テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.06.22

電車の「忘れ物」最も多いものとその行方は?

 手すりに傘をかけたまま電車を降りてしまった!網棚の上に、手荷物を置きっぱなしにしてしまった!……などなど、電車でうっかり忘れ物をしてしまった経験、皆さんもありませんか。今回は公表している鉄道会社の忘れ物データをもとに、電車ではどんな忘れ物があるのか、また電車で忘れ物をしたらどうなるのかなどを徹底解説します。

最も多い忘れ物、断トツ一位はやっぱり「傘」

 電車で多い忘れ物について、相模グループの相模鉄道(※)の2019年度(平成30年度)の調査と、JR四国の2017年度(平成29年度)のデータから調べました(※データは「相模バス」との合算値となります。本記事では便宜上「相模鉄道」と記します)。

 これによると、忘れ物で最も多いのは相模鉄道、JR四国ともに「傘」。相模鉄道では1年間で集められた忘れ物全84,067点のうち「傘」の忘れ物は20,400点で全体の24.3%。JR四国では、全34,348点のうち「傘」が6,984点、全体の19.9%を占めたそうです。

 2位以下では、相模鉄道では「袋・封筒類」「現金」が続き、JR四国では「装身具」「書類・文房具類」となっています。忘れ物の種類には地域差があるものの、その数の多さから傘は全国共通の忘れ物といえそうです。

<相模鉄道・バス 忘れ物トップ3(2019年度)>
1位:傘(20,400点/24.3%)
2位:袋・封筒類(7,152点/8.5%)
3位:現金(6,431点/7.6%)

<JR四国 忘れ物トップ3(2017年度)>
1位:傘(6,984点/24.3%)
2位:装身具(5,545点/19.9%)
3位:書類・文房具類(2,788点/8.0%)

 この中でも目立つのが「現金」の忘れ物。実は年々増えているそうで、相模鉄道では金額は発表されていませんが、JR四国での1件の最高額は約33万円となっています。東京メトロ社員のインタビューを紹介したテレビ東京の記事によると、700万円の現金が届けられたこともあるそう。

 実は〝落とし物〟として交番などで届けられた現金は、東京都内だけで年間38億円(2018年)にものぼるといいます。塵も積もればなんとやら……とはいえ、驚きの数字ですよね。

 ちなみに忘れ物の返還率は、相模鉄道では全体の31.3%、JR四国では29.8%となったそうです。どちらも全体の約7割が処分されたと思うと、ちょっぴり切ないような、フクザツな気持ちになります。

バイオリンからカブトムシまで!? 聞いてびっくりの忘れ物

 駅での落とし物といえば傘やハンカチ、ICカードなどが定番ですが、中には驚くべき珍しい忘れ物も。

 相模鉄道では「バイオリン」「テレビ」「旗」が、JR四国では「宝くじ」「給与明細」「包丁セット」「竹刀」「携帯トイレ」などがあったそう。

 前述のテレビ東京の記事によると、お忘れ物総合取扱所で届けられたものの中には「虫かごに入ったカブトムシ」や「入れ歯」、「成田空港のカート」まであったそうです。

 落とし主と、それまでどんなストーリーがあったのか……つい想像したくなりますね。ちなみに「成田空港のカート」は無事成田空港に返却されたそうです。

実際に電車に忘れ物をしてしまった場合の対処法

 さて、実際に電車や駅で忘れ物をしたことに気づいたら、どうすればよいのでしょうか?

 まずは落としたと考えられる駅や鉄道会社に連絡し、落とし物の内容(色や特徴など)を伝えた後、見つかれば各社の忘れ物預かり所に取りに行く、というのが一般的な流れとなります。

 一部の鉄道会社では、LINEやチャット(自動応答)を使った問い合わせ窓口も開設。24時間、忘れ物捜索の受付が可能です。筆者も阪急電鉄の駅で傘を忘れてしまった時にチャットを利用したことがありますが、2分程度で連絡完了しました。

 うっかり忘れてしまったけど、もう深夜だし連絡も面倒だ……という人でも、チャットならいつでも気軽に使えますので、オススメですよ!

競売にかけられることも。「忘れ物」のその後の運命

 鉄道会社によって忘れ物の保管期間はさまざまですが、忘れ物預かり所ではおおむね3日程度、その後は指定の警察署に移管され、1~2週間、最大で3ヶ月間ほど保管されるそうです。それでも持ち主が特定されなければ処分という形になります。

 阪急電鉄では、忘れ物の数が多い傘のみ「お忘れ物センター」で2週間保管後、警察署には届けずそのまま処分となるそうです。各社で対応が分かれますので、必ず確認しましょう。

 ちなみに保管期間が過ぎた忘れ物は、専門業者によって買い取られて「市」に出されるケースも。ショッピングモールや催事場で「鉄道忘れ物掘り出し市」というのぼりを見たことがある人もいるのでは。ブランド物の小物やベビーカーなど、思わぬ〝掘り出し物〟が破格の値段で買えるとあって大変人気があり、「鉄道忘れ物市マニア」まで登場しているそうです。落とし主と、落とし物が「鉄道忘れ物掘り出し市」でまさかの再会……なんてドラマもありそうですね。

 いずれにしても、忘れ物は先延ばしすればするほど、取り返すのは難しくなってしまいます。保管する側も大変なコストがかかるそうですので、忘れ物に気づいたら、できるだけ速やかに連絡しましょうね。

<参考サイト>
・2019年度の忘れ物件数は84,067件(SOTETSU)
https://cdn.sotetsu.co.jp/media/2020/pressrelease/pdf/r20-36-mm6.pdf
・平成29年度忘れ物白書(JR四国)
http://www.jr-shikoku.co.jp/03_news/press/2018%2008%2029%2002.pdf
・地下鉄の忘れ物は「記憶」から「700万円」まで。東京メトロに聞いた多い忘れ物5選(テレビ東京プラス)
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/lifestyle/entry/2019/020173.html
・『 お忘れ物 』 内のFAQ(東日本旅客鉄道株式会社)
http://jreastfaq.okbiz.okwave.jp/category/show/10?site_domain=default
・あなたが電車内で失った“忘れ物”の運命(ITmediaビジネスONLINE)
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1706/09/news022.html

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学大学院情報学環 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授