●それでも「サステナビリティ」に関連するものはやりつづける
―― 「公益資本主義」を唱える、原丈人さんは?
小林:昔、けっこういろいろ議論しましたよ。基本的には(公益資本主義を)、なんとか数値化したいのですが、数値化はそう簡単にいかないですね。
私は3軸経営【※注、(1)「MOS(サステナビリティの向上をめざす経営/Management of Sustainability)」、(2)「MOT(イノベーション創出を追求する経営/Management of Technology)」、(3)「MOE(資本の効率化を重視する経営/Management of Economics)」】ということをいっていますが、MOEは簿記で表現できる。キャッシュフローであり、バランスシートであり、プロフィット&ロスであり、全部数字で表現できる。MOTもそこそこ、わが社でも数値化して導入しようとしている。
原さんのいう公益資本主義、私のいうMOSや、Z軸というか社会性の軸は、これを定量化するのが、まだまだ大きなテーマだと思います。
サステナビリティという意味でいえば、国家も同じです。GDP(富)を増やしていく部分と、アフリカを含めフロンティアを開発し、また、テクノロジーのフロンティアを開発していき、それで社会を変えていくという意味合いがあります。もう一つ、Z軸というのは、財政の健全化、あるいは安全保障、あるいは教育、ありとあらゆる持続可能性ですよね。これも、やはりX(GDP)は数値で出てくる。この数値も、かなりいい加減に「名目3.0パーセント、実質2.0パーセント」「こんなに成長するからお金を使おう」などとやっている人もいますが、少なくとも数値化できる。Y軸もできる。しかしZ軸は難しい。財政の健全化はかなり数値化できますが、今回の消費税も、非常に政治的なファクターが多い。防衛もしかり。あるいは社会性という意味で、いちばん明確であるCO2の削減もしかり。
いま最大の課題は、原さんのいう公益資本主義、僕のいうMOSの「定量化」だと思うのです。はっきりと差を明確にしていく。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などは石炭火力は使うなといい、金融系のイングランド銀行なども、石炭火力をやったら投資しないなどといってくる。また、海中のプラスチックデブリをどう回収するかということもあれば、新たなプラスチックはもう、どんどんは作らないということもある。そのようなものを、定量的なところで規...