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DATE/ 2018.05.31

「モンドセレクション」はお金で買える?

 先日、とあるラーメン屋さんの前を通りがかった時のことです。こってり系スープに大盛りの麺に卵にナルトやシナチク、チャーシューがこれでもかと盛られたディスプレイの正面に、「モンドセレクション金賞受賞」との宣伝が。あれ、モンドセレクション金賞って確か某ビールも受賞していたはず…ソーセージもとっていたような…。

 気になって調べてみると、実に幅広くいろいろなものがモンドセレクションを受賞していることがわかりました。あんまりに受賞するものが多すぎて、「金で買える賞」という揶揄まで出ているそうです。では、実際にモンドセレクションとはどんなものなのでしょう?

味の優劣だけでなく技術的水準を審査する

 そもそもモンドセレクションとは、ベルギーの民間団体によって設けられている賞で、製品の技術的な水準を審査しています。審査対象は幅広く、食品全般、アルコール、その他の飲料、タバコに化粧品、ダイエット用品などになっています。ワイン部門を除いて、審査方法がコンクール形式ではなく、定められた審査基準を満たした商品全てが受賞できるようになっているのも特徴のひとつです。

 その審査基準は「味覚」「衛生」「パーッケージに記載されている成分などが正しいか」「原材料」「消費者への情報提供」などで、それらの点数を合算した上で金賞や銀賞にふりわけられます。これは1961年の設立当時、ヨーロッパにおける製品評価コンテストが審査員の主観と感覚的な判断で評価されるばかりで、客観的な判断で審査のできる独立機関が必要だったことによるものだそうです。

日本からの応募が半数を占め、その内8割は入賞している

 とはいえ、公式ホームページを参照すると、現在では応募商品の9割以上がなんらかの賞をとれているとのこと。そうなると、「お金で買える賞」という揶揄も無理からぬことなのかもしれません。くわえて、1件あたりの申し込み費用が1,150ユーロと高額であることも、疑惑の生まれる一因ともなっているようです。

 また、実は世界的には知名度は低く、審査対象の5割以上が日本からの出品であり、日本製品に限っては8割以上が入賞しているとの報告もされています。いくらなんでも受賞率が高すぎやしないかという質問に対して、モンドセレクション本部関係者は「日本の商品は品質が高いため」とコメントしているそうです。

お金で金賞がとれるわけではない

 このような不信感が募りつつあるのか、モンドセレクションの申請代行を請け負うエージェント企業FoodsR&Dの元には、そのものずばり「モンドセレクションはお金を払えば誰でも金賞が受賞できるのか」という問い合わせが増えているため、集計調査が行われ、結果が発表されています。

 その結果、はじめて出品した場合の金賞以上の受賞率を確認したところ、誰でも金賞を受賞できる状況ではないことが明らかになったそうです。2018年受賞した商品のうち57%が連続受賞を占めており、初出品で最高金賞を取ったのは3.3%というシビアな結果が出ました。とはいえ、応募側は受賞結果が期待通りでなければ非公開にすることができるため、数字の変動はありそうですが、決してお金で買える賞ではないようです。

消費者も検索する時代の広告戦略

 食品に限らず品質管理やその表示義務が問題になりやすい昨今、モンドセレクションに限らず第三者機関による審査は、品質に関するひとつの目安としてだけでなく、ビジネスの販売戦略としても重宝されるでしょう。ただ、現代は誰もが情報を検索し、かつ発信できる時代です。例えば海外の賞がどのような基準を持つものなのか、その気になればあっという間に調べ上げ、結果を広めてゆくこともできます。

 いずれにしても、商品のブランド価値を高める戦略として海外での受賞を謳うには、実際の賞の方向性と商品宣伝のスタンスがずれないよう、注意を払いながら進めていくことが求められるといえます。

<参考サイト>
・MONDE SELECTION
http://www.monde-selection.com/jp/
・PRTIMES:モンドセレクションはお金を払えば誰でも金賞を受賞できる!?
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000026940.html
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橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授