テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

格差の小さい「幸せになれる社会」をつくるために

日本のイノベーションのために(3)鎖国状態を解決する

情報・テキスト
日本経済停滞の一因は、国際感覚の欠如にある。これによって成長が止まってしまった。それゆえ、海外の情報を積極的に入手することで、鎖国状態から脱することができるだろう。しかし海外のやり方を真似するだけでなく、世界中で進行している格差に抗うために、日本は人々が幸福になれる社会を作っていく必要がある。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:08:39
収録日:2019/07/19
追加日:2019/09/19
キーワード:
≪全文≫

●東京の一極集中は、日本をつぶすことになる


―― 結局、地域を再生するって、少子化にとって一番効くということですね。東京はやっぱり子どもを育てるにも適したところじゃないですよね。

小宮山 今、もう数字で表れています。日本は、平均出生率(合計特殊出生率)が1.4くらいですよね、出生率が2にならないと日本がなくなるわけです。だから最大の課題ですよ。さらに、出生率が1.5~1.7くらいの地方から若い人が東京に来、1人しか子どもを作らない、という状況になる。

 だから、東京の一極集中というのは、日本がつぶれる、ということ。今それが進んでいて、地方にいろいろ行ってみれば、実感しますよ。

―― おっしゃる通りですね。


●国際感覚が非常に重要である


小宮山 ただ、逆にいうと、それはチャンスがあるということ。

―― 私は蔵王で観光大使を二十数年やっていますけど、若い人がだんだんいなくなってきて、くるところまできているという感じです。だけど、すごく面白いことに、「ニセコ」モデルのスモールバージョンを持ってこさせていただいたら、外国人がいっぱいきますので、地元の60歳を過ぎた人が、自分で英語のマニュアルを持っていて、「レンタルの受け答え」、「スキーを教えるための受け答え」ができる人がかなり多いエリアになり始めたんです。

小宮山 そうですか。

―― すごく分かりやすくて、海外から来る人は一番新しい板と、新しいウェアを着ている。年齢的にも、30代、40代、50代。それから、滞在期間は1週間~10日間で、お金を持っている、と。日本人で来るのは60歳すぎの人がメインで、10年前~20年前の板やウェアを着ている。しかも、あまりお金は使わない。それを見ていた地元の人たちが、「どういう人たちが自分たちの客なのか」、ということがだんだん分かってきた。

 そうすると、スキーの技術よりも、若干の英語ができるということが、稼げるということになりますよね。日本の正月よりも中国の春節の方が、はるかに人が来るし、はるかに儲かる。海外の人たちなら一食あたり5,000円~1万円ほど使ってくれるところが、日本の人は1,000円くらいで終わっちゃう、と。そういう意味では、国際感覚のある人が、海外の人たちと接することによってチャンスが出てきているということですね。

小宮山 確かに国際感覚って非常に重要ですよ。ニセコがオーストラリアから人が集まる、ということで、自然と国際化している、と。これも一つも国際化です。

 日本語でしゃべると相手には英語で伝わるというような、音声翻訳機を用いても良いのです。


●日本が次のステップへ行くために


小宮山 それからさらにいうと、最近日経の記事でFT(フィナンシャルタイムズ)の翻訳が出ますが、あの記事が一番面白い。この間、ジリアン・テットの記事が出ていたのですが、この人は『サイロ・エフェクト』という面白い本を書いた、FTのEditor in Chief(編集長)を務めた女性です。彼女が書いたものは、非常に触発されるような記事でした。いずれにしても、どのような形であれ鎖国状態を解決しなければなりません。

―― 日本って豊かになった1980年代以降って鎖国なんですよね。マインドも鎖国だし、知らない間に鎖国して、先生がさっき言われたように“日本株式会社”がイノベーションのジレンマに陥っているうちに追い越されたわけですよね。

 全く止まっている間に、自分よりも下にいたと思っていた国が、自分よりか3倍くらいになっている、と。一方、日本は全く成長しなくなった。もちろん、英語を少しでも読めさえすれば、状況は違ったかもしれません。しかしFTなど、見出しも読めない人が多いのが現状で、それで遅れてしまった、と。

小宮山 そういうのをいろいろ見れば、次のステップに行けると思うんですよ。というのは、だいたい今までの流れを見てみると、20世紀に入ってから、アメリカが引っ張ったわけです。それで、日本が初めて追いつくモデルを作ったんですよ。それを中国が真似しているわけだし、韓国だって、東南アジアだって、南米だって、みんな同様です。ただ、そうしていけるところというのはトップまで、つまり真似するところまでなんです。

 だから、よく言われるのが、オランダからイギリスを経由して、アメリカに覇権が来て、「この後、覇権がどこになるんだ」という議論で、「中国だ」と言う人がいるけど、僕はそうはならないと思っている。中国は日本と同じで、真似をしているだけですから。ただ、人口は多いからある程度なところまで行きますけど、いろいろ問題がある。

 その先をどこがやるか、というと、僕は日本にチャンスがあると思います。1980年代くらいから後、日本は40年間ほど停滞しているわけですよ。そのことに、もう少し皆...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。