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コロナ対策において大事なことは「責任」と「比較優位」

新型コロナウイルス対策~和歌山モデルの教訓(10)ポストコロナにおける国と地方の関係

仁坂吉伸
元和歌山県知事
概要・テキスト
よく「地方分散」といわれるが、何でも地方に移せばいいというものではない。基準認証の権限や規制の権限などを地方に移せば、県ごとに基準や規制が違うことになりかねず、企業活動が不便になる。国がキープする部分と任せる部分を賢く分けるべきで、国も地方も自分たちに権限があるところは自分たちで責任を取ることが重要。同時に、国と地方それぞれの優位な点を認識し、お互いを尊重しながら協力し合えばいい。(全10話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:41
収録日:2020/07/30
追加日:2020/09/06
キーワード:
≪全文≫

●「何でも中央から地方に移せばいい」は間違い


―― 最後の質問ですが、テンミニッツTVの小宮山宏座長がよく「自律分散協調系」という言葉をお使いになっています。まさに今後、ポストコロナの時代には、そういうあり方を模索しなければならないとご提言されています。

 この自律分散協調系という考え方を前提とした場合、今後、国と地方はどのような関係にあるべきだとお考えでしょう。

仁坂 さすが小宮山先生、素晴らしい言葉をおつくりになりました。自律も大事だし、分散も大事、協調も大事ということだと思います。

 よく「地方分散」といわれます。そこから「何でも、中央から地方に移せばいい。そうすれば日本の今までの問題点は解決される」と議論される方が多いのです。「ガラガラポンすればいいのではないか」という議論はいつの時代でもありますが、われわれはもう少し真面目に考える必要があります。真面目に考えたら、地方分散にはいいところもあるし、悪いところもあります。

 悪いところは、例えば何でもかんでも地方へ移すとなって、基準認証の権限、規制の権限などを地方に移したとします。すると地方の首長、例えば私のような人は選挙で選ばれているので、人気が大事です。人気が出るようなことをやりかねない。例えば基準認証でも人々の共感を得るようなことを、パッとやってしまう。しかも、その地域だけでやってしまう。するとAという県とBという県で、基準認証が違ってくる可能性があります。これは企業活動からすると、ものすごく不便なのです。

 日本は単一の市場に1億2000万人の良質な消費者がいたから、企業が発展した面もあります。ヨーロッパは「日本に負けてたまるか」と思っていましたが、一つひとつの国が、(現時点でGDPが)最高のドイツでも8000万人ぐらいです。当時は西ドイツで5000万人ぐらいでした。

 そういう国が4つぐらいあるイメージで、それぞれが別々の基準認証と別々の企業活動の範囲を設定していたら各個撃破され、1億2000万人の日本に負けてしまう。これが実はEU統合の原動力だったと、私は思っています。結果的に3億6000万人の単一市場ができ、アメリカも2億数千万人の単一市場があります。

 そうすると、その中の地域を同体にして活動できる地域と、ナショナル一国で活動する場合と、どちらが有利かというと、大きいところです。自分のところのマザー市場を...
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