●国家経営の基本として国のトップがまずやるべき仕事は「危機管理」
今日は内閣総理大臣を短い期間、経験させていただいて心がけたこと、念頭に置いていたことを中心に、国家の経営について自分なりにご説明したいと思います。
1つは、まず国家経営の基本は、国のトップの場合、やはりクライシス・マネジメント(危機管理)です。感染症が発生する、テロが起こる、あるいは大きな地震が発生する、北朝鮮からミサイルが飛んでくるかもしれない。このようなときに、国民の命と財産を守るために的確に情報を収集し、的確な指示を速やかに出すことが、国のトップの仕事ではないでしょうか。これが一番大事です。それはまさに24時間365日、どのようなことが起こるか分からないので、緊張感を持って行うことが仕事の中の仕事だと思っています。
そのためには、「公邸」に住むことだったのです。官邸と公邸は違うのです。総理大臣が仕事をする場所が内閣総理大臣官邸。自身や家族が住むところが公邸です。
1929年に総理官邸はできたのですが、官邸の中に総理が住む場所もあったのです。そして、小泉(純一郎)政権になり、つまり今世紀の初め頃に新しい官邸を造ろうとなった。旧官邸は造られてから70年がたったので、新しい官邸を造ろうと。
総理の住む場所を近くに置こうということで、新たに建物を造るのではなく、1929年に造った官邸を引っ張っていったのです。50メートル南下させて、官邸の近くに公邸があるようにした。旧官邸(今の公邸)は地上4階建てです。総重量はおそらく何トンという大きいものです。それを、3年かけて少しずつ引っ張りながら、倒れないように移動させていくという。相当難しい技術だったのですが、50メートル南下させた。そうして今の公邸があるのです。
なぜ近くに総理が住むようにしなければいけないのか。一番情報が集まるところに早く行くためです。官邸の地下1階に危機管理センターがあります。ここに、まず入ることなのです。ここは核シ...