社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.12.31

単身者の5%が預貯金ゼロ!金融資産の中央値は?

 ここ数年、NISAやiDeCoといった投資に関連する税制優遇策など、お金が世の中を回るような仕組みが模索されてきました。しかしこれは余裕資金をどうするか、という話です。そういう制度があることは知っているけど余裕がない、お金はあったらあっただけ使う、という人も特に独身の人の中には結構いるかもしれません。また実際、周囲の人がどの程度の資産をもっているのか気になっていても、そうそう訊けないもの。ということで、ここでは、単身世帯と二人以上の世帯での金融資産保有額のデータをそれぞれ見てみましょう。

単身世帯の金融資産平均744万円、中央値50万円

 金融広報中央委員会が発表している「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](2018年)」によると、金融資産保有額(金融資産=運用または将来への蓄えのための資産)の平均値は744万円となっています。平均744万円というのは、意外と多い、という印象ではないでしょうか。この数字をみるとちょっと焦る人もいるかもしれません。しかし、「中央値」をみると50万円です。

 「中央値」とは、「数値を順番に並べていった際に中央にくる値」のことです。つまり、金融資産の平均が744万円で中央値が50万円ということは、ずば抜けて多くの資産をもっている人が平均値を押し上げている、と考えられます。つまり実情をより反映しているのは「中央値」のほうです。つまり金融資産に関しては、かなりの格差があると考えて良さそうです。また、「金融資産を保有していない」と回答した世帯は5.6%となっています。

二人以上の世帯の金融資産平均1,151万円、平均値450万円

 一方、二人以上の世帯における金融資産保有額の平均値は1,151万円、中央値は450万円となっています。「金融資産を保有していない」と回答した世帯は1.6%です。単身世帯と比べると、平均値、中央値、ともに400万円ほど高いですが、こちらも注目すべきは中央値で、単身世帯のおよそ8倍です。比率で考えて単身世帯よりかなり高いと言えます。つまり、多少なりとも金融資産を保有しようとする意識が、二人以上の世帯では大きく上昇することを示しています。

金融資産の内訳

 金融資産の内実を詳しく見ると、単身世帯では「預貯金」 41.7%、「有価証券(債券、株式、投資信託)」30.9%、「生命保険」9.6%、「個人年金保険」9.1%。二人以上の世帯では、「預貯金」43.9%、「有価証券(債券・株式・投資信託)」19.2%、「生命保険」22.4%です。「預貯金」は大きくは変わりませんが、「有価証券(債券・株式・投資信託)」が二人以上の世帯では、およそ11%減り、「生命保険」がおよそ13%増えています。つまり、単身世帯では、よりリスクの高い「有価証券(債券、株式、投資信託)」の割合が高く、二人以上の世帯になると、「生命保険」といった、未来の安定と保障に向けた資金への意識が高まっています。

「金融資産の格差」は「自由の格差」

 家族を持てば、その家族への経済的配慮が生じることは当然といえば当然です。しかし、単身のうちから資産形成の意識をもっておくと、その後の生活の自由度が上がります。転職や結婚は、まずそれなりの資金がなければ、スムーズには進まない可能性もあります。またやりたいことをみつけて教育を受ける、資格を取得するための学校に通うといったことも、金融資産があれば比較的自由に選択ができます。

 こういった意味で、「金融資産の格差」は「自由の格差」ともいえるかもしれません。もちろん、単身であっても年齢を重ねれば、給与も増え金融資産も増えてくるでしょう。しかし、その分仕事の責任が大きくなったり、パートナー探しが難しくなったりと、できることの可能性は下がります。こういう意味で、生き方の自由を保つために、若いうちから少しずつ金融資産を積み立てていく習慣は大事だといえるのではないでしょうか。

<参考サイト>
・知るぽると:「家計の金融行動に関する世論調査」[単身世帯調査](2018年)
https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/tanshin/2018/pdf/yoront18.pdf
・知るぽると:「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査](2018年)
https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2018/pdf/yoronf18.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
3

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性

ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
4

AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意

AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意

AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力

一橋大学大学院国際企業戦略研究科研究科長・教授の一條和生氏によれば、AIが不得手なのは、暗黙知・常識に基づく高度な判断である。人間の役割はこうした暗黙知を捨てず、個々の状況での判断力を磨いていくことだ。暗黙知を支...
収録日:2017/07/24
追加日:2017/10/30
一條和生
一橋大学名誉教授
5

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授