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認知症には睡眠時にその兆しが見えるものもある
三大認知症の一つ-レビー小体型認知症-
「レビー小体型認知症」(dementia with Lewy bodies 以下、DLB)という言葉を聞いたことはあるでしょうか。レビー小体とは異常なタンパク質が脳の神経細胞内にたまったもののことを指し、ピンク色に染まっているのが特徴です。ちなみに、手足が細かくふるえたり、体のバランスがとれずに倒れてしまったりするパーキンソン病もこのレビー小体が原因とされています。レビー小体が脳幹に出るのがパーキンソン病で、大脳皮質全体に出現するのがDLBとされていますが、では、どうしてレビー小体が現れるのかについては、まだ十分にその原因が解明されていません。
DLBはアルツハイマー型、脳血管性と並んで”三大認知症”の一つとされています。アルツハイマー型ほど知られてはいないものの、認知症の約2割はこのDLBを発症しており、それなりに発症頻度の高い認知症なのです。
特徴的な症状とは?
主な症状としては、便秘、また、匂いがうまく分からなくなってしまうということが挙げられます。あり得ないものが見えたりする幻視も、DLBならではの特徴的な症状です。しかし、こうした症状は本人にしか分からず、第三者からは判別しにくいことがほとんどです。さらなる特徴としてはうつ症状が挙げられます。ここでようやく、周りの人も異常に気づいて「医者に見てもらおうか」ということになります。ここで、うつ病か、なんらかの認知症状の始まりなのかを見定めることができればよいのです。しかし、この場合も医師がDLBを疑って脳検査をしてくれないかぎり、「うつ病」と診断されて服薬を続けているうちに進行して、かえって症状がひどくなってしまうことになりかねません。
早く気づくためのポイントは「睡眠」にある
医療分野では、「先制医療」として、あまり病気が進行してしまう前に病気を見つけることが、一層重要視されるようになってきました。認知症とて、その例外ではありません。そのためには、まず周囲の人が「これはもしかしてDLBでは?」と、早めに察知してあげることが必要なのですが、幸いなことにごく日常的行為でDLBに気づけるポイントがあるのです。それが睡眠です。睡眠は眠りの深いノンレム睡眠と眠りの浅いレム睡眠を、大体90分の周期で繰り返しています。ノンレム睡眠では、脳は休んでいます。これに対して、レム睡眠時は脳は働きながら体の緊張を落として、体を休めています。寝ていても眼球が動いたり、夢を見たりするのが、脳が働いているレム睡眠時の特徴です。夢は見ていても体が休んでいて動かないため、普通は大きな声や動きは出ません。
しかし、DLBの人はレム睡眠時に筋肉の緊張が保たれたままなので、大きな声を出したり、動いたりします。それも寝返りといった範囲を超えて、隣で寝ている人を叩いたりといった激しい動きをとるのです。このように「レム睡眠行動障害」のあるのが、DLBの特徴なのです。
レム期の睡眠と筋肉の状態を調べる睡眠検査は、病院で専用の機械を使って計測しなければなりませんが、その一歩も二歩も手前、家族が寝ながら大声を出したり、大きく動いたりしていないか、目配りすることが早期発見、対処につながります。特にDLBでは、約9割の人がなんらかの睡眠障害を起こしているとのことなので、睡眠状態のチェックは非常に簡単ながら、なかなかあなどれない方法なのです。
DLBにせよ、他の認知症にせよ、早めにその兆候に気づいて専門医の指示をあおぐこと、対処することが、認知症の進行を止めたり遅らせたりする一番の方法です。高齢者のいる家庭では、昼間の言動だけでなく睡眠時にもちょっと気をつけてあげてください。
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