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DATE/ 2018.08.29

原価はいくら?カップラーメン儲けのカラクリ

 日本人の国民食と言っても過言ではないインスタントラーメン。日本即席食品工業協会によると、昨年2017年は即席麺出荷額総需要が過去最高を記録。なんと5826億5300万円(56億6131万食)に達しました。

 インスタントラーメンのなかでもとりわけ消費量が多いのがカップラーメンです。読者のみなさんはこのカップラーメンの儲けのしくみをご存知でしょうか。

インスタントラーメンの世界年間消費量は1001億食

 どれだけインスタントラーメンが現代の日常生活に欠かせないものになっているのか。数字でみると、よくわかります。日本即席食品工業協会はインスタントラーメン・データというものを公表しており、たとえば、日本人の年間消費量は、一人当たりおよそ44食。

 言い換えれば、1ヶ月に3~4食はインスタントラーメンにお世話になっているということです。ちなみに、世界に目を移してみると、昨年2017年の全世界における消費量はなんと、なんと1001億食にもなるのだそうです。

 インスタントラーメンのスゴさが分かったところで、本題に入りましょう。先述の通り、インスタントラーメンのなかでも好まれているのがカップラーメン。インスタントラーメンのうち69.3%はカップラーメンです。そのカップラーメンの儲けのカラクリにいよいよ迫りたいと思います。

カップラーメンの原価はいくら

 カップラーメンはなんといっても「安い」「うまい」にその良さがあります。でも、どうしてそんなに安いのでしょう。理屈は簡単、原価が安いからです。問題は、どうして原価を安くできるのかという点です。

 カップラーメンを成立させる要素は麺、スープ、カップですが、「安い」「うまい」の決め手となっているのはスープです。実はほとんどの場合、スープは、ナトリウム塩、化学調味料、酵母エキスなど、化学的に合成抽出した物質でできています。これが原価をグーンと低く抑えることができる理由です。もし、本物の「鶏ガラ」や「とんこつ」を作ろうと思えば、べらぼうに原価が上がります。高い食品加工技術、偉大な化学の力によって低価格を実現しているというわけです。

 実際に原価を数字で見てみると、麺は約15円、スープは13~15円、カップは18円ほど。つまり、1個あたり原価は50円程度ということになります。

カップラーメン儲けのカラクリ

 メーカーから回り回って原価50円のものがどのようにして私たちの胃袋に届くのか、誰がどのくらい儲けているのか、儲けのカラクリにさらに迫っていきます。

 まずメーカーは90~95円程度で問屋に卸します。今度はそれを問屋は100円前後でスーパーやコンビニに卸します。そして最後に、われわれ消費者はスーパーやコンビニでそれを買って食べるという流れです。

 つまり、カップラーメン1個あたり、メーカーは40~45円、問屋は5~10円儲けているということになります。では、スーパーやコンビニはどうでしょう。

スーパーとコンビニの違い

 実はスーパーとコンビニでは儲けのしくみが異なります。スーパーでは、だいたい120円ほどで販売しているので、20円ほどの儲けということになります。ただし、スーパーは販売量に応じてメーカーから販売奨励金をバックされるようになっていて、一定量を超えた数を販売すれば、25~28円ほどの粗利益が得られるようになっています。

 コンビニはスーパーのように大量に販売することはできません。そのため、150~160円で販売することで50~60円の粗利益を得るようにしています。

 ぜひぜひ、カップラーメンを食べるときは、その価格や儲けの構造も想像してみてください。おいしく味わいながら、仕事のヒントが思い浮かぶなんていう良いこともあるかもしれません。

<参考文献・参考サイト>
・インスタントラーメン・データ
http://www.instantramen.or.jp/data/d_01.html
・『知らないとソンする!価格と儲けのカラクリ』(神樹兵輔・21世紀ビジョンの会著、高橋書店)
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授