テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.07.18

藤井四段の才能を開花させた子育てメソッドとは?

 いま日本でいちばん有名な中学生と言えば、最年少プロ棋士の藤井聡太四段でしょう。30年ぶりに塗り替えた連勝記録は惜しくもストップしましたが、その後の初対局では見事に勝利を飾り、今後もまだまだ目が離せません。

 ところで、藤井四段を才能を育んだ子育てメソッドがママたちのあいだで話題になっているのをご存知でしょうか。フジテレビの情報トークバラエティ番組「バイキング」でも取り上げられました。

藤井四段もGoogleやAmazonの創立者もオバマ元大統領も

 イタリアで生まれた「モンテッソーリ教育」という子育てメソッドが藤井四段の才能を大きく開花させたといわれています。日本ではあまり知られていませんが、実は、欧米の教育現場では盛んに取り入れられており、元外務省主任分析官の佐藤優さんもその可能性を指摘しています。

 支持されている背景には、有名起業家や著名人にモンテッソーリ教育を受けた人が多いことが挙げられます。Google創設者のサーゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ、Amazon創業者のジェフ・ベゾス、Wikipedia創業者のジミー・ウェールズ、オバマ元大統領やクリントン夫妻、イギリス王室のウィリアム王子とヘンリー王子、他にもまだまだたくさんいますが、これらの人はみなモンテッソーリ教育を受けて育ちました。

伸びる子には秘密がある

 だいたい1歳半~6歳ころ、いわゆる「イヤイヤ期」とも重なり、何かに対してとても敏感になり、強いこだわりをもつ時期を、モンテッソーリ教育では「敏感期」と呼びます。

 大人からみるとまったく理解のできない行動を繰り返すので、子どもの「イヤイヤ」は大人の「イライラ」のもとにもなりがちですが、実はこの「敏感期」こそ、「子どもがぐんぐん伸びる秘密」を握っているのです。

 たとえ大人には不可解に見えても、「敏感期」のこだわりにはきちんと理由があります。イライラするのではなく、「敏感期」の関わり方をちょっと工夫するだけで、子どもの自主性、独立心、知的好奇心を効果的に育むことができます。子どもは、あることに対してこだわり、かたくなに繰り返すことで、「これが秩序というものだ」という型を身につけ、将来の才能、人間関係、社会性に関わる基礎をつくろうとしているのです。
 

今すぐできる10のこと

 敏感期の子どもに対して今すぐにできることを簡単に紹介します。まず、大事なことは子どもを観察することです。よく観察して、子どもがどんなことに興味を持っているのかを見つけ出しましょう。

 子どもの興味・関心が分かったら、それに合わせて、自由に選択させ、何でも挑戦させたりすると判断力や自信を育むことができます。ポイントは、子どものペースで進めること。とくに大人は待つことが苦手です。すぐに察してしまいます。「待つ時間」は、子どもの「考える力」が伸びているんだと考えて辛抱強く待ちましょう。

 失敗を見守ることも大事なことです。子どもも失敗しながら学んでいくのです。また、共感することは大切ですが、オーバーに褒めるのは避けましょう。オーバーに褒めると、自分の好奇心に従うのではなく、褒められるために行動するクセがついてしまいます。

 『知る、見守る、ときどき助ける モンテッソーリ流「自分でできる子」の育て方』(神成美輝著、百枝義雄監修、日本実業出版社)では、今すぐできる10のこととして、「01観察する」「02自由に選択させる」「03見守り、挑戦させる」「04ゆっくり見せる」「05子どもを待つ」「06察するのをやめる」「07ルールを設ける」「08オーバーにほめない」「 09共感する」「10失敗させる」を挙げています。

 「子どものために!」と思うとつい力んでしまいますが、あまりストイックにならず、ちょっとテキトーなくらいが長続きするかもしれません。楽しく子育てができる範囲で、挑戦してみましょう。

<参考サイト>
・『知る、見守る、ときどき助ける モンテッソーリ流「自分でできる子」の育て方』(神成美輝著、百枝義雄監修、日本実業出版社)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機

混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において...
収録日:2025/06/19
追加日:2025/08/13
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
2

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(4)社会的時差ボケとメンタルヘルス

社会的時差ボケは、特に若年層にその影響が大きい。それはメンタルヘルスの悪化にもつながり、彼らの幸福度を低下させるため、ウェルビーイングの危機ともいうべき事態を招くことになる。ではどうすればいいのか。欧米で注目さ...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/23
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長
3

健康経営×DEIの効用――経営理念が充実すると業績がよくなる

健康経営×DEIの効用――経営理念が充実すると業績がよくなる

DEIの重要性と企業経営(3)健康経営でDEIを推進する

どのようにすればDEIを実現していけるのか。一つのヒントとなるのが「健康経営」である。はたして健康経営を目指している企業にとって、DEIの視点を取り入れることが企業利益につながるのか。また、従業員のウェルビーイングと...
収録日:2025/05/22
追加日:2025/08/22
山本勲
慶應義塾大学商学部教授
4

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性

トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジア...
収録日:2025/06/23
追加日:2025/08/21
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授