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「非ナチ化」というプーチンの演説とプロパガンダの意味

ウクライナ侵略で一変した国際政治(2)地政学とロシアの行動原理

小原雅博
東京大学名誉教授
概要・テキスト
ウクライナ侵攻開始時のプーチン大統領演説は、冷戦以降の歴史的経緯、ロシア周辺の地政学、さらにはロシア人の行動原理を知らなければ理解できない。今回はプーチンが口にした「NATOの脅威」について、あるいは「ウクライナをナチ政権と呼ぶ」根拠はどのあたりにあるのか、ご解説いただく。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:17:04
収録日:2022/05/10
追加日:2022/06/03
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≪全文≫

●ロシア周辺の地政学を見る


小原 今回のウクライナ戦争を始めるにあたって、プーチンは「NATOはわれわれにとって大変な脅威である。NATOがわれわれのすぐそばにまで迫ってきて軍事インフラを配置し、まさにロシアを攻撃しようとしている。ウクライナは、まさにナチ政権だ」と演説を行いました。

 そういうわけで、その背後でこの問題をどう解釈するかは双方違うのですが、そこにはそうした歴史があるのです。

 そして、この地図にあるように、地政学もこれに絡んでくるわけです。

―― これは、ロシアに大きな三角がありますが、この地図はどう見ればいいですか。

小原 はい。この三角は、今のロシアとの関係がいい国です。今回キエフに侵攻するにあたっては、北のほうから軍を出しましたが、この方角にあるのがベラルーシという国です。同盟関係にある国ですが、そうした国々(三角で囲われている国々)。中央アジアの辺りにもあります。これに対して、赤丸がついているのは今まさにウクライナで起きていることと同じで、西側を向いた国です。その中でジョージアは、昔はグルジアといわれていました。

―― トルコの北にある国ですね。

小原 そうです。この国の西北部でロシアと接するところにアブハジア、東南部に南オセチアという地域があります。どちらも独立願望が強いため中央政府との対立があり、紛争が起こっていました。そこに戦争が起きるわけですね。紛争が拡大して、そこにロシアが平和維持軍という形で介入していくわけですが、戦争や紛争が起きている地域はNATOへの加盟が非常に難しいということがあります。ジョージアもウクライナもNATO加盟申請をしていましたが、ジョージアの場合はこのような戦争がありました。また、ウクライナの場合はロシアとの関係もあり、2014年にはクリミア半島併合がありました。さらに、東部でも紛争が起きている。そのようなことで、事実上、今すぐに加盟はできないという難しさがあるわけです。

 ただ、この2国については、将来の加盟に合意するという決定がNATO側からなされています。それが宙ぶらりんになっている中で、今回の全面侵攻が起きたということです。


●緊張の高まる三つの地域


小原 それから、ウクライナの下にモルドバという小さい国があり、ヨーロッパで最も貧しい国といわれています。こ...
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