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DATE/ 2018.11.15

払い過ぎかも?50代がやるべき「保険の見直し」

 その昔、信長は「人間五十年」と謡う幸若舞を好んで舞ったそうですが、「人生百年時代」が叫ばれる昨今、50歳は到達点より、むしろ折り返し地点にふさわしくなっていると言えそうです。充実した人生後半戦に向けて、どんな準備をすればいいのか。まず、毎月引き落とされる保険料について考えてみませんか。

「やれやれ」の50代こそ保険を見直してみる

 50代といえば、男女ともに気力も体力も充実。仕事では責任あるポジションを任されている人が多いでしょう。でも、ライフスタイルには、知らない間に多くの変化が訪れています。家族持ちの場合、子どもたちがそろそろ成人して学業を修了。長年、家計の中心的支出だった教育費が必要なくなり、やれやれと一息ついている家庭が多いのが実情です。40代までは家計の帳尻をあわせるのが一苦労でしたが、これからは貯金も可能。持ち家派では住宅ローンのゴールも間近に迫り、退職金や年金のシミュレーションも始まっているのではないでしょうか。

 そういう意味で、50代は中長期計画の節目となります。とくに男性の場合、さまざまなリスクに備えて多くの保険に入っている人が多いようですが、惰性でそのままを続けていると思わぬ支払い損が待っています。保険は「万一のリスクに備えて」加入するものですが、50歳に到達した地点で一度「その保険、本当に必要なの?」と見直してみるのがよさそうです。

最大の見直しポイントは、死亡保障。

 50代の保険見直しのポイントは、「子どもの独立」「病気への備え」「老後への備え」だと言われます。最も大きいのは、子どもが独立してしまえば、子育て中のような手厚い保障は不要だという点です。子どもが社会人になった時点で、あるいは学生でも教育資金にメドが立っている場合は、今後大きな保障は必要なくなるので、世帯主の死亡保障を整理対象にしましょう。

 とくに10年契約(更新)型の保険は要注意です。契約者の年齢が高くなるにつれて、保険料が上がっていきます。あるシミュレーションによると、60歳から70歳まで「死亡時1,000万円保障」を据え置いたままにすると、10年間の保険料は156万円に上ると試算されています。この156万円は戻ってきませんから、家計にとってはまるまる損失です。その分を貯蓄や投資に回しておけば、「病気への備え」「老後への備え」といった人生後半戦に役立つのです。つまり、家族全員のために入っていた保険を、自分とパートナーのためにシフトチェンジしていく必要があります。

 ●「入院1日1万円」の医療保険は本当に必要?

 若い頃からの生活習慣が積み重なり、人間ドックや健康診断でもヒヤヒヤしはじめるのが50代。国民生活基礎調査によると、実際に病気やけがなどで病院に通う「通院者」の割合は50歳を境にグンと跳ね上がり、40代27.6%、50代41.9%、60代58.2%となっています。

 医療費ばかりは高額だからといって節約モードにはできないので、「入院したら1日5,000円や1万円が支払われる医療保険でカバーしておかないと不安?」という心理が高まります。生命保険文化センターによると、「医療保障の準備は生命保険」と答える人が72.9%に上っています。

 でも、日本には公的社会保障の高額療養費制度があり、1か月あたりの医療費(入院や手術を含む)の上限が定まっています。上限は所得により3段階ですが、一般的な所得の場合、1か月の医療費総額が100万円(3割負担で30万円)になっても、実質負担額は87,430円ですみます。

 家庭全体も個人としてもライフステージの変わる50代は、保険見直しの適齢期。なんとなく現状維持を続ける姿勢では「老後破綻」への道に通じかねません。保険料を細かく見直し、惰性や不安による損失を防ぐことは、人生後半戦をマイペースに歩いていく指針にもなりそうです。

<参考サイト>
・厚生労働省:平成29年度国民生活基礎調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html
・生命保険文化センター:医療費に備え、どんな経済的準備をしている?
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/medical/6.html
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小原雅博
東京大学名誉教授