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欧米の世論調査も劇的に悪化…世界の中で孤立する中国

対中国戦略・日本の決定的な決断(3)孤立する中国

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
情報・テキスト
奇跡の経済成長を遂げ、米国と並ぶ大国になった中国だが、コロナ以来の強硬姿勢が国際社会の信頼を失い、孤立の道を進んでいると中西氏は指摘する。この状況で米国との対決姿勢をとることはきわめて危険だ。中国国内においては、習近平政権批判が芽吹き始めた兆候が見られるとの声も出ている。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:44
収録日:2021/04/23
追加日:2021/06/02
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≪全文≫

●世界の中で孤立しつつある中国の窮状


―― 今回の首脳会談ないし3月の「2プラス2」において、日本は覚悟を固めて旗幟を鮮明にしたということになりますと、その後の展開が気になります。これはシミュレーション的になるかもしれませんが、中国側はどういう動きをしてくるのか、あるいは中国側からみると、どういう手を打つのが一番効果的だと思われますか。

中西 日米の今回の首脳会談だけではなく、もう少しグローバルに世界中を見渡してみると、中国外交は今、大変不利な孤立状態に陥ろうとしていると読み取れると思います。おそらく中国当局あるいは習近平指導部は、そのことについてうすうすか、はっきりかは分かりませんが、気がつき始めていると思うのです。

 日本ではあまり報道されませんけれども、2020年という年は欧米諸国、特にヨーロッパ諸国が決定的に反中国や中国脅威論に固まった年になったわけです。これはもう、たぶん後戻りはしないと思います。

 ここに、ある興味深い世論調査の結果があります。有名な世論調査機関で、ピュー・リサーチ・センターというところが2020年に欧米で行った世論調査です。その中で、例えばイギリスで「中国は好ましくない国だ」と答える人の割合が、2017年には37パーセントだったのが、2020年の夏には74パーセントと、ちょうど倍増しているのです。

―― 倍増ですね。

中西 ええ。これはイギリスだけではありません。アメリカも同じで、17年には47パーセントのアメリカ人が「中国は好ましくない」と思っていたのが、3年後には73パーセントがそう思うようになった。ドイツでは53パーセントが71パーセントに、スウェーデンでは49パーセントが85パーセントになった。

―― また、これもすごいですね。

中西 カナダ人は40パーセントが73パーセントになった。ちなみにオーストラリア人は、2017年は32パーセントだったのが、2020年には実に81パーセントと大幅に増えてしまった。これは「大きな」という言葉ではちょっとカバーできないほど、画期的な地殻変動です。中国に対して、ヨーロッパ諸国やカナダ、オーストラリア、アメリカといった国々が、ここまで態度を変えたということは、歴史的に見て、日本としてもやはり大いに注目すべきことなのです。


●戦狼外交によって孤立を深める中国


中西 日本は同じ文脈では語れませんけれども、私はいずれにしても、こういう変化を中国当局、習近平指導部は、いち早くつかんでいると思います。例えば2020年の夏頃ですが、「新型コロナウイルスの発生源は中国だ」という中国叩きのような言説が世界中で広がったことに対して屈服してはならない、きちんと言い返して反論しなければいけないということで、かなり強硬な中国の反撃外交が展開されました。

―― 中国からは「アメリカが持ち込んだ」というような主張もありましたよね、

中西 ええ、そう主張しました。あの頃は「戦狼外交」といって、中国が非常に外交的に強硬策に出た時期でした。だから、そういうこともあったからかもしれませんが、それによってますます中国は世界の主要国からそっぽを向かれるようになった。「中国は危険な国だ」という思いをする人々が、世界のリーダーの中にも急増したわけです。

 ちなみに、似たような世論調査の傾向は他の地域でも見られます。ここまで高い数字にはなっていませんが、ASEANの有識者調査なども似たような結果を出しています。シンガポールやマレーシアといった国々が中心ですが、私が驚いたのは「もしアメリカか中国のどちらかを選ばなければならないとしたら」の設問で、「アメリカを選ぶ」と答えたASEAN諸国の有識者の数が意外なほど高くなっていたのです。

―― そうですか。

中西 いろいろな報道で日本にも紹介されていますが、これはやはり重要な指標だと思います。

 中国外交は、2020年度はあれほど有利に展開しているように見えたけれども、ここへ来てかなり世界から孤立し始めています。こういう場合に中国外交としては、今アメリカと正面切って対決の姿勢を続けることは、賢明ではないでしょう。


●国内批判も芽吹き、慎重路戦を取らざるを得ない習近平


中西 おそらくそれは中国の国内体制にもあるだろうと、私は思います。習近平指導部が国内の批判にさらされ始めているのではないかという兆候も見えているからです。これはいくつかの指標がありますが、後でまた関連した話が出てくれば、内政上の問題として述べたいと思います。

 日本では先日、温家宝首相の論文について報道がありました。彼はもう7~8年前、胡錦濤政権の時代に中国の首相を務めた人物ですが、最近マカオの新聞に文化大革命時代を痛烈に批判する論文を寄稿したのです。文化大革命というと、今の中国では「習近平主席が称賛してやまない文化大革命」と思い...
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