テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.05.05

レーシック手術が激減した理由とは?

 レーシックとは、レーザーを角膜に照射することで、近視、遠視、乱視を矯正する手術です。視力が上がる、目が良くなる、と言われれば、目の悪い人なら少しは気になるものです。コンタクトレンズも必要なく、裸眼のまますごせるレーシックは、成功率が95%と高く、痛みが少ないので、誰でも受けやすい手術といえます。しかしながら、この手術を受ける人が年々減っているようなのです。それはなぜでしょうか?

レーシック手術を受ける人が減っている理由

 医療法人弘鳳会の専門医のコラム「レーシック手術が激減! その真相」では、
「症例(手術)数は平成12年の2万件から徐々に増加し、20年には45万件となった。しかし、21年から減り始め、26年は5万件で、20年の9分の1だ。」
と、明らかに減っていることを慶応大学医学部眼科学教室の根岸一乃准教授が指摘しています。
 その理由のひとつは、保険が適用されないこと。実際にリーマンショック以降に手術件数が大幅に減ったということから、経済的な理由で手術をあきらめた人も増えたのではないか、とみています。もうひとつは、手術後のリスクです。基本的な衛生管理を怠ったことで起きた集団感染事件が大きく報道され、レーシックを不安を感じる人が増えたということです。

気になる安全面のリスク

 手術費用は両眼で10万~30万が相場と言われていますが、効果を考えれば致し方ないことかもしれません。しかし、安全面でのリスクは、いくらお金があろうとも無視はできない問題です。ここでは、主に指摘されているリスク、合併症について、ご紹介しましょう。

 まずは「ドライアイ」。レーシックをしなくてもこの症状を持つ人は多いですが、レーシックはレーザーで角膜を削り、涙腺まで焼いてしまうため、涙腺が再生し、回復するまでにドライアイを発症してしまうことがあります。

 次に、「過矯正」。私たちが生活するのに必要な視力は1.0ほどで良いと言われています。しかし、矯正した視力が高すぎると目が疲れてしまい、場合によっては、吐き気や頭痛を引き起こします。これは眼鏡でも言われることですが、レーシックは眼鏡と違って度数を変えることができないのが、大きな違いです。

 さらに、「ハロ」や「グレア」という症状もあります。聞きなれない言葉ですが、ハロは光を見たとき、周りに輪のようなものが見え、ぼやけてしまうというもの。グレアは光の見え方が、手術前よりもまぶしくなってしまうというものです。合わせて「ハロ・グレア現象」とも呼ばれます。この症状は数ヵ月で改善するのが一般的と言われていますが、こういった症状が起こることも覚えておきましょう。

 レーシックをして良かった、と成功を喜ぶ人がいる一方で、術後のフォローがされないまま、後遺症に苦しみ、病院を転々とする「レーシック難民」と呼ばれる人たちもいます。このようにレーシックは安全とは言い切れないのが実情です。

手術を受けるかどうかの判断は慎重に

 世の中はどんどん便利になり、できることも増え、技術も発達しています。しかしメリットばかりとは限りません。手術を受けるのは自分自身。情報収集は念入りに、医師の説明をよく聞き、良い部分と悪い部分をしっかり見極め、後悔のない選択をしましょう。
 
<参考サイト>
・医療法人弘鳳会の専門医のコラム レーシック手術が激減! その真相
http://ogurikinshi.com/column/?p=2537
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

民族自決原則とは?多民族国家が抱える難題と矛盾

民族自決原則とは?多民族国家が抱える難題と矛盾

地政学入門 ヨーロッパ編(6)「ロシア世界」と民族自決原則

「ルスキー・ミール」という言葉で代表される「ロシア世界」――それは、実際の国境にとどまらず、自国語を話す周辺領域の市民をも包括した概念。プーチンはそれを使ってウクライナ侵攻を正当化するが、国家外の自民族の保護を優...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/09
小原雅博
東京大学名誉教授
2

米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか

米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか

トランプ2.0と中東(2)保守主義者から主権主義者へ

トランプ2.0の政治手法や姿勢からは、支持者が信じる保守主義の影が薄れている。「自国第一主義」を守るためなら、桁外れの関税も議事堂襲撃も恐れない。むしろ大国仲間としてロシアに接近する風すらうかがえる。見えてくるのは...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/08
山内昌之
東京大学名誉教授
3

問題だらけの閣僚たち…トランプ政権の真の公約とは?

問題だらけの閣僚たち…トランプ政権の真の公約とは?

第2次トランプ政権の危険性と本質(5)トランプの政治手法の問題とは?

トランプの経済政策は、文化戦争の手段としての反グローバリズムという軸で理解するしかないが、そのような政策を進めるトランプ政権の政治手法の問題点はなにか。その背景には、陰謀論者が全部入ってしまったような閣僚の問題...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/07
柿埜真吾
経済学者
4

その後の余命が変わる!続けるべき良い生活習慣とは

その後の余命が変わる!続けるべき良い生活習慣とは

健診結果から考える健康管理・新5カ条(7)良い生活習慣が健康寿命を延ばす

健康診断の結果に一喜一憂するだけではなく、そのデータを活用し、生活習慣を見直すことが大切である。今回は、内臓脂肪の管理が健康維持に直結する理由や、体重増加と糖尿病リスクの関係、さらには良い生活習慣が寿命に与える...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/27
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
5

健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症

健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症

老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気

東京大学工学系研究科・医学系研究科教授の鄭雄一氏による「老いない骨のつくり方」シリーズ講話。鄭氏はレクチャー冒頭で、「情報に溺れず正しい情報を選択する能力がいかに大切か」と語り、誤った情報は「人生の栄養失調」に...
収録日:2016/09/14
追加日:2016/10/20
鄭雄一
東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授