以来のメンタリティを変えていかないと。このグローバルの競争社会では、理念はいいのですが、非常に難しいような気がします。社会全体を底上げしないと。みんなが霞を食って、みんなが我慢してしまっているのが日本だと思います。それでメンタリティは茹でガエルだと。

―― たしかにそうですよね。特に霞が関はいちばん割を食った、東大の先生もいちばん割を食った。年齢×20万円ではやってられないですよね。

小林:たまたま民間セクターに来て、たまたま社長になった人が、そういう人たちの10倍、20倍取るというのは、やはり変ですよ、これは逆に。

―― たしかにそれだと、余計にギクシャクするでしょう。全体の底上げをやらないかぎり回らないですね。


●いかにして経済社会システムをもう一回、設計しなおすか


小林:この前、早稲田会議というものがありまして、日本のコーポレ-トガバナンスと報酬というテーマで議論しました。海外からは「上げろ、上げろ」といわれる。相対的に、日本とアメリカのあいだがヨーロッパで、日本は十分の一。これではインセンティブがまったく働かない。そういうことを経営者の中だけで議論しているのです。

 しかし、ちょっと待ってくれ、と思いました。この国にいるCEOという立場で考えていかないと、先ほどの農耕民族の文化文明がありますから、簡単に経営者だけを...
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