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DATE/ 2020.01.18

数字でみる男女格差…世界と日本の違いは?

 2019年12月17日、世界経済フォーラムは『The Global Gender Gap Report 2020』(「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書 2020」)を公表し、その中で、2019年版の各国における男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」を発表しました。

 世界経済フォーラム(World Economic Forum;以下「WEF」)は、1971年創設された世界の1200以上の企業や団体が加盟する非営利の公益財団です。市場原理、自由貿易、技術革新などを共通の価値観とし、グローバル経済の発展や地球環境の保護、貧困や差別の撲滅、国際平和の推進などのために活動しています。

 そして、「ジェンダー・ギャップ指数」(gender gap index;以下「GGI」とも表記)は、国ごとの男女格差(ジェンダーギャップ)を測る指数です。WEFが2005年から調査を実施し、2006年から『The Global Gender Gap Report』において毎年発表しています。なお、各国をランク付けするため、「男女平等ランキング」ともよばれています。

世界と日本の「ジェンダー・ギャップ指数」

 「ジェンダー・ギャップ指数」は、各国の資源や機会が男女間でどのように配分されているかについて、1)経済(給与、雇用数、管理職や専門職での雇用における男女格差)、2)教育(初等教育や高等・専門教育への就学における男女格差)、3)健康(出生時の性別比、平均寿命の男女差)、4)政治(議会や閣僚など意思決定機関への参画、過去50年間の国家元首の在任年数における男女差)――の4分野で評価し、分野毎に各使用データをウェイト付けして総合値を算出。さらに4分野毎の総合値を単純平均して算出します(0が完全不平等、1が完全平等)。

 2019年版となる『The Global Gender Gap Report 2020』における「ジェンダー・ギャップ指数」のトップ10ならびに日本の順位は、以下のとおりとなっています。なお、各分野の順位とGGI値も併記しています。



 100%を完全な平等とすると、2019年現在の世界の「ジェンダー・ギャップ指数」は平均で68.6%でしたが、日本の「ジェンダー・ギャップ指数」は65.2%と平均以下、順位も調査国153カ国中121位という、厳しい結果となりました。特に、政治分野と経済分野の格差は深刻となっています。

 ちなみに、日本の「ジェンダー・ギャップ指数」の推移は、以下のようになっています。



 過去のデータとも比較することで、前年の66.2%からスコアを落としたこと、過去13年にわたってGGI値に大きな変動がなく2015年の67%が最高スコアであること、2017年の過去最低順位からも大きく後退する順位となったことなど、さらに厳しいファクトが見えてきます。

男女格差…世界と日本の最大の違いは政治分野

 日本の課題を意識しながらあらためて「ジェンダー・ギャップ指数」2019年版のGGI値を見てみると、とりわけ政治分野に大きな違いがあることがよくわかります。一方で、順位差はあるものの教育分野や健康分野のGGI値に大きな違いがないことがうかがえます。

 さらに「ジェンダー・ギャップ指数」2019年版の特色として、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド、4位スウェーデンと、トップ4に北欧の国々がならんだことが挙げられます。トップ4の国々の特徴は、各分野ともGGI値が高く、特に日本とは反対に政治分野の順位(スコア)の高さが目立ちます。

 『The Global Gender Gap Report 2020』が公表される1週間前の2019年12月10日、3位となったフィンランドでは、サンナ・マリン氏が新首相に選出され、女性主導の内閣が誕生しました。マリン氏は、同国では史上最年少の34歳で3人目の女性首相となります。また、2019年12月現在、1位のアイスランドおよび2位のノルウェーの首相も女性です。アイスランドの首相は2017年から同国史上2人目の女性首相カトリン・ヤコブスドッティル氏が、ノルウェーの首相は2013年から同国史上2人目の女性首相エルナ・ソルベルグ氏が務めています。

 政治分野だけに限っても北欧諸国が男女間の格差が少ない背景には、特に1960年代後半から、北欧諸国の女性は政治領域において声をあげつつ行動で示すことによって、クオータ制を導入するなど政治課題に影響を与えシステムを更新してきた歴史があります。そのような背景によって、男女関係なく政治分野で活躍できる土壌があり、スキルや才能こそが重視される価値観がはぐくまれています。

 世界や北欧の素晴らしいモデルやよい取り組みをそのまま日本にコピーすることは難しいかもしれませんが、世界中の偉大な先人や現在の異国の同時代人の取り組みからおおいに違いを学び、そこから男女格差問題もよりよく改善することが望まれます。

<参考文献・参考サイト>
・Global Gender Gap Report 2020 - Weforum - World Economic Forum
https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/WEF_GGGR_2020.pdf
・「WEF」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「世界経済フォーラム」『日本大百科全書』(小学館)
・「ジェンダーギャップ指数」『日本大百科全書』(小学館)
・『ニュース年鑑 2018』(池上彰監修、ポプラ社)
・グローバル・ジェンダー・ギャップ指数:参考資料
https://www.joicfp.or.jp/jpn/wp-content/uploads/2019/02/5133ed35130bb1edb8fe12e5526c2f13.pdf
・「GGI」『イミダス2018』(集英社)
・日本は過去最低に 2020年版「ジェンダー・ギャップ指数」~世界経済フォーラム~
https://www.plan-international.jp/news/girl/20191218_20361/
・『北欧福祉国家は持続可能か』(クラウス・ペーターセン、スタイン・クーンレ、パウリ・ケットネン編著、 大塚陽子・上子秋生監訳、ミネルヴァ書房)
・『フィンランドのジェンダー・セクシュアリティと教育』(橋本紀子著、明石書店)
・「フィンランド女性主導内閣誕生 世界で女性トップ相次ぐ、日本出遅れ」『日本経済新聞 電子版』(2019年12月11日付)
・フィンランドで「世界最年少34歳の女性首相」が誕生…それでも“若さ”と“女性”が注目されないワケ
https://www.fnn.jp/posts/00049349HDK/201912131130_FNNjpeditorsroom_HDK

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