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DATE/ 2018.11.19

魚を食べることで抑えられる病気リスクとは?

 イワシやサンマ、サバやアジなど青魚のDHAがカラダに良い、とか、タイやヒラメなど白身魚は高タンパク・低脂肪だから良いとか、逆に、マグロなどの水銀濃度が高い大型魚は食べすぎると危険、など魚と健康にまつわる話はよく耳にします。

 でも、結局のところはどうなのか。魚は食べたほうがいいのか。そうだとすれば、どれくらい食べるのがいいのか。これらの疑問を解明すべく、近年の研究成果をもとに新鮮な魚の知識をお届けします。

大動脈疾患で死亡するリスクが約2倍

 いきなりですが、結論から言うと、「魚は食べたほうがいい」と言えそうです。国立がん研究センターと筑波大学は、共同研究によって、「魚をほとんど食べない」ことによって大動脈疾患で死亡するリスクが増加することを、世界で初めて明らかにしました。

 しかも、魚をほとんど食べない人は、大動脈疾患で死亡するリスクが約2倍にもなるそうです。やはり、「魚は食べたほうがいい」わけですが、気になるのは「魚をほとんど食べない」とはどのくらいのことをいっているのかということです。

月に1~2回食べていれば大丈夫?

 どのくらい食べれば、大動脈疾患で死亡するリスクを抑えることができるのか。少なくとも1ヶ月に1~2回魚を食べていれば、大動脈疾患で死亡するリスクは高くならないそうです。これなら、ふだんほとんど魚を食べない方もわりと簡単に実践できそうですね。

 ところで、「大動脈疾患」とはどんな病気か、ご存知でしょうか。大動脈疾患とは「大動脈瘤」と「大動脈解離」を指します。大動脈瘤は「瘤」(こぶ)という漢字がついていることから分かる通り、大動脈が「こぶ」のように病的にふくらんだ状態、大動脈解離は大動脈になんらかの原因で亀裂ができた状態のことです。どちらも破裂すると命にかかわります。

 大動脈疾患は、動脈硬化や高血圧、喫煙やストレス、糖尿病などさまざまな要因が関係していると言われています。

予防にはまだ不明な点も多いので要注意!

 さきほど「少なくとも1ヶ月に1~2回魚を食べていれば」と書きましたが、これはあくまでも実験によってこのような結果が出たという話です。まだ、絶対に大動脈疾患を予防できるというものではありません。なぜなら、他の生活習慣とのかかわりも考えなくてはならないからです。

 これは当然のことといえるでしょう。魚をたくさん食べているからといって、偏食や運動不足、飲酒、喫煙、ストレス過多などがあれば、健康はたもてません。

 あくまでも生活習慣のバランスを保ちながら、できるだけ食事に魚を取り入れるようにしましょう。もちろん、食べ過ぎや偏食は厳禁です。

<参考サイト>
・大動脈瘤と大動脈解離
http://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/aortic-aneurysm_dissection.html
・魚をほとんど食べない人で大動脈疾患死亡が約2倍に増加
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/1015_02/index.html
・魚・n-3脂肪酸摂取と虚血性心疾患発症との関連について
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/279.html
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