首をポキポキ鳴らすのは危険?そのリスクは
「コロナ太り」が気になる昨今、「宅トレ(おうちジム)」の人気が急増しています。でも、筋トレや有酸素運動で解消できないのがスマホやパソコンで酷使されている「首コリ」。ポキポキ鳴らすのは危険という説も聞くけれど、一体どうすればいいのでしょうか。
関節がポキポキ鳴るメカニズムは、今のところ完全には解明されておらず、20世紀初頭から科学者たちの議論の的になっているというから驚きです。現在、最も有力視されているのは「キャビテーション理論」。関節に一定のストレスがかかることで、関節腔を満たす滑液の圧力が変化し、気泡が弾けるというもので、スパークリングワインの栓を抜く行為と似た現象と理解できます。2018年にはスタンフォード大学の研究チームによる数理モデルも発表され、いよいよこの説に軍配が上がりそうです。
そのほかの仮説としては、「1. 靭帯が急速に伸長するから」「2. 関節内にできた癒着が剥がれるため」「3. 関節腔内の空気が弾けたり移動するため」などがあります。
首を鳴らしたくなるのは、2.で血流がよくなり疲労物質が流されるような気がするから。また、気泡が弾けたり移動したりさせることで「プチプチ(エアマット)」をつぶすのと同じ快感もあります。とはいえ、同じクラッキングでも「指ポキ」のほうは、主にケンカや腕ずもう前の威嚇に使われますから、首を鳴らしたからといって首コリ・肩コリ解消の役に立たないのは明らかだと思われます。
脳卒中については、首の矯正治療として、カイロプラクティック療法で行われていた「スラスト法」が疑問視されています。頸椎に急激な回転を加えることで「首ポキ治療」とも呼ばれるこの方法、2014年には米国心臓協会・米国脳卒中学会により「脳卒中を引き起こす可能性がある」と指摘されました。根拠となった論文などには、「45歳以下の脳卒中患者は1週間以内にスラスト法を受けていた割合が5倍以上」だったと報告されていました。
同年、日本では「免疫力を高める」と称して、まだ首のすわっていない乳児の首をひねったり後ろに反らせたりする「ズンズン運動」を施して死亡させたNPOの代表が逮捕された事例もあります。厚生労働省では「患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要がある」と通達を出しました。
2019年には、首の痛みを覚えて伸ばそうとしたら、ポキッという音がして、そのまま左半身が麻痺してしまった米国人男性のニュースが世界を騒がせたこともあります。
変形性頸椎症は、加齢により頸椎が変形するのに伴い、頸椎を通る脊髄やそこから分岐する神経を圧迫してダメージを与える病気。首ポキの繰り返しにより、骨と骨のクッション役を果たす椎間板に負荷がかかり、若くても椎間板の老化につながるといいます。
頸椎捻挫は、首に衝撃を受けたための軟部組織損傷です。就寝中に起こる軽症なものは「寝違え」、自動車の追突事故やラグビー、相撲など急激な接触によって起こる劇症のものは「むち打ち」と呼ばれます。めまいや吐き気、耳鳴り、手のしびれなどが生じると不安にもなるので、CTやMRIでくわしく調べてもらう必要があります。
最近注目されているのは、頭と首の付け根にある「後頭下筋群」です。パソコンやスマホの見過ぎだと自覚のある人、目の使い過ぎの人の場合、ほとんどは首と背中をつなぐ僧帽筋よりも、後頭部に原因があると考えられます。
後頭下筋群のコリをほぐすには、椅子に腰掛けたままできる簡単なストレッチを1日3セットほど行うのもいいですし、ホットタオルで温めるのも有効です。
ストレッチするときには、両耳をつなぐラインで指三本分くらい後ろの柔らかい箇所に両手の人差し指と中指を当て、小さく(45度を超えない範囲)イヤイヤを20往復ほどくりかえします。首の後ろがほぐれてきたら、目をつむって顎を上げ下げする「うなずき」運動を1回3秒ぐらいのゆっくりした動作で20往復。さらに顎を引く動作をやはり1回3秒ほどのペースで10回ほど行います。
余裕のある人はすべてを仰向けに寝て行うと、頭の重さによる負担がなく、さらに理想的。「イヤイヤ」は枕をせず平らな姿勢で、「うなずき」と「顎引き」は低めの枕を利用して行うのがオススメです。
首ポキよりも後頭下筋群。ここがほぐれると、目の調子もよくなります。
肩がこったときに首がポキポキ鳴る原因
首を鳴らす行為、日本では「首ポキ」と略されていますが、欧米では「クラッキング」と呼び、首だけでなく指、顎、手首・足首、膝や肘など、いろいろな部位の関節を鳴らすことを指します。関節がポキポキ鳴るメカニズムは、今のところ完全には解明されておらず、20世紀初頭から科学者たちの議論の的になっているというから驚きです。現在、最も有力視されているのは「キャビテーション理論」。関節に一定のストレスがかかることで、関節腔を満たす滑液の圧力が変化し、気泡が弾けるというもので、スパークリングワインの栓を抜く行為と似た現象と理解できます。2018年にはスタンフォード大学の研究チームによる数理モデルも発表され、いよいよこの説に軍配が上がりそうです。
そのほかの仮説としては、「1. 靭帯が急速に伸長するから」「2. 関節内にできた癒着が剥がれるため」「3. 関節腔内の空気が弾けたり移動するため」などがあります。
首を鳴らしたくなるのは、2.で血流がよくなり疲労物質が流されるような気がするから。また、気泡が弾けたり移動したりさせることで「プチプチ(エアマット)」をつぶすのと同じ快感もあります。とはいえ、同じクラッキングでも「指ポキ」のほうは、主にケンカや腕ずもう前の威嚇に使われますから、首を鳴らしたからといって首コリ・肩コリ解消の役に立たないのは明らかだと思われます。
「首ポキ」のリスクと、その実例
自分で行う「首ポキ」が危ないのは常習性があるためで、一度や二度では問題がないと言われていますが、リスクとして報告されているのは、「脳卒中」「変形性頸椎症」「頸椎捻挫」などです。脳卒中については、首の矯正治療として、カイロプラクティック療法で行われていた「スラスト法」が疑問視されています。頸椎に急激な回転を加えることで「首ポキ治療」とも呼ばれるこの方法、2014年には米国心臓協会・米国脳卒中学会により「脳卒中を引き起こす可能性がある」と指摘されました。根拠となった論文などには、「45歳以下の脳卒中患者は1週間以内にスラスト法を受けていた割合が5倍以上」だったと報告されていました。
同年、日本では「免疫力を高める」と称して、まだ首のすわっていない乳児の首をひねったり後ろに反らせたりする「ズンズン運動」を施して死亡させたNPOの代表が逮捕された事例もあります。厚生労働省では「患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要がある」と通達を出しました。
2019年には、首の痛みを覚えて伸ばそうとしたら、ポキッという音がして、そのまま左半身が麻痺してしまった米国人男性のニュースが世界を騒がせたこともあります。
変形性頸椎症は、加齢により頸椎が変形するのに伴い、頸椎を通る脊髄やそこから分岐する神経を圧迫してダメージを与える病気。首ポキの繰り返しにより、骨と骨のクッション役を果たす椎間板に負荷がかかり、若くても椎間板の老化につながるといいます。
頸椎捻挫は、首に衝撃を受けたための軟部組織損傷です。就寝中に起こる軽症なものは「寝違え」、自動車の追突事故やラグビー、相撲など急激な接触によって起こる劇症のものは「むち打ち」と呼ばれます。めまいや吐き気、耳鳴り、手のしびれなどが生じると不安にもなるので、CTやMRIでくわしく調べてもらう必要があります。
首がこったら、どうすればいいのか
首が鳴ると一瞬、肩や首が楽になったと感じることもありますが、決して首コリ・肩コリ解消の役には立っていない、と治療家たちは口をそろえています。では、どうすればいいのでしょうか。最近注目されているのは、頭と首の付け根にある「後頭下筋群」です。パソコンやスマホの見過ぎだと自覚のある人、目の使い過ぎの人の場合、ほとんどは首と背中をつなぐ僧帽筋よりも、後頭部に原因があると考えられます。
後頭下筋群のコリをほぐすには、椅子に腰掛けたままできる簡単なストレッチを1日3セットほど行うのもいいですし、ホットタオルで温めるのも有効です。
ストレッチするときには、両耳をつなぐラインで指三本分くらい後ろの柔らかい箇所に両手の人差し指と中指を当て、小さく(45度を超えない範囲)イヤイヤを20往復ほどくりかえします。首の後ろがほぐれてきたら、目をつむって顎を上げ下げする「うなずき」運動を1回3秒ぐらいのゆっくりした動作で20往復。さらに顎を引く動作をやはり1回3秒ほどのペースで10回ほど行います。
余裕のある人はすべてを仰向けに寝て行うと、頭の重さによる負担がなく、さらに理想的。「イヤイヤ」は枕をせず平らな姿勢で、「うなずき」と「顎引き」は低めの枕を利用して行うのがオススメです。
首ポキよりも後頭下筋群。ここがほぐれると、目の調子もよくなります。
<参考サイト>
・ニューズウィーク日本版2018年4月4日:「いまだにナゾだった関節がポキっと鳴るメカニズム、ついに解明に近づく」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-9884_1.php
・CNNニュース2019年5月3日:「『首ポキ』で脳卒中、左半身まひで入院 米男性」
https://www.cnn.co.jp/usa/35136503.html
・NHKガッテン!2019年2月13日放送「“新原因”発見! 衝撃の肩・首のこり改善SP」
https://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20190213/index.html
・ニューズウィーク日本版2018年4月4日:「いまだにナゾだった関節がポキっと鳴るメカニズム、ついに解明に近づく」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-9884_1.php
・CNNニュース2019年5月3日:「『首ポキ』で脳卒中、左半身まひで入院 米男性」
https://www.cnn.co.jp/usa/35136503.html
・NHKガッテン!2019年2月13日放送「“新原因”発見! 衝撃の肩・首のこり改善SP」
https://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20190213/index.html