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DATE/ 2020.03.21

需要は右肩上がり…高性能化するマスク事情

 近年、インフルエンザやコロナウィルスのような新たな脅威となった感染症の流行、さらには国民病の一種ともいわれる花粉症への対策など、マスクの需要は右肩上がりとなっています。そして、拡大するマスク市場では、ニーズに応じた多様なマスクが登場し、高性能化も遂げています。

 昨今のマスク事情について、主に日本衛生材料工業連合会(全国マスク工業会)の発表しているデータを参照しつつ、考察してみたいと思います。

マスクの種類別生産枚数・生産比率

 マスクは機能および用途で大別した場合、1)「家庭用マスク」風邪・花粉対策や防寒・保湿などの目的で日常に使われるマスク、2)「医療用マスク」医療現場で使われる感染防止用マスク(別名:サージカルマスク)、3)「産業用マスク」工場などで作業時の防塵対策に使用されるマスク(別名:工業用マスク、防塵マスクなど)――の3種類に分けられます。

 2018年度のそれぞれの生産枚数および生産比率は、以下のようになっています。

「マスクの種類別生産枚数・生産比率(2018年度)」
〔マスクの種類:生産枚数:生産比率〕
家庭用マスク:428,400万枚:77%
医療用マスク:99,500万枚:18%
産業用マスク:25,900万枚:5%
(計553,800万枚)

 データからは、3種類のマスクのうち、薬局やスーパーなどで売られて一般的に使われている家庭用マスクが、突出して多いことがわかります。この家庭用マスクが、市場拡大の主因となっています。

多様化・高性能化する家庭用マスクの素材と形状

 家庭用マスクは素材別に、1)「ガーゼタイプ」主に綿織物を重ね合わせたマスク。最近では中に特殊なフィルタを縫い込んで花粉などの通過を防ぐものも増えている、2)「不織布タイプ」複数の原料を組み合わせることで、厚みや空隙を自由に調整できるのが特徴。値段が安く、使い切りを前提にしたものが中心ではあるが、機能が特価した高性能な物も増えている――の主に2種類があります。

 ひと昔前まではガーゼ素材が主流だった家庭用マスクですが、現在は、元々医療用マスクの素材として使われていた不織布(ふしょくふ:織らない布。繊維を合成樹脂その他の接着剤で接合して布状にしたもの)を素材とするなど、形状やサイズなども多様なマスクが登場し、高性能化も遂げています。

 さらに、家庭用マスクの形状には以下の3種類に大別でき、形状ごとの特徴や長所があります。

 1)「平型マスク」一般的なガーゼマスクに相当し、長所は高い保湿性と保温性です。マスク本来の捕集や飛散防止といった機能に加え、睡眠時やエアコンの効いたオフィスなどでも、乾燥からのどを保護することに役立ちます。また、天然素材である綿織物を使用しているのも特徴です。

 2)「プリーツ型マスク」不織布タイプのマスクです。顔前部にフィットし、圧迫感を与えず、隙間なくフィットさせやすいといった利点があります。また、前面がプリーツ状になっているため、口の動きにも柔軟に対応し、マスクをしたまま話をしてもズレにくいことなども長所です。

 3)「立体型マスク」不織布タイプのマスクです。人間の顔の形に合わせてデザインされているため、隙間なくピッタリとフィットします。マスクと口元の間に空間ができるため、装着時の息苦しさやしゃべりにくさが大幅に緩和されます。なお、口紅がつきにくいなどの利点もあります。

正しいマスクの選び方・使い方

 ところで、感染症対策の視点に立てば、本来マスクは、症状を持った人やウイルスを保菌している人が飛沫を周囲にまき散らさないために装着するものであり、感染していない人が予防するために着用するものではありません。

 また、性能よりも重要なことは、自分のサイズにあった“ジャストサイズ”のマスクを選び、適切に着用することです。そのため、まずは自分にあうマスクを選ぶ必要があります。

 自分にあったマスクのサイズの測り方と推奨サイズ・選び方・着用時のポイントなどは、以下のようになっています。

「マスクのサイズの測り方と推奨サイズ」
1)親指と人差し指でL字形を作る。
2)L字形にした状態で、耳の付け根の一番高いところに親指の先端を当て、鼻の付け根から1cm下のところに人差し指の先端を当てる。
3)親指から人差し指までの長さを測る(測った長さがサイズの目安となる)。
4)3)で測った長さごとに小さい順に、1)9~11cm「子ども用サイズ」、2)10.5~12.5cm「小さめサイズ」、3)12~14.5cm「ふつうサイズ」、4)14cm以上「大きめサイズ」――が推奨されています。

 そのうえでマスクを選ぶ際の6大チェックポイントは、
1)(購入前)素材・機能をチェックする、
2)(購入前)形・サイズをチェックする、
3)(購入後)顔との間に隙間ができないか、
4)(購入後)耳かけで耳が痛くならないか、
5)(購入後)呼吸がしやすいか、
6)(購入後)ゴワゴワしたり不快感はないか――です。

 さらに着用時のポイントは、1)裏表と上下をきちんと確認して間違えない、2)耳にかけるひも部分のみを持つ(表面は汚れるため、裏面は汚さないため、どちらも極力触らない)、3)ワイヤー入りタイプは自分の鼻のかたちにフィットするように曲げる、4)鼻から顎の下まで隙間がないようにきっちり覆う――の4点です。

 使用したマスクは、空気中の飛沫をたくさん付着することになります。そのため、マスク交換の目安は、一度の外出時着用もしくは毎日がおすすめとなります。また、捨てる際にも付着した飛沫が拡散しないよう、袋にいれたりティシュや紙に包んだりして捨てるようにしてください。

 なお、マスク不足によりキッチンペーパーなどを利用した“簡易マスク”や“手作りマスク”の情報も増えてきていますが、これらはあくまでも緊急用・応急用とすることを、感染症に詳しい関西福祉大学教授の勝田吉彰氏など専門家は述べています。

これからのためのマスクリテラシー

 マスクが日本で広く使われるようになったのは、1919(大正8)年のスペイン風邪(1918年から1919年にかけて全世界に流行したインフルエンザ)の流行といわれています。

 感染症の流行とともに需要が高まり高性能化してきたマスクですが、必要な人が適切に使用できないことによって、せっかく企業努力によって質も量も十分なマスクが供給されたとしても、機能不全となってしまうおそれがあります。しかし、物理的・社会的な来し方(感染経路)を持つ感染症という病気の対策は、個人で行うと同時に社会的な感染リスクを下げる必要があります。

 もちろん、花粉症のような感染症以外の病気にも必要とされているため、マスクの需要は今後ますます高まり、それによって高性能化もなされていくことと思われます。社会的なツールとして多くの人に正しく使われることによって社会の福利を最大限に上げるためにも、個人のマスクリテラシーの向上も求められています。

<参考文献・参考サイト>
・「マスク」『日本大百科全書』(山根信子著、小学館)
・「マスク」『世界大百科事典』(平凡社)
・「スペイン風邪」『デジタル大辞泉』(小学館)
・マスクついて│一般社団法人日本衛生材料工業連合会
http://www.jhpia.or.jp/product/mask/index.html
・マスクの統計データ│一般社団法人日本衛生材料工業連合会
http://www.jhpia.or.jp/data/data7.html
・日衛連NEWS - 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会
http://www.jhpia.or.jp/news/index.html
・「不織布」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「新型肺炎に克つ -総力取材15本」『週刊文春』(2020年2月6日号、文藝春秋)
・「「新型肺炎」10の核心」『週刊文春』(2020年2月13日号、文藝春秋)
・マスク、自分で作ってみた 効果ある?「緊急避難なら」:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN2D7HSRN27PLBJ001.html
(10MTV編集部)

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