テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.01.03

メールにZIPファイル添付がNGの理由

 ZIPファイルは便利な機能ですが、特にWindows7より前のPCやフリーソフトで作成する「パスワード付きZIPファイル」に関して言うと、今ではNGのようです。平井卓也デジタル改革担当相は2020年11月17日、中央省庁の職員を対象に「パスワード付きZIPファイルの送信ルール(PPAP)」を廃止する方針を明らかにしています。パスワード付きZIPファイルは、大企業でもけっこう頻繁にやり取りされているようなのですが、NGな理由はいったい何なのでしょうか。

完全な「暗号化」ではない

 「パスワード付きZIPファイルの送信ルール(PPAP)」とは、パスワード付きZIPファイルを作成、送信したのち、パスワードを別メールで送る、という一連の情報共有方法です。パスワード付きZIPファイルは、Windows7以降標準機能では作れなくなっています。こうしたことから現在ではフリーソフトで作成、および展開する必要があります。昔からの習慣が今でも続いていると言っていいでしょう。パスワード付きZIPファイルが嫌われる大きな理由の一つは、完全な「暗号化」ではないという点です。パスワードなしでディレクトリ構造やファイル名を確認できてしまう点は、セキュリティとしてだいぶ甘いと考えられます。また、パスワードに関しても入力回数制限等はありません。つまり、ちょっとした解錠プログラムを走らせれば、いつかは展開できることになります。

 一方セキュリティソフトはうまく展開することができず、ウイルスがすり抜けてしまう可能性も。この辺りのことに関して、IT系ニュースサイト、ITmedia エンタープライズの記事では「パスワードを付けずに添付して送信した方がむしろ安全かもしれません」とコメントしています。また、こういった記事へのコメント等を見ると、「メールが漏洩しているとすれば、パスワードを別メールにしたところで一緒に漏洩しているので意味はない」といった話もあります。

安全な代替手段はクラウドストレージ

 では今後、どういった方法に置き換えればいいのでしょうか。NRI SecureTechnologiesのブログによると以下の通りコメントされています。現状を変えたくないとすれば、「十分長くて複雑なパスワードをメール以外の経路で伝達する」ということが考えられるようです。あとはやはりクラウドサービスがもっとも現実的なようです。送りたい相手にURLリンクを送信し、受信したほうはここからクラウドサービスにアクセスする仕組みです。

 運営者のしっかりしたクラウドストレージを使えば、一般的に通信経路は一般的にSSL/TLSによって暗号化されます。またデータ暗号化という点に関しては、たとえばDropboxのサイトには「各ファイルは不連続のブロックに分割され、強力な暗号を使用して暗号化されます」との記載があります。仕事で使うためにはもう少し細かくアクセス数やダウンロード数の確認ができるクラウドストレージが望ましいようですが、一般的なクラウドストレージでも中にはある程度のセキュリティは確保されているものあるようです。

PPAPといえば……

 ちなみに、「PPAP」といえばピコ太郎を思い浮かべた人も多いはず。いかにも通信プロトコルのような音ですが、実は語源はほんとうにピコ太郎。「PPAP」と呼ぼうと提唱したのは、ITコンサルタントで、現在はPPAP総研代表の大泰司章(おおたいし あきら)さんです。

 大泰司さんは16年、ピコ太郎のPPAPの響きが「プロトコルっぽい」と言う人がいたことからヒントを得て、パスワード付きZIPメールの「セキュリティしぐさ」に、PPAPと命名しました。PPAPとは以下の頭文字とのことだそうです。

 P=PasswordつきZIPファイルを送る、P=Passwordを送る、A=暗号化された、P=プロトコル(技術仕様)。

<参考サイト>
・「ZIPで送ります。パスワードはあとで送ります」は、一体なぜダメなのか|ITmedia エンタープライズ
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/2011/24/news020.html
ピコ太郎? パスワード付きZIPメール、なぜ「PPAP」と呼ばれるの?|ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2011/24/news114.html
Dropbox にとってデータの安全性は何よりも大切です|Dropbox
https://www.dropbox.com/ja/security
第1回 HTTPS(HTTP over SSL/TLS)とは|@IT
https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1704/12/news035.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「虚実篇」から学ぶ優秀なリーダーの役割と戦略の重要性

「虚実篇」から学ぶ優秀なリーダーの役割と戦略の重要性

『孫子』を読む:虚実篇(1)いかに主導権を握るか

今回から開始となる『孫子』シリーズの第6編「虚実篇」。虚実とは空虚と充実であり、空虚とは手薄、充実とは手厚いことだと田口氏は説く。また、虚偽と真実という虚実もある。これらはいったい何を意味しているのか。虚実篇では...
収録日:2020/05/21
追加日:2022/01/03
田口佳史
東洋思想研究家
2

台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性

台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性

クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か

サヘル地域をはじめとして、近年、世界各地で多発しているクーデター。その背景や、クーデターとはそもそもどのような政治行為なのかを掘り下げることで国際政治を捉え直す本シリーズ。まず、未来の“if”として台湾でのクーデタ...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/04
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
3

中国の「国進民退」に危機感…これからの日中関係を読む

中国の「国進民退」に危機感…これからの日中関係を読む

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(5)日本外交の進むべき道

日本周辺での有事の可能性が叫ばれる中、日米関係を重視しながらも、隣国・中国とはどうやって関係を築いていくべきか。習近平政権以前の中国の在り方から振り返りながら、これからの中国との付き合い方を考える。また、シリア...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/10/03
小原雅博
東京大学名誉教授
4

経済発展から「国家の安全」へ…転換された国家戦略目標

経済発展から「国家の安全」へ…転換された国家戦略目標

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(2)国家戦略目標の転換

「習近平中国」における内政において、最も重要な特徴は国家戦略目標の転換だと垂氏は言う。鄧小平時代の経済発展から国家の安全へ舵が取られ、「富より安全」を社会秩序の根底とするのが習近平中国の方向性となる。国家安全委...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/10/02
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
5

なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは

なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは

経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす

人の成長にとって、弱点の克服よりも重要なのは強みを伸ばすことだ。ではいかにして自分の強みに気づいていけばいいのか。指導者はどのようにしてそれを気づかせ、支援していけばいいのか。ピーター・ドラッカーの話をはじめ、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/10/01
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授