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プーチン、習近平、トランプ…リーダーの「終わりの始まり」

ポスト冷戦の終焉と日本政治(6)世代交代と民主主義のために

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
情報・テキスト
今、欧米では政治の世界で世代交代が起きつつある。それは同時に、プーチン、習近平、トランプという3人のリーダーが率いた時代の「終わりの始まり」、すなわち行く末が決しつつあるということでもある。この新しい世界への移行期に際し、民主主義国である日本の前にある危機とは何か。そしてそれを乗り越えて目指すべきものは何か――。(全7話中6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:14
収録日:2023/05/24
追加日:2023/08/01
カテゴリー:
≪全文≫

●歴史には「世代交代」が必ずある


―― 先生の『偽りの夜明けを超えて』の本の中で、最近の欧米の政治の潮流として保守の新しい世代が台頭してきている、これが責任ある保守の時代をつくりつつあるのではないか、というご分析がありました。端的にいうと、トランプ氏のような古い発想による排他的な自国第一主義がむしろ国益を損なってしまうということで、かつて穏健派のスローガンだった「啓蒙された自己利益」の新しいバージョンでの追求が始まってきており、そういうものを掲げる若い政治家も出てきているのではないか、というご分析です。

 この動きのご解説と、そういう意味で、責任ある政治の時代が来るのかどうかということでは、先生はいかがお考えでしょうか。

中西 これは明らかに「歴史」、政治に限らずいろいろな分野で人間社会の歩みという意味での「歴史」ということでいえば、「変化してやまない」ということが非常に大きな本質だと思います。どういうことかというと、「世代交代」が必ずあるのです。だから、政治の大きな流れを考えるときに、「世代」が非常に重要な意味を持つのです。

 先ほど来、ずっと見てきた冷戦終焉後の30年、あるいは日本でいえば平成、令和という時代の大きな流れ(古い世代がいったん昭和から平成へと交代し、そうして今、新しい令和の世代へ、ということがそれにあたるのかもしれません)の中で、アメリカやヨーロッパでは「Z世代」という世代が非常に注目されるようになりました。

 先ほどの例でいきますと、2012年から始まった世界激変、世界がハチャメチャになる時代は、ネガティブな意味で歴史上のリーダーになった、あるいはなり続けている3人の人物を中心に議論しました。一人は、プーチン。もう一人は、習近平。そして、トランプ。この3人が、ずっと世界をかき乱した時代だった。

 しかし2022年という年は、この3人の時代が終わった、あるいは終わろうとしている、あるいはいずれ終わるであろうという見通しがついた。この意味で、2012年からの10年間は、やはり一区切りなのだと私は思っています。


●プーチン、習近平、トランプ…その「終わりの始まり」


中西 それはどういうことかというと、2022年に起こったことは、一つはウクライナ戦争です。プーチンにとっては、少なくとも「終わりの始まり」で、このままプーチンは無傷で戦争を終えることはできません。おそらくはプーチン体制は崩壊するでしょう。

 二つ目にトランプですが、トランプは終わった。これは断言できると思います。2021年1月の議会乱入事件のような事件を起こしているわけです。アメリカ国民がいくら分断されていても、やはり多数派は、民主主義の良識は持った人たちです。これは「武闘派」といわれる人たちが増えて、この武闘派の中に、実はZ世代の若者が圧倒的に多いのです。

 これは別にしても、2022年11月の中間選挙の結果にはっきりと出たことは何か。普通は政権党が大負けするのが中間選挙です。特に1期目の政権ならば、どれほど人気のある政党でも大負けの大負けをする。ところが、バイデン政権だけは勝った。上院は勝って、下院は負けているのですが、本当の僅差です。大負けではありません。4、5人ほどが共和党から民主党に鞍替えしたら逆転しかねないほどの僅差です。そういう意味で、トランプはもう出る幕がない。2022年の中間選挙ではトランプが応援した下院議員候補や知事候補は軒並み本選挙で負けているのです。これもはっきりと、潮流を示している。

 習近平のほうは、あえていえば2022年11月のゼロコロナ政策に大転換した時に白紙運動、白い紙を持った人が「習近平やめろ、共産党やめろ」と大声でデモをしました。今の中国であのようなデモをしたら、本当は命も危ないのです。ロシアよりもはるかに徹底した弾圧、強圧体制ですから、全てを監視カメラで見て、AIで「これはどこの誰だ」と分かるわけです。そういった中で、あれだけの反共産党、反習近平運動が出た。これは天安門事件でもなかったことだといわれます。天安門事件は単に「自由をよこせ」と言っただけですが、「共産党をやめろ」とは言わなかった。「習近平打倒」とは言わなかった。

 この三つの出来事から、あの3人の運命は、それぞれ今後生き延びる期間は違うと思いますが、「これで極まったな」という長期の展望は見えた。

 習近平はおそらく2027年に台湾侵攻をするだろうとワシントンでは大方の予測になっていますが、2027年まで習近平がもつか。もつかもしれませんし、あえていえば2030年代まで、ということはあるかもしれません。トランプは、もうすでに終わっていると見ています。プーチンは、2020年代はもたないだろうと思います。この戦争と運命をともにすると思います。


●グローバリゼーションが引き起こした負の遺産...

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