●財源の話を先送りしない
次に、政策論としてものすごく意識したことは、財源の話を先送りしないことです。「財源なくして政策なし」という路線で行こうというのが私の方針でした。これには理由があります。
2011年の夏に、ロンドンで発行している『エコノミスト』という雑誌があるのですが、その『エコノミスト』に「日本化(Japanification)する欧米」とあった。何だろうと思って見たら、イラストがあるのです。当時のドイツ首相アンゲラ・メルケルとアメリカ大統領バラク・オバマの2人が並んで立っている。メルケルはかんざしを挿して着物を着ている。オバマも和服姿です。背景に富士山がある。なぜメルケルとオバマが着物を着て富士山の前に立っているのだろうというイラストです。
中を見ると、当時、欧州ではいわゆる信用不安がギリシャに端を発して次々と広がっている。そのときに欧州のEUの中心国であるドイツ首相メルケルが、やるべきことがたくさんあるのに決断しないで先送りをしている。一方、アメリカは債務上限危機(に面している)。こうなることは明らかに分かっていたのだけれど、オバマはずっと何もせずに傍観して手をこまねいている。先送りをしている。
先送りをすることを「日本化」という表現で書いている特集記事を見て、「これはいけない。国際社会はこのような目で日本を見ているのか」と思いました。だから、もし自分が国のトップになることがあるならば、先送りをしない政治を基本にしようと思ったのです。
●「社会保障と税の一体改革」の真髄――人生前半の社会保障を手厚く
そのときに一番先送りにしてきたことは、やはり「財源論」だったのです。財源が一番必要な分野は社会保障です。あらゆる政策経費があります。防衛費、教育予算、科学技術振興や農業振興などあらゆる政策経費(合わせて「一般歳出」といいます)の半分が社会保障費なのです。
半分もお金を使っているのだけれども、老後の不安、子育ての不安がある。不安の源...