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社員を幸せにする「幸福経営」は欧米では常識となっている

「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(2)年収・寿命・仕事と幸せの関係

前野隆司
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
概要・テキスト
幸せのために必要なものとしてまず浮かぶのはお金だが、実は年収が平均値あたりを超えると、年収と幸せの間に相関が見られなくなる。次に寿命との関係だが、幸せに気をつけると健康で長寿になり、また年齢が高くなればなるほど幸せを感じやすくなることが分かっている。3つ目は仕事との関係だが、幸せな社員は創造性・生産性が非常に高いということで、欧米では社員を幸せにする「幸福経営」は常識となっている。(全7話中第2話)
時間:08:09
収録日:2020/07/01
追加日:2020/08/11
キーワード:
≪全文≫

●年収が平均値を超えると年収と幸せの相関はなくなる


 次は、皆さんも気になると思いますが、年収と幸せの関係です。横軸に年収をとり、縦軸に幸せをとると、年収が増えるほど幸せになるという関係があると思われるでしょう。

 しかし実は、この図に示したように、年収が上がるにつれて幸福は上がるものの、その上がり幅は徐々に小さくなるという、限界効用逓減の法則に似たカーブを示します。本当に収入が少ないときには、お金もない、食べるものもない、家もないという状態なので、非常に幸福度は低くなります。そのような欠乏状態にあるときは、年収が増えるにつれて、幸福度は急速に上がっていきます。ところが、年収の平均値あたりを超えると、上がり幅がかなり小さくなり、もはや年収と幸せの相関はないという水準にまで至ります。アメリカの場合、平均年収7万5000ドル(日本円にして約800万円)を超えると、年収と幸せの間に相関が見られないという研究結果を、ノーベル賞を獲得したダニエル・カーネマン氏が出しています。

 右側に示したように、日本でもディーナー氏や大石繁宏氏(ヴァージニア大学心理学部教授)などの研究があります。どの程度お金が稼げていればいいのか気になりますが、私からすると額自体はあまり問題にする必要はありません。2つの変数の関係が、ここに示したようなカーブを描くことが重要です。つまり、皆さんの収入がどの程度であれ、収入が少ないときから増えてきたときに比べると、それからさらに増えていくときのほうが幸福度の上昇率は低いということです。ですので、いくら大金持ちになることを目ざしても、実はそれだけでは幸せになれないということなのです。

 他にも、研究結果はいろいろあります。例えば、宝くじに当選した人は、もちろん幸せになる人もいるでしょうが、平均値としては当選しなかった人よりも不幸になるという研究結果があるのです。ということは、宝くじを買ったときには、はずれることを願ったほうがいいということになります。それなら買わないほうがいいと思いますが、要するに、トラブルなどさまざまなことが起きるのだろうということで、当選すると幸せになれないという結果が、統計値としては出ています。


●幸せに気をつけると健康で長寿になる


 次に、前回から指摘している寿命との関係について...
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