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健康長寿の究極は予防歯科である

歯科の健康づくり(4)「生活の医療」としての歯科医療

対談 | 河原英雄上濱正
概要・テキスト
入れ歯の調整や口腔ケアによる機能再建や寝たきりからの自立を示す症例がいろいろと報告されているが、そこからは生きる意欲の回復もうかがえる。歯科医療は「命の医療」ではないというが、介護環境や医療費にも関わる「生活の医療」といえるだろう。(全4話中第4話)
※音声による補足解説:上濱正(日本顎咬合学会 元理事長)
時間:10:07
収録日:2019/11/14
追加日:2020/06/15
≪全文≫

●短時間の入れ歯調整で、リンゴを食べられるように


河原 今回紹介するのは、介護施設でほとんど寝たきりで過ごしていた方で、うまく噛むことができませんでした。視覚障害があり、斜頸で車椅子を使用していました。たまたま入れ歯を持っていたので、その入れ歯を調整し、1時間半ほど待っていただきました。

 その後、リンゴを食べさせてみました。完全に斜頸になっている方だったのですが、噛む筋肉を使うにつれて、首の角度が変わっていきました。この患者さんだけでなく、若い先生からも、こうした症例がたくさん報告されています。噛ませるようになってから、首が元気になった、目が元気になった、歩き出した、といった症例です。立ち上がった、寝たきりから起き上がった、というものもあります。今、若い先生は、介護施設に行って、こうした方々を元気にする取り組みを頑張ってやっています。リンゴをそのまま丸かじりしてもらおうとしましたが、それは無理でした。

噛もうとすることによって、完全に変わっていきました。
 こんなものではありません。あてていた枕がいらなくなったりしました。2ヶ月後には、何も薬を飲ませずに、ただ噛ませただけで、非常に元気になりました。


●物を食べる意欲の向上が見られる


――(上濱) リンゴを食べるシーンについて解説したいと思います。ここでは、意欲が向上しています。自分でリンゴを持って、あるいは食べさせることによって、食べることができるようになりました。噛めなかったリンゴが噛めるようになり、この患者さんはおそらく、自信をお持ちになったと思います。「ああ、噛めるんだ」と。脳がこの時、そう判断しているのです。しかも、「このリンゴを噛んだら飲み込んで良いのだ」と、安全性が確立されたことを判断し、それによって嚥下して、飲み込んでいるということです。

 現在、誤嚥性肺炎が問題になっています。安心して噛んで食べられないと、嚥下を行うことができません。一方、この方はさらに、噛んで食べて美味しいと感じたり、音がシャキシャキ鳴ることを聴いたりすることができています。目が見えない中(視覚がなくとも)、脳は音や匂い、味、硬さという4つの感覚で判断することができるのです。
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