テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.03.08

「顔」の心理学者から学ぶ「いい顔」になる方法

 突然ですが「自分の顔が好きですか?」と聞かれて、「ハイ、大好きです!」とすぐに答えられる人はそれほど多くいないのではないでしょうか。毎朝、鏡で対面する自分の顔に誰もが何かしらの不足を感じていて、「どうすればもっと魅力的な顔になることができるのか?」と、悩んでいる方も少なくないでしょう。

 顔はコミュニケーションの原点と考えると、魅力的な顔になることが人間関係にどう影響してくるのか。今回は『自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学』(山口真美著、岩波書店)を参考にして、顔の秘密を探っていきます。

 著者の山口真美氏は中央大学文学部心理学研究室の教授です。実験心理学が専門で赤ちゃんの認知発達や顔認知を実験・研究しています。『発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ』(講談社)、『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』(平凡社)など著書は多数あります。

鏡の顔は信用できない

 さて、「自分の顔が好きですか?」と言われたとき、まず思い出す顔は鏡に映った自分の顔ではないでしょうか。しかし、そこには大きな落とし穴があります。山口氏によると、「同じ顔を見続けると、その顔の見方はゆがむ」ことが実験からわかっているそうで、自分の顔を正しく見ることができないとのこと。つまり、人はつねに自分の顔をゆがんだ見方で見ているのです。またそれは、自分がイメージしている自分の顔は、他人の目に映る姿とは違っているということでもあります。それは、自分の顔に対して「ここが嫌い」とか「ああしたい」「こうしたい」と過剰に悩んでいる方に伝えたいことでもあります。自分では自分の顔を正しく見ることができないことを覚えておくといいでしょう。

イケメンはお得なのか

 ただ、自分では自分の顔を正しく認識できないにしても、客観的に見て「魅力的な顔」というものを認識することできます。モデルやアイドルはその象徴といえるでしょう。そこまで有名ではなくても、学校や会社にかならずマドンナやイケメンと噂される人がいます。

 美男美女はあこがれの的。「顔で得してうらやましい!」と思っている方も多いことでしょう。でも、じつは必ずしもそうとはいえないのです。ある社会心理学の研究によると、華やかでパッと目立つ美男美女たちは良い人であることが当たり前と思われがちで、良いことをして当然、少しでも悪いことをすると極端にマイナスに評価されやすい傾向にあるのだそうです。そんな先入観の呪縛に悩まされながら暮らすことになるとすると、どうでしょうか。すぐに息苦しくなってくるかもしれませんね。

美貌より「いい顔」をめざそう

 そうはいっても、あこがれの美貌は、努力してもなかなか手に入れることはできません。一方、誰にでもできるのが「いい顔」になること。例えば、何かに一生懸命取り組んでいる人は「いい顔」をしているといいます。つまり、心と表情はリンクしているということです。嬉しくなれば笑顔になり、怒っている人は眉間にシワが寄っています。

 仕事や人間関係がうまくいかないときは、自分がどんな顔をしているかをチェックし、「いい顔」を心がけてみることです。とはいっても、内面を変えるのは簡単にできることではありません。そこで、表情の印象を変える知識とテクニックを身につけて、活用していきたいですよね。表情の見方は、国や文化によって違うことがわかっています。欧米人では顔全体を見るのに対して、日本人は目を中心にして見ます。つまり、日本では目元を変えることで、相手に対する印象も大きく変わるということになります。まさに「目は口ほどに物を言う」のです。

 例えば、女性ならアイシャドウで10パーセント、アイラインを濃くすれば5パーセント、マスカラをつければ6パーセント、目を大きく見せることが可能です。ただし、目が大きければ大きいほど良いということはなく、「平均より7パーセント増し」が最も魅力的に見えるそうです。また、男性も眉毛を整えたりメガネを変えたりすることで、印象を変えることができます。

顔は心の窓といいますし、人間関係によっても変化します。まわりの印象が変われば自分の表情も変わっていくことでしょう。それぞれ自分なりの「いい顔」をめざしたいですね。

<参考文献>
『自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学』(山口真美著、岩波書店)
https://www.iwanami.co.jp/book/b243842.html

<関連サイト>
山口真美 研究室 -中央大学文学部 心理学研究室
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~ymasa/index.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

千手千眼観音のサポートとは?菩薩たちのビッグバンとは?

千手千眼観音のサポートとは?菩薩たちのビッグバンとは?

おもしろき『法華経』の世界(3)止観と菩薩による救済

最澄の瞑想図は非常に美しいが、彼は何を瞑想していたのだろうか。答えは無、心の動きを止めるのが「止観」だからだ。また、『法華経』全巻の構成を見ると、弥勒、観音、普賢の三菩薩が衆生を導き救済する中心的存在であること...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/05/18
鎌田東二
京都大学名誉教授
2

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

第2次トランプ政権の危険性と本質(2)トランプ関税のおかしな発想

「トランプ関税」といわれる関税政策を積極的に行う第二次トランプ政権だが、この政策によるショックから株価が乱高下している。この政策は二国間の貿易収支を問題視し、それを「損得」で判断してのものだが、そもそもその考え...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/17
柿埜真吾
経済学者
3

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い(1)「相互関税」とは何か?

トランプ大統領は、2025年4月2日(アメリカ時間)に貿易相手国に「相互関税」を課すと発表し、「解放の日」だと唱えた。しかし、「相互関税」の考え方は、まったくよくわからないのが実状だ。はたして、トランプ大統領がめざす...
収録日:2025/04/04
追加日:2025/04/10
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
4

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

株価と歴史…トランプ関税の影響を読む(1)アメリカ史の教訓とは

トランプ関税の影響は、今後、どのように広がっていくのだろうか? 過去の大きな構造変化や金融環境の変化が各国の「株価リターン」にどのような影響を与えたのかを分析しつつ、今後を考えるヒントがないかを検証していく。第1...
収録日:2025/04/18
追加日:2025/05/02
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授