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「はしか」だけじゃない!注意すべき感染症は?
2018年3月下旬から沖縄県で、「はしか(麻疹)」が流行しています。愛知県にも感染が広がり、さらに他都道府県でも患者が報告されており、5月中旬には患者数は100人を超えました。
今回の「はしか」流行の発端は台湾からの旅行者とされています。このような外国から持ち込まれた感染症ウイルスをきっかけに流行する事例は「輸入感染」と呼ばれ、度々発生しています。その背景には麻疹ウイルスの強い感染力に加え、日本において麻疹ワクチン未摂取の成人が多いという問題があるとされています。
しかし、最近は以下などの理由により、日本国内での成人層での流行が増加していると考えられています。
1)麻疹ワクチンの普及によって多くの人が麻疹ウイルスに接する機会が減り、免疫の増強効果が得られなくなったこと
2)麻疹ワクチンを接種していても「強い免疫」にならず、次第に免疫が低下して感染しやすい人が増えていること
3)麻疹ワクチン接種を1回しか受けておらず、十分な免疫がつかない人が数%いること
風疹は成人が罹患してもそれほど重篤にいたる可能性は低いのですが、妊娠初期に罹患すると高確率で胎児に重篤な障害をおよぼす恐ろしい病気です。日本でも2012年からの流行の際、46人の先天性風疹症候群の症例が報告されています。風疹はワクチンの接種により高確率で予防できるため、できるだけ多くの人が接種することが、社会として何よりの予防になります。
他方、「はしか」や風疹のようなワクチンのない感染症もあります。その中に、近年の日本で感染者が急増している梅毒があります。梅毒は適切な治療を行わず放置すると命にも関わる病気ですが、早い段階で適切な診断を受けペニシリン系の抗生物質を正しく内服すれば治癒する病気でもあります。ただし、体内に抗体を持っていても再感染の恐れはあるため、その他の感染症と同じように、常に予防や注意が必要になります。
そのうち法律に基づき、市区町村が主体となって実施する予防接種は「定期接種(勧奨接種)のワクチンとして、B型肝炎、Hib、小児用肺炎球菌、DPT-IPV(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)(またはIPV)・DT、BCG(結核用ワクチン)、麻疹・風疹混合(MR)、水痘(水ぼうそう)、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ(成人・B類)、23価成人用肺炎球菌多糖体(B類)」の11種類になります。
「定期接種」とは、1994年の予防接種法改正から「義務摂取」と入れ替わり使われている用語です。ワクチン接種はあくまで「努力義務」となり、接種を受ける際の最終判断は本人または保護者となりました。その背景には、1989年に起こった国産MMR(麻疹・ムンプス・風疹)ワクチンの副作用による無菌性髄膜炎の発生や1992年の予防接種ワクチン禍訴訟東京地裁判決のような、ワクチンを接種することによって起きた問題があります。また、ワクチン予防により対象となる感染症そのものが激減したことによる、社会的な福祉とワクチン副作用の相対性にも由来しています。
ただし、努力目標といっても「接種を受けることもやめることも好き勝手にすればよいというものでは決してありません<中略>接種を受けるよう説得していくことが大事です」と、帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長の渡辺氏は提言しています。
また、神戸大学大学院医学研究科感染治療学分野教授の岩田健太郎氏は「予防接種が医療に及ぼしたインパクトはとても大きいです。おかげで天然痘は撲滅され、ポリオやジフテリアや、致死的な百日咳、日本脳炎などは激減しました。多くの先進国では細菌性髄膜炎や麻疹、風疹などは医者も「見たことがない病気」になっています」と述べています。
ワクチンで予防できる感染症は、接種禁忌者でないかぎり、できるだけ多くの人がワクチンを予防接種することが感染症予防の大原則となります。日本でも、「はしか」や風疹などが「見たことがない病気」になることが望まれます。なお、定期接種の費用は公費でまかなわれるため、基本的に自己負担はありません。
ちなみに、定期接種以外の任意接種分には「一般的な定期外接種ワクチン:ロタウイルス、おたふくかぜ(ムンプス)、インフルエンザ(小児)」の3種類と、「その他の定期外接種ワクチン:A型肝炎、狂犬病、髄膜炎菌ワクチン、麻疹、風疹」の5種類があります。こちらは全て任意のうえ、自己負担になります。
感染症の原因となる微生物は、発生することはなく必ずどこかからやって来ます。つまりそれぞれの感染症の病原体となる微生物には、来し方としての感染経路があるため、各微生物によって感染経路や対策方法を正しく把握し、それぞれに応じて的確な予防や対応を行うといった対個人的でミクロな対策が必要になってきます。
他方、感染症の行く末としての、マクロでグローバルな対策も必要になってきます。医学の進歩と併走するようにジカウイルスのような新しいウイルスが発見されました。先天性ジカウイルス感染症など恐ろしい影響力がわかってくるとともに、WHOの「緊急事態宣言」をはじめ国際的な取り組みが行われていますが、予防ワクチンはまだありません。
身近な例で考えてみても、科学の発展とともに物理的なグローバル化の促進によって地域差や移動時間の短縮などが進み、世界各地と日本との直行便が発達したことにより、冬季に罹患することの多いインフルエンザを、日本国内で夏季にも罹患する確率が増えてきています。
微生物の数だけ感染症の可能性はあり、人によって感染症の症状は違ってきます。それぞれに応じた正しい予防と対策が、今後ますます必要になってきます。
今回の「はしか」流行の発端は台湾からの旅行者とされています。このような外国から持ち込まれた感染症ウイルスをきっかけに流行する事例は「輸入感染」と呼ばれ、度々発生しています。その背景には麻疹ウイルスの強い感染力に加え、日本において麻疹ワクチン未摂取の成人が多いという問題があるとされています。
なぜ日本で「はしか」が流行しているのか
「はしか」は麻疹ウイルスが原因で発症する感染症です。感染力が非常に強く発症性も高いため、免疫を持たない人が感染すると90%以上が発症するとされています。ただし、一度発症すると免疫ができ、再発はほとんどありません。麻疹ワクチンが開発される以前は、数年周期の流行によって子どもの頃に発症することで免疫を持つことが多く、成人になってから発症することはまれでした。しかし、最近は以下などの理由により、日本国内での成人層での流行が増加していると考えられています。
1)麻疹ワクチンの普及によって多くの人が麻疹ウイルスに接する機会が減り、免疫の増強効果が得られなくなったこと
2)麻疹ワクチンを接種していても「強い免疫」にならず、次第に免疫が低下して感染しやすい人が増えていること
3)麻疹ワクチン接種を1回しか受けておらず、十分な免疫がつかない人が数%いること
予防や治療ができるのに流行している感染症
「はしか」と同じように、日本国内において小児から成人に流行の中心が移ってきた感染症に、風疹があります。「はしか」と似たような症状があらわれ、数日間(約三日間ほど)で解熱するため、軽い「はしか」という意味の「三日ばしか」とも呼ばれていましたが、風疹は異なるウイルスによる違う病気です。風疹は成人が罹患してもそれほど重篤にいたる可能性は低いのですが、妊娠初期に罹患すると高確率で胎児に重篤な障害をおよぼす恐ろしい病気です。日本でも2012年からの流行の際、46人の先天性風疹症候群の症例が報告されています。風疹はワクチンの接種により高確率で予防できるため、できるだけ多くの人が接種することが、社会として何よりの予防になります。
他方、「はしか」や風疹のようなワクチンのない感染症もあります。その中に、近年の日本で感染者が急増している梅毒があります。梅毒は適切な治療を行わず放置すると命にも関わる病気ですが、早い段階で適切な診断を受けペニシリン系の抗生物質を正しく内服すれば治癒する病気でもあります。ただし、体内に抗体を持っていても再感染の恐れはあるため、その他の感染症と同じように、常に予防や注意が必要になります。
ワクチン接種が予防の基本、予防接種の今昔
日本で認可販売されているワクチンは、19種類になります。そのうち法律に基づき、市区町村が主体となって実施する予防接種は「定期接種(勧奨接種)のワクチンとして、B型肝炎、Hib、小児用肺炎球菌、DPT-IPV(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)(またはIPV)・DT、BCG(結核用ワクチン)、麻疹・風疹混合(MR)、水痘(水ぼうそう)、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ(成人・B類)、23価成人用肺炎球菌多糖体(B類)」の11種類になります。
「定期接種」とは、1994年の予防接種法改正から「義務摂取」と入れ替わり使われている用語です。ワクチン接種はあくまで「努力義務」となり、接種を受ける際の最終判断は本人または保護者となりました。その背景には、1989年に起こった国産MMR(麻疹・ムンプス・風疹)ワクチンの副作用による無菌性髄膜炎の発生や1992年の予防接種ワクチン禍訴訟東京地裁判決のような、ワクチンを接種することによって起きた問題があります。また、ワクチン予防により対象となる感染症そのものが激減したことによる、社会的な福祉とワクチン副作用の相対性にも由来しています。
ただし、努力目標といっても「接種を受けることもやめることも好き勝手にすればよいというものでは決してありません<中略>接種を受けるよう説得していくことが大事です」と、帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長の渡辺氏は提言しています。
また、神戸大学大学院医学研究科感染治療学分野教授の岩田健太郎氏は「予防接種が医療に及ぼしたインパクトはとても大きいです。おかげで天然痘は撲滅され、ポリオやジフテリアや、致死的な百日咳、日本脳炎などは激減しました。多くの先進国では細菌性髄膜炎や麻疹、風疹などは医者も「見たことがない病気」になっています」と述べています。
ワクチンで予防できる感染症は、接種禁忌者でないかぎり、できるだけ多くの人がワクチンを予防接種することが感染症予防の大原則となります。日本でも、「はしか」や風疹などが「見たことがない病気」になることが望まれます。なお、定期接種の費用は公費でまかなわれるため、基本的に自己負担はありません。
ちなみに、定期接種以外の任意接種分には「一般的な定期外接種ワクチン:ロタウイルス、おたふくかぜ(ムンプス)、インフルエンザ(小児)」の3種類と、「その他の定期外接種ワクチン:A型肝炎、狂犬病、髄膜炎菌ワクチン、麻疹、風疹」の5種類があります。こちらは全て任意のうえ、自己負担になります。
感染症の来し方と行く末
そもそも論として感染症とはなんなのでしょうか。岩田氏は「感染症とは、微生物が原因となる病気の一群のことです。微生物がいなければ、感染症は絶対に起きません<中略>しかし、微生物が人間にくっついているだけでは感染症ではありません。その微生物が人間に害を与えたとき、はじめて“感染症”と呼びます」と言います。感染症の原因となる微生物は、発生することはなく必ずどこかからやって来ます。つまりそれぞれの感染症の病原体となる微生物には、来し方としての感染経路があるため、各微生物によって感染経路や対策方法を正しく把握し、それぞれに応じて的確な予防や対応を行うといった対個人的でミクロな対策が必要になってきます。
他方、感染症の行く末としての、マクロでグローバルな対策も必要になってきます。医学の進歩と併走するようにジカウイルスのような新しいウイルスが発見されました。先天性ジカウイルス感染症など恐ろしい影響力がわかってくるとともに、WHOの「緊急事態宣言」をはじめ国際的な取り組みが行われていますが、予防ワクチンはまだありません。
身近な例で考えてみても、科学の発展とともに物理的なグローバル化の促進によって地域差や移動時間の短縮などが進み、世界各地と日本との直行便が発達したことにより、冬季に罹患することの多いインフルエンザを、日本国内で夏季にも罹患する確率が増えてきています。
微生物の数だけ感染症の可能性はあり、人によって感染症の症状は違ってきます。それぞれに応じた正しい予防と対策が、今後ますます必要になってきます。
<参考文献・参考サイト>
・『正しく怖がる感染症』(岡田晴恵著、ちくまプリマー新書)
・『わかりやすい予防接種 改訂第6版』(渡辺博著、診断と治療社)
・『絵でわかる感染症withもやしもん』(岩田健太郎著、石川雅之絵、講談社)
・毎日新聞:はしか 輸入感染で流行
https://mainichi.jp/articles/20180513/ddm/016/040/050000c
・『正しく怖がる感染症』(岡田晴恵著、ちくまプリマー新書)
・『わかりやすい予防接種 改訂第6版』(渡辺博著、診断と治療社)
・『絵でわかる感染症withもやしもん』(岩田健太郎著、石川雅之絵、講談社)
・毎日新聞:はしか 輸入感染で流行
https://mainichi.jp/articles/20180513/ddm/016/040/050000c
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