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DATE/ 2017.04.18

なぜ大人になると虫が嫌いになるのか?

 子どもの頃、アリの行列をずっと見ていたり、クワガタやカブトムシを捕ったりして遊んでいたという人は少なくないでしょう。虫は興味の対象で、子ども心をくすぐるものでした。しかし、そんな子ども時代を過ごしていても、大人になるにつれて、いつの間にか虫が嫌いになった人はいませんか。そして、その大半の人は「なんとなく」嫌いになったはずです。

 では、一体なぜ大人になると虫が嫌いになってしまうのでしょうか?その理由を探ってみましょう。

本能的に異質なものを嫌悪してしまう

 人間は本能的に自分と異質なものに対して嫌悪感を抱くようにできています。虫は人間と姿かたちがまったく違い、どんな動きをするか、どんな能力を持っているか、そして自分にどんな影響を与えるのか分かりません。そのため、虫という未知数の存在に対して嫌悪の感情を抱くことは本能としては自然なことといえます。

 ただ、子どもの頃、嫌悪感をあまり抱かないのは、虫に対する知識が乏しく、好奇心の方が勝るからです。私たちは大人になるにつれて、虫についてのさまざまな知識を身につけていきます。例えば、毒をもった虫の危険性を知ると、得体の知れない虫はより敬遠しがちになります。それは自然なことです。

苦い経験から虫全体が嫌悪対象に

 さらに虫にまつわる経験から苦手になるというケースはよく耳にします。夏の終わりに死んでいたという蝉が足元で動いて驚いた、飛んでいた虫が顔にあたった、虫をつぶしたら「ぬめっ」とした感触がした…そうした出来事は不快な出来事としてトラウマになってしまいます。

 またスタッフの中には、こんな経験をした者もいました。子どもの頃、夏休みの家族旅行で海水浴に出掛け近くのバンガローに泊まったのですが、夜出かけようとして部屋を空けた瞬間、蛾の大群が入ってきたそうです。その後、大人たちがなんとか蛾を部屋から追い出して事なきを得たとのことですが、そのスタッフは「死ぬほど怖かった」と話していました。

 これは極端な例かもしれませんが、いずれにしても一部の虫に対する「汚い」「怖い」といった経験から、いつしか虫全体が嫌悪対象になってしまうこともあるのです。

虫=不潔、害悪という印象

 私たちをとりまく環境の変化も、虫嫌いになる理由のひとつでしょう。かつては自然があちこちにあって、家に虫が出ることはごく自然な光景でした。ところが最近、特に都市部では、家の中に虫が出たら大騒ぎ、ゴキブリを見た日には大事件となる家庭もあるでしょう。つまり、昨今は「虫=害悪、不潔だ」という印象が強く、家に出た虫はどうにかして排除したいという傾向が強くなっているのです。

「益虫」など人間の営みに役立つ虫もいる

 ということで、私たちが大人になると虫が嫌いになってしまう理由をいろいろと探ってきましたが、その主な理由は本能的・心情的なものといえるでしょう。しかし、「虫が嫌い」と言って全ての虫を切り捨ててしまうのは残念なことではないでしょうか。

 蛍のように夏の夜を彩る虫もいれば、美しい羽を持つチョウのように私たちに自然の美しさを見せてくれる虫もいます。また、「益虫」とよばれる、クモのように私たち人間の営みに役立つ虫もいます。そして何より、「地球は昆虫の惑星」といわれるように、虫は地球環境になくてはならない存在です。虫を好きになるのは難しいかもしれませんが、子どものころの気持ちで、少しだけ歩み寄って受け入れてみてはいかがでしょうか。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授