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なぜダイソンの掃除機は売れているのか?
モノ離れの社会、消費離れと言われる中、高価なのにヒットし、しかも売れつづけている家電製品がいくつかあります。その筆頭は掃除機などのダイソン、そして扇風機やトースターのバルミューダです。ダイソン社は1990年代、バルミューダ社は2000年代の創業。なぜ、若い企業から、これほどの人気商品が生まれるのでしょうか。その理由に迫ってみました。
ダイソンが画期的だったのは、サイクロン方式の導入。従来の紙パック式掃除機では使うごとに目詰まりが起こり、吸引力が徐々に落ちます。でも、紙パックが満杯になるまでは集めたゴミを捨てられない。ユーザーは日ごとに吸引力が落ちる掃除機を「そんなもの」と諦めて使っていたのです。
「ゴミを毎回捨てれば吸引力は下がらない」と考えたのがジェームズ・ダイソンです。強力なエアで塵と空気を分断するデュアルサイクロン方式を導入したダイソンは、集めたゴミが見える透明ビンによって「こんなにきれいになった」と実感させるスケルトン・デザインの普及にも一役買いました。
一方、「変わらない」吸引力が「最強ではない」というのは事実のようで、国民生活センターではサイクロン方式が普及しはじめた2006年にテストを行い、ダイソンの吸引仕事率が国産掃除機より低く、騒音も大きく、手入れに手間がかかるなどのレポートを出しています。
しかし、実はこのこと自体が、「掃除機に何を求めるか」というユーザーとメーカーの意識のズレを示しているものでした。実際その後もダイソンは世界中で売れつづけ、日本の家電メーカーは苦戦しています。その原因は「デザインと広告」のうまさとよく言われますが、それだけではありません。
「おしゃれ家電」とも呼ばれるバルミューダの製品ですが、扇風機やトースターは、どこの家にも1台はあり、決して「おしゃれ」ではなかったもの。必要だから家にありはしても、思い入れやこだわりの持ちにくい商品でした。
ところが、バルミューダは使い手のわがままなまでの希望を声高に、最初はクチコミを中心に成功しました。扇風機の場合は、「最小の電力で、静かに、自然界の風を再現」。トースターは、「スチームテクノロジーと完璧な温度制御で最高の味を実現」です。
それまでの「扇風機なんて、こんなもの」「トースターは、この程度」という諦めを吹き飛ばすかわりに、従来の価格帯も徹底的に無視。「Green Fan」は2010年に3万円台で登場して、4~5千円程度だった既存ジャンルに「高価値扇風機」という新しい領域を産みました。トースターも量販店で数千円の手軽さだったのが、2万数千円の「ザ・トースター」が2015年以降、未開拓市場を切り拓いたと言われます。
昔の日本企業は、部品ごとの技術を“知の深化”で磨き上げれば競争力のある製品が生み出せましたが、現在では日々変化する顧客のライフスタイルを読み取ることがより重要だということです。
家電に限ってのことではありませんが、メーカー都合による多機能・ハイスペックの製品開発では、ユーザーの「したいこと」「欲しい価値」が後回しにされていたと言えるでしょう。
一方、顧客視点アドバイザー兼家電コンシェルジュとして活躍する神原サリーさんは、「スペックで判断する男性的な視点よりも、心地よさや美味しさ、使い心地のよさなどの感性に訴えかける家電を欲しいと願う人が増えてきている」と語ります。
従来の家電製品では「メーカーが新製品を開発し、男性がお金を出し、女性が使う」ケースが主流でした。単身世帯が増え、家事・育児に参加する男性も増えた現在では、メーカー都合のハイスペックに振り回されず、「使う人(たち)の使いたい家電」が選ばれるようになっています。
ダイソンやバルミューダなど、若い企業の成功は、自分が感じた理不尽を解消したり、自分が味わった体験を再現しようと、「自分が欲しいもの」に向かったことが大きいのではないでしょうか。
「吸引力の変わらなさ」がダイソン
「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」のキャッチコピーで有名なダイソン。現在はスティック型コードレス掃除機が主流となり、掃除機の人気売れ筋ランキングで1位・2位以下、ベスト20に8機種がランクインする人気ぶりです(価格.com:2018.7.31調べ)。ダイソンが画期的だったのは、サイクロン方式の導入。従来の紙パック式掃除機では使うごとに目詰まりが起こり、吸引力が徐々に落ちます。でも、紙パックが満杯になるまでは集めたゴミを捨てられない。ユーザーは日ごとに吸引力が落ちる掃除機を「そんなもの」と諦めて使っていたのです。
「ゴミを毎回捨てれば吸引力は下がらない」と考えたのがジェームズ・ダイソンです。強力なエアで塵と空気を分断するデュアルサイクロン方式を導入したダイソンは、集めたゴミが見える透明ビンによって「こんなにきれいになった」と実感させるスケルトン・デザインの普及にも一役買いました。
一方、「変わらない」吸引力が「最強ではない」というのは事実のようで、国民生活センターではサイクロン方式が普及しはじめた2006年にテストを行い、ダイソンの吸引仕事率が国産掃除機より低く、騒音も大きく、手入れに手間がかかるなどのレポートを出しています。
しかし、実はこのこと自体が、「掃除機に何を求めるか」というユーザーとメーカーの意識のズレを示しているものでした。実際その後もダイソンは世界中で売れつづけ、日本の家電メーカーは苦戦しています。その原因は「デザインと広告」のうまさとよく言われますが、それだけではありません。
従来の製品観も価格帯も吹き飛ばしたバルミューダ
一方、ロックミュージシャンから転身した寺尾玄社長が「家電で実現できる驚きや感動の体験」にこだわり抜き、扇風機、トースターという、どちらかというと地味な分野で大きなヒットを飛ばしたのがバルミューダです。「おしゃれ家電」とも呼ばれるバルミューダの製品ですが、扇風機やトースターは、どこの家にも1台はあり、決して「おしゃれ」ではなかったもの。必要だから家にありはしても、思い入れやこだわりの持ちにくい商品でした。
ところが、バルミューダは使い手のわがままなまでの希望を声高に、最初はクチコミを中心に成功しました。扇風機の場合は、「最小の電力で、静かに、自然界の風を再現」。トースターは、「スチームテクノロジーと完璧な温度制御で最高の味を実現」です。
それまでの「扇風機なんて、こんなもの」「トースターは、この程度」という諦めを吹き飛ばすかわりに、従来の価格帯も徹底的に無視。「Green Fan」は2010年に3万円台で登場して、4~5千円程度だった既存ジャンルに「高価値扇風機」という新しい領域を産みました。トースターも量販店で数千円の手軽さだったのが、2万数千円の「ザ・トースター」が2015年以降、未開拓市場を切り拓いたと言われます。
メーカー都合の製品開発にNGを出す新型ユーザー
ダイソンやバルミューダのヒットについて、早稲田大学大学院経営管理研究科准教授でグローバル経営を専門とする入山章栄氏は、「“知の探索”が“知の深化”を上回り、あるべき姿を追求した結果」と語っています。昔の日本企業は、部品ごとの技術を“知の深化”で磨き上げれば競争力のある製品が生み出せましたが、現在では日々変化する顧客のライフスタイルを読み取ることがより重要だということです。
家電に限ってのことではありませんが、メーカー都合による多機能・ハイスペックの製品開発では、ユーザーの「したいこと」「欲しい価値」が後回しにされていたと言えるでしょう。
一方、顧客視点アドバイザー兼家電コンシェルジュとして活躍する神原サリーさんは、「スペックで判断する男性的な視点よりも、心地よさや美味しさ、使い心地のよさなどの感性に訴えかける家電を欲しいと願う人が増えてきている」と語ります。
従来の家電製品では「メーカーが新製品を開発し、男性がお金を出し、女性が使う」ケースが主流でした。単身世帯が増え、家事・育児に参加する男性も増えた現在では、メーカー都合のハイスペックに振り回されず、「使う人(たち)の使いたい家電」が選ばれるようになっています。
ダイソンやバルミューダなど、若い企業の成功は、自分が感じた理不尽を解消したり、自分が味わった体験を再現しようと、「自分が欲しいもの」に向かったことが大きいのではないでしょうか。
<参考サイト>
・価格.com:家電・掃除機人気ランキング
http://kakaku.com/kaden/vacuum-cleaner/
・国民生活センター:商品テスト結果:サイクロン方式の掃除機
http://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-20060406_1.html
・産経ビズ「なぜ「ダイソン」は高価なのに売れる?」
https://www.sankeibiz.jp/business/news/170204/bsg1702041609001-n1.htm
・Sallyの家電アトリエ
http://kaden.k-sally.jp/
・価格.com:家電・掃除機人気ランキング
http://kakaku.com/kaden/vacuum-cleaner/
・国民生活センター:商品テスト結果:サイクロン方式の掃除機
http://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-20060406_1.html
・産経ビズ「なぜ「ダイソン」は高価なのに売れる?」
https://www.sankeibiz.jp/business/news/170204/bsg1702041609001-n1.htm
・Sallyの家電アトリエ
http://kaden.k-sally.jp/
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