テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.04.26

結婚はコスパ悪?独身で生きていくために必要なこと


 2015年の生涯未婚率(50歳までに一度も結婚したことがない人の割合)は、男性23.37%、女性で14.06%(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2017年)」)となっています。つまり男性の約5人に1人は結婚しません。20年以上遡って、1990年のデータを見ると、男性の未婚率は5.57%、女性は4.33%なので、非婚化が進んでいる現状がよくわかります。ではなぜ結婚しなくなったのでしょうか。

結婚のコスパは悪い?!

 独身研究家の荒川和久氏によると、結婚を望まない独身男性に理由を聞くと「結婚はコスパが悪い」という返答が返ってくるとのことです。男性は自分のためにお金を使いたいという意識が強くなっているとのこと。

 確かに、以前であれば、結婚して家族を持つことが当然とされていたり、またステータスとなったりしていた時代がありました。しかし現代では多様な生き方が許容されるようになっています。そうなると一生自分の好きなことにお金をつかって生きていたい、と思うのも当然ではないでしょうか。こう考えると、結婚すると男性は、なぜ、お金を家庭にいれなければならないのか、という発想になります。つまり、これが「コスパが悪い」ということの意味です。

 女性の側から考えるとどうなのでしょうか。社会が個人のさまざまなあり方を許容し、多様化した一方、女性の賃金は平均して低いままです。2016年の記事によると、日本における男女間の給与格差は、OECD加盟国(35カ国)中、なんとワースト3位。この状況では、女性が結婚の条件として男性に経済力を求めることは当然といえるでしょう。

実は結婚は独身よりも2割のコスパ

 では、結婚は本当にコスパが悪いのでしょうか。具体的に考えてみましょう。20代後半、都内で暮らす正社員の夫婦がいたとします。男性は年収600万円で女性は年収400万円だったとして、60代半ばを迎えた際の資産を比較すると、それぞれ独身で暮らした場合よりも、結婚して同居した場合の方がおよそ6000万円多くなるという試算があります(子供にかかる費用は計算には入っていません)。都内で暮らすとどうしても家賃が大きなウェイトを占めますが、後は食費や日用品といったところも勘案するとおよそ2割の節約効果があるとのことです。この考え方でいけば、結婚は決してコスパが悪いとは言えないでしょう。

独身で生きていくために必要なこと

 そうは言ってもやはり「お金よりも自由を手放したくない」と思う人もいるでしょう。この意見を否定することもできません。社会から多様性が失われれば、少数派の人間が生きづらくなります。少し引いて考えてみれば、より多様な人間の多様な生き方が認められてこそ、社会は健全性を保つともいえます。

 では、どうすれば独身でうまく生きていけるのでしょうか。まずは「働き続けられる身体と環境」であることは言うまでもありません。独身で生きていく場合、基本的に頼れるのは自分だけです。しかし、人は完全に一人では生きていけないのも事実。だからこそ「日常的に協力し合うことのできる仲間、コミュニティ」も大事になるでしょう。独身で生きていくためにはそういったある種の「社交性」も必要なのかもしれません。

<参考サイト>
・公益財団法人生命保険文化センター:生涯未婚率とは何のこと?
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/mariage/12.html
・東洋経済ONLINE:独身男が「結婚コスパ悪い説」を信奉する理由
http://toyokeizai.net/articles/-/156392
・MAG2NEWS:男女間の給料格差、日本は世界でワースト3位にランクイン
http://www.mag2.com/p/news/162990
・生涯で6000万円もの差がつく 実は高い結婚のコスパ
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO12825060T10C17A2000000?channel=DF080720160379

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン

アメリカのトランプ大統領は、2025年5月に訪れたサウジアラビアでの演説で「トランプ・ドクトリン」を表明した。それは外交政策の指針を民主主義の牽引からビジネスファーストへと転換することを意味していた。中東歴訪において...
収録日:2025/08/04
追加日:2025/09/13
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
2

外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?

外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス

国際関係においては外交と軍事(内政)のバランスが重要となる。著書では、近代日本において、それらのバランスが崩れていった過程を3つのステージに分けて解説しているが、今回はその中の、国のトップが外政家・原敬から職業外...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/12
小原雅博
東京大学名誉教授
3

シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題

シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題

第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題

日本人のライフコースとして「3ステージ(教育・仕事・引退)の人生」とよくいわれているが、長寿化が進み「人生100年時代」と呼ばれる現在、長くなった3つ目のステージとともに、これまでの日本的な労働慣行も見直すべき時期を...
収録日:2024/08/03
追加日:2025/02/07
宮本弘曉
一橋大学経済研究所教授
4

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
5

フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる

フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる

数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数

音が波であることは分かっても、それが三角関数で支えられていると言われてもピンとこないという方は少なくないだろう。そこで、その話を補足するのが倍音や周波数という概念であり、そのことを目で確認できるとっておきのイメ...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/11
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト