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入れ歯治療によって克服された4つの障害

歯科の健康づくり(3)入れ歯治療による4障害の克服

対談 | 河原英雄上濱正
概要・テキスト
認知症患者である81歳男性が入れ歯治療で快復していくケースを見ていく。家では寝たきりであったこの男性は、入れ歯治療によって噛んで食べる喜びを思い出し、最終的には歩けるようになった。この症例から分かるのは、噛んで食べることができるようになると、4つの障害を克服することができるということである。(全4話中第3話)
※音声による補足解説:上濱正(日本顎咬合学会 元理事長)
時間:06:39
収録日:2019/11/14
追加日:2020/06/08
キーワード:
≪全文≫

●認知症患者である81歳男性の、入れ歯を作り直す


河原 噛めない患者さんへの対応としてはどのようなものがあるでしょうか。

 1つ目のケースは脳血管疾患から退院後3年たった、81歳男性です。入れ歯はすでにひどい状態でした。

家族は「なんとか物を食べられるようにしてほしい」と考え、お連れになりました。

 これは私の病院です。うまく歩けない、よく噛めない、喋らないという状態でした。退院後3年は、訪問介護を拒否、通院も拒否、投薬も拒否という状態で、薬も飲まず、認知症でした。家の中ではほとんど寝たきりで、ゴロゴロしているような状態でした。治療期間に3ヶ月かかりました。理由は、私が忙しかったのもありますし、患者自身にも高齢者ということでそれなりの理由がありました。


●新しい入れ歯で元気になったが、脳梗塞で亡くなる


河原 なんとか入れ歯を作ってみようということになりました。とはいえ、歩くことを忘れていたため、レントゲンを撮ろうと思ってもうまくいきません。このままでは時間の無駄になるので、私が引きずって行きました。

 当時、高齢者虐待だと介護の方から言われたのですが、われわれはこうした高齢者の扱いなどについて、本当に知りませんでした。若い先生は、これからこうしたことについても、勉強しなければなりません。こうして、新しく入れ歯を作りました。

 作ってなんとか噛ませました。初めて言った言葉は、「おいしい」でした。それまで一切喋りませんでしたが、この時、初めて喋ったのです。襟が綺麗であるところからも、家族の方の協力が分かります。ご家族の協力が必要なのです。

 目がすっきりしていきました。入れ歯の使い方を、じわじわと練習していきました。練習しなくとも、歩けるようにもなっていきました。本来は自分で歩けるはずなのですが、いつも介護の方が引っ張ってあげていました。

 この方は、若い時には、いろいろと遊んでいたようです。奥さんがすごく偉かったと思います。やはり家族の協力が必要です。2ヶ月後、引きずられたことも完全に忘れていました。ガムを噛ませて、脳のトレーニングをしました。笑顔が出てきました。この時、初めて1人で歩きました。私が引きずったことをよく知る方が、「はい、1人で歩いてみて」と言い...
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