●中国の人口減少に対し、アメリカは増え続ける可能性がある
―― 日本の幕末もそうですが、社会が崩れたり、変革が進んでいったりしたときは、体制を変革して追いつくのか、あるいは何か新しいものができるのでしょうか。これにはいろいろな局面があり得るとは思います。
今のバイデン政権の4年という期間や、先生が最後におっしゃったトランプ氏のいろいろな動きを考えたときに、どうなるのかということです。ここを先生はどのようにお考えですか。
小原 これはなかなか予想が難しいと思います。構造的な問題はそう簡単に変わらないと思います。他方で人口を見てみると、実は中国の人口は今、大変な問題に直面しています。要するに、これから人口が減っていく予想がもうかなり確実になってきているのです。
―― 日本以上の少子高齢社会になるということですか。
小原 最も大きな問題は、豊かになる前に歳を取る、すなわち高齢社会に入るということです。これは西側先進国では違います。日本やアメリカ、ヨーロッパにしても、豊かになってから高齢化が進みました。そうなる前ということが非常に大きな問題です。
この結果、例えば年金のファンドが枯渇して、大変なことになるという問題も含めて、社会的な将来の不確実性が生まれてきます。こうした問題を中国は今、抱えているのです。
アメリカの場合は、先ほどのトランプ氏のような排外的な思想はもちろんありますが、全体として見れば、外からの働く意欲のあるいろいろな移民を受け入れることにアメリカの強さがあります。それが結果的にアメリカ経済の発展に貢献します。全体としては、こうした移民を歓迎するほうが主流になっていると私は思います。
そういう意味でいうと、ひょっとして中国はアメリカを2028年ぐらいに追い抜くかもしれません。しかし、長い目で見たときに、ひょっとしたらそれは一時期で、その後、アメリカがまた抜き返すかもしれません。なぜなら、アメリカの人口は増え続ける可能性があるからです。
●いまだに敗北を認めないトランプ陣営
今は見通しがなかなか難しいですが、短期的に見れば、次の中間選挙と大統領選挙がどうなるのかは、われわれが見ないといけない一つの時間的な軸です。それを見ると、もちろん一部は反乱を起こしていますが、やはりトランプ氏の動きに対して共和党の支持がどれだけ広がっていくのかという点が注目されます。トランプ支持は岩盤支持層と言われていますが、それがどのくらい続くのか、ということです。共和党の強い州では郵便投票を認めないという法律もできています。
メアリー・トランプという彼の姪っ子が、「負けたくないから立候補しないだろう」と言ったらしいのですが、そうした流れも含めて、トランプ本人が2024年に立候補するのかしないのかが注目されます。
しかし、そもそも彼は負けたことをいまだに認めていません。フロリダであれだけ大きな事故があったにもかかわらず、「ボストンとワシントンぐらい離れているから良いじゃないか」と言って、この間もオレゴンでラリーをやりました。そこで「あの選挙はインチキだ」とまたわーわー言っているわけです。
ちなみに、ジョージアという州があって、そこが最後に上院の議席を決めました。民主党が残りの2席を取ってしまった結果、50:50になり、最終的な決定はハリス副大統領が上院議長として決めるという話になりました。その結果、過半数の上院を民主党が取りました。
するとトランプ氏は、「今の共和党のジョージア州の知事はダメだ」「あいつは俺がよく票を探せと言ったのに、きちんとやらなかった」と言います。「民主党の負けた候補のほうが良い知事になったかもしれない」とまで言い出しました。その負けた(民主党の)彼女は、バイデン氏が大統領選で勝った際にジョージアで中心になって活躍した人です。ジョージアで取った2議席で彼女が頑張ったのです。
要するに、そのあたりについて、彼の言っていることは全く無茶苦茶です。しかし、彼についていっている人たちは、彼が言っていることを本当に全部信じているのでしょう。今、こういった状況が出てきているのです。
どうも両者(バイデン氏、トランプ氏)ともこれだけの歳なので、それも不確実性の一部と考えれば、このあとの3年先ぐらいを考えていくのは結構いろいろな不確実要素がある気がします。
●今、問われているのは政府と市場の関係
―― そうした中で、まずはこの4年の間に、バイデンの政権がどう動いていくかということです。一つのポイントとして、かなり大きな政府の方向に舵を切っているところがあると思います。これは今までのアメリカの政治の流れだと、例えばレーガン氏は小さな政府をずいぶん強調していま...