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DATE/ 2018.07.26

【仕事と年収】原発作業員(26歳男性)の場合

 今回は26歳「原発作業員」の方に年収などのリアルなお金事情、そしてその仕事の内容を詳しく聞いてみました。

26歳「原発作業員」の年収は…

 今回お話をうかがったのはこちらの方。

【年齢】26歳(男性)
【住まい】福島県
【独身or既婚】独身

・経歴を教えてください。
 最終学歴は大学中退。大学四年の夏、就職で内定が決まったあとに自分の人生について振り返ったとき、内定先に就職することが本当に自分の自由意志による選択であったのか疑問に思い、過去に目を向けたところ、自分の自由意志で物事を決めてきたことがないことに気が付いた。

 常に選択を迫られてきた人生と決別することを決断し、イチから人生の選択をしなおすため、大学を中退。とりあえず、お金を貯めようと思っていたところに、除染作業という稼ぎ口があるいう情報を目にして、求人に応募した。

・年収/月収/賞与について教えてください。
 年収600~700万円/月収50~60万、出勤日数×6,600円が特殊勤務手当として付く。

・貯蓄額はおいくらですか?
 1,000万円以上。

・年間休日は?
 日曜のみ。また、GW、盆、正月に各6日ほどの大型連休がある。

仕事の内容は?残業はどれぐらい?

 一般的な除染作業(草刈り、集積、運搬)に出来形記録や測量、出来高などのあらゆる施工に係る総合的な管理。加えて、経理の一部(人員、現場の売上と経費等の管理)に請求金額交渉、数量管理用ソフトウェアの開発など。名刺には「出来形管理事務」とかいてあります(笑)。

 残業は基本的にはなし。ただし、毎月末の工事費請求用の資料作成を行う週には、40時間を超えることがよくある。

この仕事の良い点は?

 除染作業は、からだ一つで行える仕事であるため、他に要するものが何もない。筋トレしながらお給料も貰えるといったお得感がある。管理業務については、良いことは一つもない。強いて挙げるならば、人員不足を原因とする過酷な環境が、私にプログラミングを習得させたこと。

 生活面では、住宅費、食費、交通費など、生きるためのすべての費用を会社(または国)が代わりに払ってくれるので、お金が貯まりやすい。

この仕事の悪い点は?

 最も悪い点は、被ばくするリスクがあるということ。私のようにまだ若くても、そのリスクは一生かかっても拭い去ることはできない。

 また、自分の職業が“原子力”というイデオロギーの対立や偏見を引き起こしそうな技術の関連事業であるため、他人に自分の職について明言することが憚られる。職業を聞かれた際にも「無職でぷらぷらしているよ」と言う方が気が楽。

 加えて、ここは日本社会でもほとんど日の当たらない場所であるため、多様な人間の在り方に対して理解をしながら、各々の性質に応じた采配をふるう必要がある。一歩判断を間違えると、様々な圧力に苛まれることになる。これまで何度も恫喝などの目に遭ってきた。ここは“世紀末”かと思うこともしばしば。

 自分の周りでいうと、会社の存続を賭けた月末の請求資料の作成と元請けとの金額交渉が徹夜で行われることも多く、疲労とストレスで顔が痙攣したこともある。その社運をかけた自分の頑張りは、給料やボーナス、社内評価につながることはない。さらに、全く身に覚えのない悪い噂話を社長に耳打ちする無能な女性事務員(社長の愛人)がいる。自分を取り巻く労働環境は、上をみても下をみても良いとは言えない。

――――――――――

 あまり語られることのない原発作業員の年収ですが、20代で600万円以上と非常に高い水準となっています。しかし、当然ながらこの仕事には被ばくリスクが伴います。はたしてそのリスクに見合った報酬かどうかは難しいところと言えるでしょう。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授