社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.04.28

ポケモンGOにハマる40~50代が多い理由

 街角でどこからともなく人が集まり出し、スマホを取り出し画面をタップし始める、そんな風景といえば、「ポケモンGO」。いまや社会的にも認知された現象になりました。これは、レイドバトルという、街中に設置されたジムに出現するレアで強力なポケモンを協力して倒すゲームに興じる群衆の一風景。現実の位置情報とAR(現実拡張)技術を組み合わせたゲームコンテンツならではといってよいでしょう。

一大ブームからユーザー層に大きな変化が!

 「ポケモンGO」は、2016年7月に公式リリースされ、全世界で一大ブームとなりました。3年目に突入する2019年においても、リリース直後の熱狂とまではいかないまでも、安定した売上と賑わいを見せているようです。

 ただ、当初の若者中心だったユーザー層に変化が見られるようになりました。多くの人が気がつかれているように、年齢層がぐっとお高めになり、ポケGならぬポケ爺といって良さそうな、60~70代といった高齢者までにユーザー層を広げています。レイドバトルに群がる人を観察してみると、かつての10~20代の若者ではなく、その中心は男女を問わず40~50代の中高年層といってよいでしょう。

ユーザーのモチベーションは?

 なぜいまだに多くの人が「ポケモンGO」で遊び続けているのでしょうか。

 「ポケモンGO」は、任天堂の人気ゲームシリーズ「ポケットモンスター」が世界観のベースとなっています。ポケモンを捕獲して図鑑を完成させるコレクション要素、育てたポケモンを戦わせて勝利を競うというバトル要素がゲームの根幹をなしています。これらの要素に加えて、友達とのポケモン交換などソーシャルなコミュニケーション要素がユーザーのモチベーションとして設定されているのです。

 本編の「ポケットモンスター」シリーズにこれまで登場したポケモンはなんと809種類。「ポケモンGO」に実装されているポケモンは約470種類と、現時点でコレクションに終わりは見えません。(いずれの数字も2019年4月時点)

40~50代がユーザー層に多い理由は?

 「ポケモンGO」が40~50代の中高年層にアピールした理由にはいくつか考えられることがあります。

 一つ目の理由は、シンプルでわかりやすいゲーム性であること。ゲームをよくプレイする層は物足りなく感じるかもしれませんが、スマホの扱いに慣れていない層でも簡単な操作で遊ぶことができます。加えて、最初から詰め込みすぎず、出現したポケモンを捕獲するというシンプルな構成からスタートし、強力なポケモンをほかのユーザーと一緒に倒して捕獲を目指す「レイドバトル」や友達とポケモンの交換ができる「フレンド機能」などユーザーが消化しやすいように段階的に機能を追加しているのです。

 また、一部の課金アイテムを使うとゲームを優位に進めることができるので、お金に余裕のある40~50代にとってはアドバンテージが高く、アピールしやすいゲーム環境といえます。

 二つ目の理由は、運動不足の解消となること。「ポケモンGO」は歩くことが基本です。ポケモンを探すために歩くのはもちろん、現れたポケモンを捕獲するには、ポケストップと呼ばれるスポットを巡り、捕獲するためのアイテムを集めなければいけません。さらに、ポケモンのタマゴを孵化させるには、決められた距離(2km/5km/7km/10km)を歩かなければいけないなど、歩くことがゲームを進めるためには必要なのです。このことが、健康意識は高いけれども、日ごろから運動不足を感じている40~50代に響いたといえます。

 本編の第一作目「ポケットモンスター赤・緑」が発売されたのは1996年。80年代にファミコンブームを経験した40~50代も、当時は20~30代。社会人となり、家庭を持つ人も増え、多くの人がゲームから離れました。そのファミコン世代が、社会現象になったことで「ポケモンGO」を認知し、再びゲームに戻ってきたという見方もできるでしょう。

これからのポケモンGO

 いうまでもなく「ポケモンGO」は本編と連動するように、新しいポケモンが追加されていくことが予想できます。それらがいつ追加されるのか、今後どんな機能が追加されるのか、お楽しみはまだまだ尽きません。

 懸念されるのは、光があれば闇があるというように、ユーザー数が増えると不埒なプレイヤーによる問題が少なからず発生しています。人や場所の迷惑を顧みず群がるプレイヤーに辟易としている人も少なくないでしょう。

 ARという現実に重なるゲームであるからこそ、守るべきルールやマナーがあります。社会性にも健康にも貢献する可能性あるコンテンツであるからこそ、プレイヤーも運営サイドも力をあわせて、よりよいゲーム環境をめざしての尽力を期待したいところです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題

保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
3

『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味

『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味

徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味

宇宙や人生の本質について考察を深めていく今回の講義。前回に続く、宇宙がもう1つの宇宙のような存在をつくりたくて人間を創造したという話は非常に興味深い。陰陽(陰と陽)の両面を理解し、自然の摂理に根差した東洋思想を深...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/11/07
4

ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ

ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ

編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論

「人的資本経営」という言葉が、よく聞かれるようになりました。端的にいえば、「人材=コスト」ではなく「人材=資本」として捉え、人を大切にしていこうという考え方です。

「人を大切にする」というのは別に新しい...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/11/06
5

職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…

職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…

組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防

「職場に不満を持っている人が6~7割いる」というデータがある。経営者にとっては衝撃的なデータだが、実はリーダーのリーダーシップによってその割合は大きく変わるという。いったいどういうことなのか。不満にも妬み同様「い...
収録日:2023/06/21
追加日:2023/12/08
山浦一保
立命館大学 スポーツ健康科学部 教授 博士(学術:広島大学)