社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.06.05

交通事故が起きやすい時間帯とは

 信号無視やひき逃げなど、交通事故による悲しいニュースは後を絶ちません。実は自動車も歩行者も特に気をつけなければならない、事故が発生しやすい時間帯というのがあります。なぜ事故が起きやすくなるのか、そしてどんな事故防止策があるのかを、警察庁が発表している統計に基づき考察します。

もっとも死亡事故が多いのは17~19時の「薄暮時間帯」

 一日の中で交通事故が起きやすい時間帯は「朝」そして「夕方から夜にかけて」とされています。中でももっとも死亡事故が起きやすいのが「夕方から夜にかけて」の時間帯です。警察庁では「薄暮(はくぼ)時間帯」と呼んでおり、日没前後1時間、17~19時台を指します。

 警察庁が発表したデータによれば、平成28年から令和2年の5年間に起きた死亡事故の 16,786件中、日没時刻と重なる17時台から19時台に起きた死亡事故件数は3,210件と全体の19%を占めており、最も死亡事故が多いのは17時台の1,155件となっていました。

 特にこの時間帯で多いのが「自動車と歩行者」の衝突事故で、「歩行者の横断中」が9割を占めるということです。この「自動車と歩行者」の事故件数は昼間の時間帯の約4倍となっています。

なぜ「薄暮時間帯」で事故が起きやすい?

 太陽が沈みだんだんと暗くなり始めるころは、人の目がまだ暗さに慣れておらず、視界が悪くなりやすい状態です。そのため、ドライバー、歩行者ともに相手の発見が遅れたり、距離や速度が判定しづらくなったりする状況に陥り、事故につながりやすくなると考えられています。

運転者・歩行者がともに気をつけるべきこと

 夕暮れ時や夜間は、歩行者よりもドライバーのほうが相手に気づきづらい傾向があります。

 そのため、ドライバーは以下のことが求められます。
・薄暗くなる前(日没30分前)にライトを点灯する
・ハイビームを有効活用する
・昼間よりも速度を落とす
・ダイヤマーク(横断歩道前)やカーブでの減速を徹底

 また、減速すると右側(車道側、対向車の陰)から渡ろうとする歩行者もいますので、そのような歩行者にも注意が必要です。

 そして歩行者は、ドライバーにいち早く気づいてもらうため、以下の方法が有効です。

・反射材やライトを活用した安全グッズ(手首バンドやキーホルダー、靴など)を身につける
・夕暮れ時から夜間は明るい服を身につける

 そして道を渡るときは右側だけでなく、左側から来る車にも十分注意しましょう。ただ、これらのことを行う何よりも前に「交通ルールと交通マナーを守ること」が大切です。

 さきほど、主な死亡事故が「歩行者の横断中」が9割を占めたという話をしましたが、歩行者の横断中に起きた事故917件のうち、横断歩道付近、または横断歩道“以外”で発生した事故が704件となっており、横断歩道以外を横断中に起きた事故が8割以上を占めます。しかもそのうち、歩行者側の法令違反とみなされたのは約7割の489件でした。

 以上のように、ほとんどの死亡事故は、歩行者側の法令違反により発生しているということになります。逆に言えば、歩行者側がきちんと法令を遵守すれば、たいていの事故は防げるのです。

 とはいえ、どんなに気をつけていても不慮の事故は発生してしまうもの。ドライバーは歩行者心理をよく理解したうえで、より一層気を引き締めてハンドルを握りましょう。

 あなた自身、そしてあなたの大切な人を守るためにも、もう一度自分の交通意識を振り返ってみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・薄暮時間帯における交通事故防止│警察庁HP
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/hakubo.html
・トピックス 薄暮時間帯の交通事故防止について│内閣府
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r01kou_haku/zenbun/genkyo/topics/topic_06.html
・夕暮れ時に歩行者が死亡する交通事故が多発!この時間帯の交通事故を防ぐには?│政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201711/1.html

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
2

『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価

『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価

歴史の探り方、活かし方(5)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈下〉

豊臣秀次事件に対する見方を変えた『武功夜話』だが、実は偽書疑惑もある。今回は、そのことに鋭く迫っていく。『武功夜話』は、豊臣秀吉に仕えて大名まで上り詰めた前野長康の功績を中心に記された史料だが、その発表・出版の...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/28
3

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
4

歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方

歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方

編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる

この人生を生きていくうえで、「歴史」をひもとくと貴重なヒントにいくつも出会えます。では、実際にはどのように歴史をひもといていけばいいのか。

今回の編集部ラジオでは、歴史作家の中村彰彦先生がご自身の方法論...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/27
5

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授