テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.01.20

ビジネスシーンで読み間違えやすい漢字

 音読みと訓読みだけでなく、熟語として独自の読みを持つ場合もある漢字。いくつもの読みのパターンがあるために、漢字を読み間違えてしまう場合や、さらには勘違いして間違えたまま漢字の読みを覚えてしまっている場合も多々あります。

 そこで今回は、ビジネスシーンで読み間違えやすい漢字10選を取り上げてみました。あなたは全て読めるでしょうか?ぜひ振り返ってみてください。

ビジネスシーンで読み間違えやすい漢字・1~5選

 第1選「粗利益」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)そりえき
 2)あらりえき

 正解は2)あらりえき。「粗利益」は、売上額から生産原価を差し引いた額を示す、決算用語の一つで、「粗利(あらり)」「利幅(りはば)」ともいわれます。「粗」には、大ざっぱ、大まかといった意味があります。

 第2選「発足」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)ほっそく
 2)はっそく

 正解は1)ほっそく。「発足」には、出発、出立などとともに、組織や機構、団体や会議などが設けられて活動し始めるといった意味があります。

 第3選「相殺」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)そうさつ
 2)そうさい

 正解は2)そうさい。「相殺」は、互いに相手方に対して同種の債権を有する場合に、双方の債権を対当額だけ差し引いて消滅させることを、つまり、帳消しにすることを表します。「相殺」のおける「殺(さい)」は「減らす」を意味します。

 第4選「凡例」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)はんれい
 2)ぼんれい

 正解は1)はんれい。「凡例」とは、ある書物や著述に関して、その編述の目的・方針・書中の約束事や使用法などを、巻頭に述べたもののことです。

 第5選「代替」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)だいかえ
 2)だいたい

 正解は2)だいたい。「代替」は、他のもので代えること、それに見合う他のもので代えることを意味します。「だいかえ」は「だいたい」の重箱読みです。

 ※「重箱読み(じゅうばこよみ)」とは、漢字二字による語を、上の字を音、下の字を訓で読む読み方。⇔「湯桶読み(ゆとうよみ)」は、漢字二字による語の、上の字を訓で、下の字を音で読む読み方。

ビジネスシーンで読み間違えやすい漢字・6~10選

 第6選「一段落」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)ひとだんらく
 2)いちだんらく

 正解は2)いちだんらく。「一段落」は、文章などの一つの段落、物事が一応かたづくこと、ひとくぎりを意味します。話し言葉では使われることも多い「ひとらんだく」ですが、正式には誤りです。

 第7選「重複」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)ちょうふく
 2)じゅうふく

 正解は1)ちょうふく。「重複」は、同じ物事がいくたび重なること、重なり合うことを意味します。

 第8選「貼付」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)ちょうふ
 2)てんぷ

 正解は1)ちょうふ。「貼付」は字義通り、貼り付けることを表します。メールの添附ファイルなどで「てんぷ」読みは慣用読みです。

 第9選「言質」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)げんち
 2)げんしち

 正解は1)げんち。のちの証拠となる言葉やあとで証拠となる約束の言葉を意味する「言質」のうちの、「ち」は「質」の音の一つで、人質や抵当などの意に用います。「げんしつ」は誤読から生じた慣用読みです。

 第10選「早急」、読みは1)2)のどちらでしょう?
 1)さっきゅう
 2)そうきゅう

 正解1)さっきゅう。「早急」は、非常に急ぐことやきわめてさし迫っていること、急を要することを意味します。なお、「さっ」は「早」の慣用音です。

読み間違いは…間違いではない!?しかし…

 いかがでしょうか。ビジネスシーンで使われる漢字の振り返りはできたでしょうか。読み間違いや勘違いはなかったでしょうか。

 ただし、今回は二択で一方を正解としましたが、厳密にいえば言葉は変化していくもので、相手に伝わっていたりコミュニティ内で通用していたりすれば、絶対の間違いとはいえません。

 例えば、正解解説中に示された「慣用読み(かんようよみ)」は、「慣用音」(呉音、漢音、唐音のいずれでもなく、日本で広く一般的に使われている漢字音)を用いた読み方を指し、「消耗」の「耗(こう)」を「もう」、「情緒」の「緒(しょ)」を「ちょ」、「運輸」の「輸(しゅ)」を「ゆ」と読むなどが挙げられます。つまり、言葉の変化、漢字の日本語化の一例といえます。

 新語や流行語、音便化による変化など、時代や状況によって、漢字の読み方も変わっていきます。しかしながら、よりよい人間関係の構築において、正しく適切な言葉遣いは基本であり、またビジネスシーンにおいて、言葉の間違いや勘違いは、損害を出すおそれもあります。

 適宜自身の言葉遣いを省みつつ正しい知識を学びなおしたり増やしたりすることも肝要でありながら、さらに加速度的に変わり続けるビジネスシーンに応じて、社会の変化を敏感に感じつつ、他者の言葉遣いに対する理解力と寛容さを深めることも、ますます必要となってきています。

<参考文献>
『日本国語大辞典』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)
『新選漢和辞典 Web版』(小学館)
『デジタル大辞泉』(小学館)
『社会人の日本語』(山本晴男著、クロスメディア・パブリッシング)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ

きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ

大谷翔平の育て方・育ち方(5)栗山監督の言葉と二刀流への挑戦

高校を卒業した大谷翔平選手には、選手としての可能性を評価してくれた人、そのための方策を本気で考えてくれた人がいた。それは、ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウト小島圭市氏と、元日本ハムファイターズ監督で前WBC...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/31
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
2

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新

前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
與那覇潤
評論家
3

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す

国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29
養田功一郎
三井住友DSアセットマネジメント株式会社 執行役員
4

サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方

サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方

会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂

人生の中で、さまざまな決断を迫られる50代。特にサラリーマンはその先の生き方について考えさせられる時期だ。作家・江上剛氏も、大きな「50代の壁」にぶつかり、人生が大きく変わったと言う。1997年に起こった第一勧銀総会屋...
収録日:2021/08/31
追加日:2021/11/09
江上剛
作家
5

デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題

デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題

危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化

ショーヴィニズム(排外主義)、反エリート主義、反多元性を特徴とする政治勢力が台頭するなどポピュリズムと呼ばれる動きが活発化する中、「デモクラシーは大丈夫なのか」という危惧がかなり強まっている。アメリカのトランプ...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/03/28
齋藤純一
早稲田大学政治経済学術院政治経済学部教授