社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.12.26

最近の手口から知る「ネット詐欺」その対策は?

 ネット詐欺はどんどん巧妙化しています。騙されないぞ!と思っていても、次々と新しい手段で私たちを狙ってきます。ネット詐欺は気づかないように仕組まれていたり、こちらの不安を煽り誘導してから罠にはめる方法で行われたりします。騙されないためには、まず相手の手口を知ることです。ここでは大きくワンクリック詐欺とフィッシング詐欺を取り上げ、対策まで考えてみます。

ワンクリック詐欺

 ワンクリック詐欺とは、たとえば無料サンプル動画などと記された動画をクリックすると、突然「ご入会ありがとうございます」や「登録完了」などといった画面が表示され、支払金額「○○万円」と表示されるようなものです。さらに画面にはIPアドレスやリモートホスト、プロバイダ情報などさも個人情報を収集したかのような表示も出てきます。また、表示されている文言には「支払わない場合遅滞金が発生する」であるとか「債権回収業者に依頼」「訴訟」といった面倒な脅しに近いもの並びます。時には、近くに「退会等の相談窓口」とともに電話番号やメールアドレスが記載されている場合もあります。しかし、これは焦っている人から直接情報を聞き出す罠です。

 この詐欺の場合、無視に限ります。これらの情報はネットにアクセスすればだれでも手に入る情報であり、個人情報というわけではありません。この詐欺はこれまで、アダルトサイトや出会い系サイトなどが多かったですが、最近では芸能情報やゲームの攻略サイトなど若年層向けのサイトでも確認されています。また、スマートフォンでは突然カメラのシャッター音がなるといったことあるようです。一瞬焦りますが、これは音楽ファイルで音を流しただけ。個体識別番号といった表示がされることもありますが、これらも全て個人情報を抜き取ったかのような演出です。突然お金が請求される画面が出たら、とにかく無視して閉じましょう。

フィッシング詐欺

 フィッシング詐欺は、知名度の高い金融機関やショッピングサイトを騙って「パスワードを変更してください」などといった通知を送り、偽メールにあるリンク先(偽装サイト)に誘導します。ここでIDやパスワードを入力させ、個人情報を盗み取るものです。スマホの番号だけでやり取りできるSMSや、メールで多発しているようです。リンク先からは本物そっくりのログイン画面が表示されます。たとえば、Google、Twitter、Facebook、Instagram、Amazon、楽天市場、PayPay、各種銀行、全日空、LINEなどなど、さまざまな偽装されたサイトのログイン画面が使われます。また、宅配業者の不在受け取りサイトやアプリの購入ストアを偽装したものなどもあります。

 対策としては、まずはリンク先のURLを開かないことが先決です。またURLをよく見ると、正規のサイトと微妙に異なっている点も特徴です。たとえば、アルファベットの「オー」が数字の「ゼロ」に置き換えられていたり、ドメインが異なっていたりします。ログイン画面では見分けがつかないことが多いので、URLの段階で気づけば被害を未然に防げます。よく使用するサイトのログイン画面はお気に入りに登録しておき、必要なときにはお気に入りからアクセスすると決めておいた方が安全です。

 もし、リンク先を開いて個人情報の入力を求められたら特に注意しましょう。メールからアクセスさせて個人情報を入力させることは、一般的には行われません。クレジットカードの情報まで求められたら、ほぼ詐欺です。少しでも怪しいと感じたら、フィッシング対策協議会のサイトで同じような実例が上がっていないか確認しましょう。

パスワードの管理と2段階認証の利用も大切

 ここまで、ワンクリック詐欺とフィッシング詐欺に関してみました。どちらにしろ、こちらからアクションを起こさなければ、大きな問題には発展しません。また、知らないアドレスやよくわからない発信者からの通知であれば、無視するのもさほど難しくはありません。問題は、知人のアカウントからこれらの通知が来た場合です。実はWeb上のアカウントは意外と容易に乗っ取られてしまいます。乗っ取られる場合、問題の多くはパスワードです。まず、パスワードの使い回しはやめましょう。不正に取得された認証情報や漏洩した情報は、ダークウェブなどの闇市場でリスト化されて販売されます。またパスワードだけにセキュリティを預けるのも危険です。

 ということで詐欺対策の初歩として、以下にある基本の4つを意識しましょう。

1.IDとパスワード以外の認証手順(2段階認証やアプリ認証など)を利用する。
2.疑わしいサイトやメールはアドレスをしっかり確認する。
3.不要なアカウントは削除、退会する。
4.PCやスマホではセキュリティソフトを利用し、最新の状態に保っておく。

ネットバンキングで2段階認証の情報までも盗み取られるケースが発生

 最後に、最近では、ネットバンキングで2段階認証の情報までも盗み取る新手の手口も発生し始めていますので、それについてお話します。手口は以下です。

 まずメールやSMSでフィッシングサイトに誘導しネットバンキングのIDとパスワードを入力させます。この情報を受け取った悪意の第三者は、即座に正しい銀行のアカウントに入力します(操作が自動化されている場合も)。すると利用者のもとに2段階認証のセキュリティコードが届きます。さらにこのセキュリティコードを偽サイトに入力させることで、2段階認証を突破する、というものです。

 対策としては、まず、銀行から身に覚えがないSMSなどが届いた場合、その文面をコピーしてネット検索し、本物かどうか確認することです。

 他にも、「偽ショッピングサイト・偽オークション詐欺」や「偽セキュリティソフト(偽警告)詐欺」「偽ふるさと納税サイト詐欺」「還付金詐欺」「観戦チケット詐欺」といったようにネット詐欺はあとをたちません。現代での詐欺は、だれでもいつでもターゲットです。自分は騙されない、と思うのではなく、少しでも怪しいと思ったら、落ち着いてしっかり情報を調べて詐欺かどうかを見極めましょう。

<参考サイト>
・これって詐欺?あなたを狙うネット詐欺手口と自衛手段を解説|Norton Blog
https://japan.norton.com/fraud-damage-7333
・仕掛けは単純!ワンクリック詐欺サイトの手口を解明|Norton Blog
https://japan.norton.com/oneclick-fraud-site-2080
・だまされないための心得 今、気を付けるべきネット詐欺の事例と対処法|TREND MICRO is702
https://www.is702.jp/special/3540/
・「2段階認証」突破狙う詐欺サイトが急増 作成ツール出回る|産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/191201/afr1912010010-n1.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム

初めて会った人なのになぜか好意を抱いてしまうことがある。だが、なぜそうした衝動が生じるのかは疑問である。デカルトが友人シャニュに宛てた「愛についての書簡」から話を起こし、愛をめぐる精神と身体の関係について論じる...
収録日:2018/09/27
追加日:2019/03/31
津崎良典
筑波大学人文社会系 教授
2

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解

アメリカの大転換はトランプ政権以前に起こっていた。1980~1990年代、情報機器と金融手法の発達、それに伴う法問題の煩雑化により、アメリカは「ラストベルト化」に向かう変貌を果たしていた。そこにトランプの誤解の背景があ...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/11
3

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
4

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制

「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転

カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転

戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造

2025年9月、アメリカのトランプ政権は、国防総省を「戦争省」へ名称を変更した。それは内戦の構造を根本的に反転させる、大きな変化を象徴する出来事だった。政府から国民に対して行われるトップダウンの内戦とはなにか。ゲリラ...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/05
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー