なぜ日本語は3種類もあるのか?
「日本語は難しい」といわれる理由はいくつか考えられますが、一因に「漢字」「ひらがな」「カタカナ」といった、“3種類の文字の併用”が挙げられます。
ではなぜ日本語の文字は3種類もあるのでしょうか?また中国伝来の「表意文字」である漢字はともかく、日本固有の「表音文字」であるひらがなとカタカナはなぜ2種も存在するのでしょうか?
そこで、奈良時代になると表意文字としての漢字の長所はそのまま生かして用いつつも並行して、漢字の音や訓を活用し、日本語の話し言葉と調子をあわせた表音文字「万葉仮名」が生み出されました。ちなみに万葉仮名は、「安(あ)」「加(か)」など漢字の音読みを仮借した“音仮名”と、「三(み)」「女(め)」など漢字の訓読みを仮借した“訓仮名”に大別されます。
とはいえ、まだ万葉仮名の段階では、1字1音といった実用化や、今日的なひらがなやカタカナのような体系化はなされてはいませんでした。しかし、万葉仮名はひらがなとカタカナの原形となり、発展していくことになるのです。
ひらがなの原形となった漢字には、万葉仮名の中から字画が少なく書きやすい漢字がさらに厳選される傾向にありました。速く楽に書けるように草書体に崩しさらに簡略化したひらがな。おおよその体系化がなされたのは、平安時代のことといわれています。
ひらがなは、表意文字という漢字の特性にしばられないことから、かえって曰く言いがたい心情や内面を書き表す際に好まれ、和歌や日記などに用いられるようになります。『源氏物語』『枕草子』といった、女流文学の隆盛にも大きな役割を果たしました。
また近世以降は、普及した読み物等の“振り仮名”の主流として、ひらがなが用いられるようになっていきます。
カタカナもひらがな同様に万葉仮名を原形に速く楽に書きたいという思いから、平安時代に生まれたと考えられています。しかしながらひらがなとの違いは、カタカナはより実用面が重視された点にあります。
平安時代の公文書や学術書は漢文であったため、政治層や学術層であった貴族や僧侶のリテラシーや教養として、漢文の素養が必要でした。しかし、漢字のみで書かれた漢文を読み解くことは大変に難しく、そのため送り仮名や訓点が用いられるようになります。そして漢文が書かれた書物の狭い行間により速く簡便に書き込むために、ひいては公文書の注釈や学術理解のための記号的な文字として、カタカナは発展していきます。
また近代以降は、急増した英語をはじめとした“外来語の表記”の主流として、カタカナが用いられるようになっていきます。
また、さらに時代が流れた明治時代に入ると、アルファベット表記を用いている国々からも様々な言語が輸入されることとなりました。それらにあわせて、例えば英語の「economy」を「経済」と、オランダ語の「republiek」を「共和」と訳すなど、日本製の漢字用語も誕生していきました。
言葉は使う場面や文化、時代の変遷によって変わってきます。日本語も常に変化しています。書き言葉は活字だけでなく、電子化もされるようになってきました。世界で唯一3種類の文字を持ち、豊かかつ独自に発展してきた日本語。今後の進化も期待されています。
ではなぜ日本語の文字は3種類もあるのでしょうか?また中国伝来の「表意文字」である漢字はともかく、日本固有の「表音文字」であるひらがなとカタカナはなぜ2種も存在するのでしょうか?
ひらがなとカタカナを“生んだ”「漢字」
もともと書き言葉をもっていなかった日本語に、最初の文字として「漢字」が輸入されたのは、古代のこととされています。しかし、漢字を日本語に借用して用字用語とするためには、話し言葉としての日本語との調整が必要でした。そこで、奈良時代になると表意文字としての漢字の長所はそのまま生かして用いつつも並行して、漢字の音や訓を活用し、日本語の話し言葉と調子をあわせた表音文字「万葉仮名」が生み出されました。ちなみに万葉仮名は、「安(あ)」「加(か)」など漢字の音読みを仮借した“音仮名”と、「三(み)」「女(め)」など漢字の訓読みを仮借した“訓仮名”に大別されます。
とはいえ、まだ万葉仮名の段階では、1字1音といった実用化や、今日的なひらがなやカタカナのような体系化はなされてはいませんでした。しかし、万葉仮名はひらがなとカタカナの原形となり、発展していくことになるのです。
漢字を“崩した”「ひらがな」
「ひらがな」は漢字の略体、いわゆる漢字の“崩し書き”から誕生しました。ひらがなの原形となった漢字には、万葉仮名の中から字画が少なく書きやすい漢字がさらに厳選される傾向にありました。速く楽に書けるように草書体に崩しさらに簡略化したひらがな。おおよその体系化がなされたのは、平安時代のことといわれています。
ひらがなは、表意文字という漢字の特性にしばられないことから、かえって曰く言いがたい心情や内面を書き表す際に好まれ、和歌や日記などに用いられるようになります。『源氏物語』『枕草子』といった、女流文学の隆盛にも大きな役割を果たしました。
また近世以降は、普及した読み物等の“振り仮名”の主流として、ひらがなが用いられるようになっていきます。
漢字を“省いた”「カタカナ」
一方、「カタカナ」は漢字の省略、偏や旁といった漢字の“部分の切り取り”から誕生しました。カタカナもひらがな同様に万葉仮名を原形に速く楽に書きたいという思いから、平安時代に生まれたと考えられています。しかしながらひらがなとの違いは、カタカナはより実用面が重視された点にあります。
平安時代の公文書や学術書は漢文であったため、政治層や学術層であった貴族や僧侶のリテラシーや教養として、漢文の素養が必要でした。しかし、漢字のみで書かれた漢文を読み解くことは大変に難しく、そのため送り仮名や訓点が用いられるようになります。そして漢文が書かれた書物の狭い行間により速く簡便に書き込むために、ひいては公文書の注釈や学術理解のための記号的な文字として、カタカナは発展していきます。
また近代以降は、急増した英語をはじめとした“外来語の表記”の主流として、カタカナが用いられるようになっていきます。
日本語と“成った”外来語
他方、時代が流れるとともに、外来語である漢字にも、日本製の漢字「国字」が誕生していきます。一例として、山を上って下るから「峠(とうげ)」、礼儀作法(美しい作法)を身につけるから「躾(しつけ)」、すぐ弱る(腐りやすい)から「鰯」――などがありますが、表意文字の特性を生かした国風化がなされています。また、さらに時代が流れた明治時代に入ると、アルファベット表記を用いている国々からも様々な言語が輸入されることとなりました。それらにあわせて、例えば英語の「economy」を「経済」と、オランダ語の「republiek」を「共和」と訳すなど、日本製の漢字用語も誕生していきました。
言葉は使う場面や文化、時代の変遷によって変わってきます。日本語も常に変化しています。書き言葉は活字だけでなく、電子化もされるようになってきました。世界で唯一3種類の文字を持ち、豊かかつ独自に発展してきた日本語。今後の進化も期待されています。
<参考文献>
・『日本語史要説』(渡辺実著、岩波書店)
・『日本語史概説』(沖森卓也編著、朝倉書店)
・『日本語全史』(沖森卓也著、ちくま新書)
・『池上彰のニュースそうだったのか!! 1』(池上彰・「池上彰のニュースそうだったのか!!」スタッフ著、SBクリエイティブ)
・「万葉仮名」『日本大百科全書』(沖森卓也著、小学館)
・「万葉仮名」『世界大百科事典』(山田俊雄著、平凡社)
・「国字」『日本大百科全書』(月本雅幸著、日本大百科全書)
・『日本語史要説』(渡辺実著、岩波書店)
・『日本語史概説』(沖森卓也編著、朝倉書店)
・『日本語全史』(沖森卓也著、ちくま新書)
・『池上彰のニュースそうだったのか!! 1』(池上彰・「池上彰のニュースそうだったのか!!」スタッフ著、SBクリエイティブ)
・「万葉仮名」『日本大百科全書』(沖森卓也著、小学館)
・「万葉仮名」『世界大百科事典』(山田俊雄著、平凡社)
・「国字」『日本大百科全書』(月本雅幸著、日本大百科全書)