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フランス革命期における急進派の動きは歴史的必然なのか

独裁の世界史~フランス革命編(3)革命はなぜ急進的になるのか

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
概要・テキスト
ロベスピエール
ルイ16世のパリ脱出は、国民を失望させる。革命派は、諸外国の干渉をはねのけようと「革命戦争」を起こすが、失敗。この間にも王家と諸外国の内通が疑われ、王政廃止と国王夫妻の処刑が断行される。 革命プロセスが先鋭化するのは歴史が物語るように運命なのだろうか。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:13:50
収録日:2020/01/10
追加日:2020/09/25
カテゴリー:
≪全文≫

●革命プロセスの先鋭化は、歴史的運命なのか


―― 歴史においては、いろいろと歯車のズレるところが出てくるものかと感じました。例えばフランスで暴動が起きた当時、もしも啓蒙思想がなかったとすれば、周りの諸外国からは単に「食糧暴動が起こった」と見られていたかもしれません。

 ところが、実際には周りが全て縁戚関係で固められていることもあるのでしょうが、すぐに「王政の危機が来る」と捉えられる。例えばオーストリア皇帝のレオポルト2世(神聖ローマ皇帝)とフリードリヒ・ヴィルヘルム2世(プロイセン王)がピルニッツ宣言を出し、「王に危害を加えたらフランスに干渉するぞ」と言ってきます。

 そのためにフランス国内のほうも構えてしまい、革命派の中で「外国と戦うか、恭順するか」の議論になります。結果は主戦派であるジロンド派が政権を取り、戦ったのはいいけれども負けてしまいます。これでますます危機が募り、どんどん悪い方向に進んでいくことになります。

 革命プロセスの歴史的な運命(さだめ)というのでしょうか。敵と味方が明確になり、どんどん先鋭になってしまう。このことは、歴史的にはどのように見ればよろしいのでしょうか。

本村 革命思想というか啓蒙思想がなければ、フランス革命は起こりようがないと思うので、それ(「もしも啓蒙思想がなかったら」ということ)を前提にするのは難しいとは思います。

 例えばフランス革命以前の時代ですが、ロシアには西欧化を進めていくツァーリとしてピョートル大帝が出てきます。ロシアから見ると、ヨーロッパはやはり教育の面でも組織化された軍隊制度の面でも、様々に先進的に映りました。ピョートル大帝は若い頃、使節団に紛れ込んでイギリスに留学したりして、その様をつぶさに見ました。

 このように、フランス以外の国でも、あの時代の王侯貴族たちは皆、啓蒙思想の洗礼を受けていたわけです。そうした中で、実際に王侯貴族に手を出すことは威嚇であり、脅しのしるしになります。ですから、単純に対立する形ではなく、もっと大きな構造で見たほうがいい。

 18世紀には、民衆ですら王権を否定するのではなく、王権すなわちトップに立つ人たちはかくあるべきだという思想を持っており、そういうものの見方が生まれていたということです。ただし、実際に王侯貴族の立場になれば、どこかの王族が殺されたときには自分たちも...
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