テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.01.01

外国人は本当に日本に忍者がいると思っている?

 外国人が「日本」と聞いて、まず思い浮かべるものといえば、何だと思いますか。寿司、サムライ、アニメなどいろいろありえますが、なかでも人気が高いのが「忍者(NINJA)」です。

 特に忍者ファンが多いのはアメリカ。過去数十年の間に映画やテレビ番組などで何度も取り上げられてきました。その歴史を紹介するとともに、アメリカでどのように忍者が受け入れられているのかをご案内します。

忍者にゾッコンのアメリカ人 007もNARUTOも

 半世紀以上の前の映画になりますが、1967年に公開された『007は二度死ぬ』には、作中に忍者部隊が登場します。本作は当時、年間興行成績第二位の大ヒットとなりました。

 全米で本格的な忍者ブームが巻き起こったのは80年代のこと。その火付け役となったのが映画『燃えよNINJA』(1981年)です。TV番組『筋肉番付』やリポビタンDのCMでお馴染みのケイン・コスギの父であり、世界的アクション・スターのショー・コスギの出世作になった作品でもあります。伝説のNINJAアクションとして語り継がれています。

 さらに1987年に日本でも人気を博したアニメ『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』の放映が始まりました。これによって子どもたちにも忍者ブーム到来。もうひとつ、アニメ作品といえば、『NARUTO』です。2006年には『ニューズウィーク日本版』で「世界が尊敬する日本人100」に主人公のナルトがアニメキャラクターとして唯一選出されました。

 スポーツエンターテイメント『SASUKE』のアメリカ版スピンオフ番組があるのですが、その番組名は『American Ninja Warrior』(アメリカン・ニンジャ・ウォーリアー)。競争が熾烈なアメリカのテレビ業界で10年以上放送される人気番組です。

やっぱり忍者がいると信じている?

 ざっとアメリカにおける忍者の需要の歴史を振り返りました。忍者がアメリカでとても愛されてきたことがよく分かりますね。信じられないかもしれませんが、こうした影響もあって、いまも忍者が日本にいると信じている人がアメリカには一定数いるようです。

 すこし古いですが、2013年9月に放送された日本テレビの情報エンタテインメント番組「ZIP!」の特集でも「日本に忍者がいると信じている外国人が多いんです!」と報じています。

 最近では、Youtuberが「外国人に忍者がいると思いますか?」とインタビューする動画がいくつもアップされています。やはり今なお一定の割合で忍者の存在を信じている人がいるようです。

日本でこそ忍者ルネッサンスを

 さて、アメリカ人の忍者愛はよく分かりましたが、本場の日本ではどうでしょう。みなさんは、もし外国人から「忍者について教えてほしい」と言われたらどのくらい答えられますか。忍者の歴史や忍者について、きちんと答えられる人はほとんどいないでしょう。

 実はアメリカ人が信じていることはあながち間違いではありません。本当に、まだ日本に忍者はいます。その人はラストサムライならぬラストニンジャ、おそらく最後の一人でしょう。甲賀流伴党21代目宗家の川上仁一さんです。1949年に生まれ、六歳のときに師匠である石田正蔵に出会い、十代で甲賀流忍術を継承したのだそうです。

 川上さんが生まれたのは戦後ですが、戦前の軍学校である陸軍中野学校ではカリキュラムの中で忍術を指導していたことも明らかになっています。現代人にとっては、忍者というと歴史や物語の中のお話のような感覚がありますが、20世紀前半まで忍術はれっきとした戦術として活用されていたのです。指導者は甲賀流の忍者・藤田西湖。『最後の忍者どろんろん』(新風舎)という自叙伝をのこしています。

 現代のビジネスパーソンにとってもう少し身近な話をすると、甲賀流の忍者は肩こりをなんと15秒で治していたのだそうです。純米酒を痛みのある部位やツボにつけてマッサージするという手法です。この話は「ハーバー・ビジネス・オンライン」でも記事として取り上げています。

 現代でも役に立つ忍術はもっと他にもあるかも知れません。実用的な忍術にかぎらず、忍者を知ることは外国人とのコミュニケーションの際に役に立ちます。今こそ、日本でこそ忍者ルネッサンスを起こすべきではないでしょうか。アメリカ人に負けていられません。

<参考サイト>
・【HBO!】甲賀流忍者は肩こりを15秒で治していた!現代のビジネスマンが速攻で疲労回復するテクニック
https://hbol.jp/141122
・第1回「陸軍中野学校のカリキュラム の中での「忍術」講義」(後期)│三重大学
http://www.human.mie-u.ac.jp/kenkyu/ken-prj/iga/kouza/2018/2018-7.html
・最後の忍者どろんろん (新風舎文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4797494883/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生

ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生

ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯

ピアニスト江崎昌子氏が、ピアノ演奏を交えつつ「ショパンの音楽とポーランド」を紹介する連続シリーズ。第1話では、すべてのピアニストにとって「特別な作曲家」と言われる39年のショパンの生涯を駆け足で紹介する。1810年に生...
収録日:2022/10/13
追加日:2023/03/16
江崎昌子
洗足学園音楽大学・大学院教授 日本ショパン協会理事
2

歴史のif…2.26事件はなぜ成功しなかったのか

歴史のif…2.26事件はなぜ成功しなかったのか

クーデターの条件~台湾を事例に考える(5)世直しクーデターとその成功条件

クーデターには、腐敗した政治を正常化するために行われる「世直しクーデター」の側面もある。そうしたクーデターは、日本では江戸時代の「大塩平八郎の乱」が該当するが、台湾においては困難ではないか。それはなぜか。今回は...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/17
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
3

不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?

不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実

改革開放当時の中国には技術も資本もなく、工場を建てる土地があるだけだった。経済成長とともに市民が不動産を複数所有する時代となり、地価は高騰し続けた。だが、習近平政権による総量規制は不動産価格を低下させ、消費低迷...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/10/16
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く

学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く

編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?

今井むつみ先生が2024年秋に発刊された岩波新書『学力喪失――認知科学による回復への道筋』は、とても話題になった一冊です。今回、テンミニッツ・アカデミーでは、本書の内容について著者の今井先生にわかりやすくお話しいただ...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/10/16