『食品加工が一番わかる』から学ぶ、スゴい食品加工技術
スチームオーブン、Aカット米、宇宙食の共通点とは
「水で焼く」というキャッチフレーズで話題を呼んだ「スチームオーブン」、お米に含まれるアレルゲンを効率良く除去した「Aカット米」、そして「宇宙食」。実は、この3つには、ある技術的な共通点があります。その技術とは、みなさんもよくご存知のレトルト技術、インスタント食品に使われる真空凍結乾燥(フリーズドライ)技術など、ふだんの生活ともとても馴染みのある、食品加工の技術です。スチームオーブンが食品加工技術と関係しているというのはちょっと意外ですよね。詳しくはのちほど触れますが、スチームオーブンの開発には、加熱水蒸気技術という食品加工技術が応用されています。食品加工技術は、このように国民のライフスタイルを一新させるような革新的な技術の宝庫なのです。以下、スチームオーブン、Aカット米、宇宙食それぞれの食品加工技術の特徴やトレンドを簡単にご紹介します。
食品加工技術の特徴の特徴については、『食品加工が一番わかる』(永井毅監修、技術評論社)を参照します。本書を監修しているのは、山形大学大学院農学研究科の永井毅教授。永井教授の研究室では、「食品加工・製造・分析学における教育・研究」を行っており、「地域食材を活かした食品開発研究に挑戦し、地域密着の教育・研究に取り組んでいることも特徴」(NAGAI Laboratoryホームページより)とのことです。
スチームオーブンに応用された過熱水蒸気技術とは
『食品加工が一番わかる』によると、スチームオーブンに応用された過熱水蒸気技術は、表面をおいしくパリッと仕上げる調理性能に優れているだけでなく、高い脱油効果が認められていて、過酸化脂質の抑制や品質劣化の防止など健康効果も期待できます。この優れた技術は、その他、食肉加工や水産加工、食品の殺菌など、さまざまな食品の高品質化に貢献しているそうです。ちなみにスチームオーブンは、テレビ朝日「アメトーーク! 」が輩出した、家電製品に詳しい家電芸人たちに取り上げられて、大変注目を浴びました。とくに、シャープの「ヘルシオ グリエ」は、「アメトーーク! 」やTBS「この差ってなんですか?」をはじめ、テレビ番組で何度も紹介されて、抜群の人気を誇っています。
「ヘルシオ グリエ」は、今年(2017年)5月に従来のレッド系モデルに加えて、新たなにホワイト系、ブラック系の新モデルが発売されるのですが、実はこの新色モデル発売には裏話があって、家電芸人の筆頭・土田晃之さんの提案から生まれたのではないかと言われています。
というのも、土田さんは本機発売前に「老若男女が使いたいと思える製品なのに、カラーが好き嫌いの分かれる1色なのはもったいない」「白や黒あたりを加えて、せめて2色展開にすれば、より売れそう」と、ある取材で提言しており、それに対して、シャープの広報担当は「大いに影響しております」と回答したとのこと。やや本題から話がそれましたが、土田さんの家電業界への影響力の強さを垣間見ることができるエピソードですね。
Aカット米の食品加工技術
さて、次に「Aカット米」についてご案内します。「Aカット米」は「ヘルシオ グリエ」ほど大きな話題にはなっていませんが、全人口の1~2%(乳児に限定すると約10%)の人が食物アレルギーを持っていると言われる我が国では、とくに乳幼児食としてこれからだんだんと需要が高まっていくことが予想されます。なんとなく、お米はたくさん食べても安心と考えてしまいがちですが、やはり何にしても過食は厳禁。しかも、米油成分にはアトピー性皮膚炎を起こすアレルゲンが含まれているのです。
そのアレルゲンを栄養を損なうことなく効率良く除去した製品がAカット米です。Aカット米の製造には、超臨界ガス抽出技術という食品加工技術が使われています。この技術は、調味料やフルーツ、たばこの香料の製造にも使われています。
地上食に近づく宇宙食 宇宙日本食もある!
宇宙食は、レトルト技術、真空仕込み製法、噴霧乾燥技術など、多くの加工技術を駆使した加工食品です。ここでは細かい技術的な説明は省略しますが、食品加工技術の発展によって、宇宙食は現在地上食にどんどん近づいていっているそうです。かつては一口サイズの固形食やクリーム状やゼリー状のタイプが主流で、宇宙飛行士からの評判も良くなかったそうですが、今では嗜好食として宇宙日本食(宇宙航空研究開発機構認証)まで提供されるようになりました。前掲の『食品加工が一番わかる』によると、現在では14社29品目の宇宙日本食が公式に登録されているそうです。「宇宙日本食スペースカレー」や「宇宙おにぎり」はネットでも購入できるので、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
食品加工技術は、納豆や醤油といった発酵食品、乾物や漬物など日本食の伝統製法から宇宙日本食まで、さらに近年では喫食に不自由な高齢者のための「介護職」や、急増により生態系の破壊が懸念されるエゾジカの「ジビエ料理」にも活用されており、私たちがより豊かな生活を送っていくための必要不可欠なテクノロジーであることは間違いありません。
このほか、身近にまだまだたくさんの食品加工技術が隠れているはずです。応用の仕方によっては、さまざまな問題解決の糸口にもなり得るすごい技術だと思います。新技術の開発や技術応用の方法をふくめ、今後も最新動向から目が離せません。
<参考文献>
『食品加工が一番わかる』(永井毅監修、技術評論社)
http://gihyo.jp/book/2015/978-4-7741-7539-3
<関連サイト>
NAGAI Laboratoryホームページ
http://www.tr.yamagata-u.ac.jp/~tnagai/saito/WELCOME.html
『食品加工が一番わかる』(永井毅監修、技術評論社)
http://gihyo.jp/book/2015/978-4-7741-7539-3
<関連サイト>
NAGAI Laboratoryホームページ
http://www.tr.yamagata-u.ac.jp/~tnagai/saito/WELCOME.html