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DATE/ 2021.05.23

「モンスター社員」とは?特徴や対処法

「モンスター社員」とはこんな人

 学校に自己中心的な要求を突きつける「モンスターペアレンツ」や、企業の問い合わせ窓口に理不尽な文句を言う「モンスタークレーマー」など、この世には多くのモンスター、つまり化け物のように恐ろしくて理解しがたい“危険人物”があふれています。

 みなさんのすぐ近くにも、「モンスター社員」と呼ばれる危険人物がいるかもしれません。モンスター社員に厳密な定義はありませんが、「企業や職場にマイナスの影響を与えるような問題行動を起こす社員」を指すことが多いです。「この人といっしょだと仕事がやりづらい」と感じる職場仲間がいたら、モンスター社員かもしれませんよ。

 具体的には次のようなタイプがモンスター社員と見なされます。

 ズバリ、仕事ができない:ミスが多い、作業が遅い、手際が悪いなどさまざまな理由で仕事のノルマや目標を達成できないタイプです。このような人がいると、本人に悪気がなくてもきちんと仕事をこなしている人がいらだったりモチベーションを失ってしまったりします。

 協調性がない・自己中心的:自分のやりたいことや自分のペースにこだわって、周囲と足並みをそろえないタイプです。仕事ができる人も多いタイプですが、勝手に進めてしまったり逆にいつまでも協力してくれなかったりするので、周囲の人は疲れてしまいます。

 やる気がない・仕事をなめている:遅刻や無断欠勤を繰り返し、出社しても真面目に仕事しようとしないタイプです。しかたなく周囲の仲間が代わりに業務を進めるので本人はますます仕事をしなくなり、まわりは負担が増えて不満を持つようになります。

 シンプルに素行が悪い:お金や異性関係にだらしないタイプです。基本的に個人のプライベートは仕事に関係ありませんが、このタイプの人はモラルに欠けるところがあるため、職場で不倫をしたりハラスメント行為をしたりして人間関係を壊してしまうことがあります。

モンスターになってしまう心理

 モンスター社員は、なぜこのような迷惑行為をするのでしょうか。その心理を探ってみましょう。

 承認欲求が強い:他人に認められたい、褒められたい、ちやほやされたいというような欲求が強く、称賛をやたらと求めます。しかし評価はあくまで他人が下すものなので、本人が完全に満足する承認を得られることはほとんどありません。このため、事実を大げさにした自慢話をしたり、手柄を一人占めしようとして勝手に仕事を進めたりして周囲を疲れさせてしまいます。

 情緒不安定・繊細すぎる:普段は明るく社交的でも、小さなきっかけによってメンタルが大きく揺さぶられてしまいます。被害者意識が強く、業務上必要な注意や叱責を受けただけでも「ひどい」「傷ついた」などと感じて心がマイナスに傾きがち。情緒が乱れるとところかまわず泣いたりキレたり、ふてくされて仕事をまったくしなくなったりして職場を混乱させます。

 自信がない・劣等感が強い:学歴や容姿などに強い劣等感があり、自信が持てなかったり自己評価が非常に低かったりします。このような心理を持つ人は、「どうせ自分なんて」と自分を責める自虐的な発言を繰り返して職場の雰囲気を悪くします。逆に自分の劣等感を刺激する優れた人に対して攻撃的になり、執拗にハラスメント行為を繰り返すこともあります。

 モンスター社員を表面的に見ていると理解しがたいことが多いですが、そのような言動に出てしまう背景には歪んだ心理がはたらいているのです。

うまく対応して被害を避けよう

 モンスター社員がいる職場には、多くの不利益が生じます。しかしいきなり異動や解雇を命じると、企業側の権利濫用とみなされて法的な責任を問われることにもなりかねません。まずは冷静になって、次のような対応をしましょう。

 ヒアリング:モンスター社員にも、問題行動をする理由や考えがあります。その言い分を最初から最後まで傾聴しましょう。大切なのは黙って聞くことです。不満や不安があるモンスター社員は、自分の話を否定せずにしっかり聞いてもらえるだけでも信頼感を強めるものです。また、話すうちに自分の中の認識が整理され、自分の言動の問題点を自覚することもあります。

 配置や仕事内容を変える:モンスター社員のなかには、優れた能力があるのに現状の職場で生かせていない人もいます。これでは不満がたまってもしかたありませんよね。そこで、モンスター社員が活躍できる部署に配置し直したり、得意な仕事を与えたりすると問題行動がおさまることがあります。ただし、無理やり変更すると権利濫用になるのできちんと話しあいましょう。

 退職勧奨:ヒアリングや配置転換などで問題行動がおさまらない場合は、退職勧奨を行いましょう。これはモンスター社員本人が自主的に退職するよう勧める方法。企業からの一方的な解雇ではなく、企業と社員の合意による退職を目的とします。あまりしつこく退職を勧めると強要や脅迫とみなされることもあるので、社員の要求に耳を傾けながら穏便な解決を目指してください。

 モンスター社員は厄介な存在ですが、対応を誤ったときにも厄介な状況を引き起こします。極力穏便に接して、「訴訟を起こす」などと強気に出てきたときには、法律の専門家に相談して毅然と対処することも視野に入れておきましょう。

<参考サイト>
モンスター社員に悩む企業の担当者へ!知っておくべき正しい対応方法│ベリーベスト法律事務所
https://corporate.vbest.jp/columns/2665/
「自分はこんな所で働く人間じゃない」 “モンスター社員”に共通する“哀しい生態”とは│文春オンライン 
https://bunshun.jp/articles/amp/43799

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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授