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DATE/ 2021.07.13

孤独なことは悪いことなのか?

 誰かと眠ったとしても一緒の夢を見ることはできないように、敷衍して「自分というのは、眠っていようが起きていようが、完全に独りなのである」と哲学者の池田晶子が説くように、突き詰めれば人間は誰しも一人です。

 自己に目覚め主観を獲得した人間、つまり自己や主体がある人間は、真の客観にはなれません。

 しかし、「人間は社会的な動物」でもあるため、社会性や客観性がないと周りの人は困ります。

 “一般的な孤独=悪というイメージ”は孤独そのものよりも、“独りよがりで社会性も客観性もない人=負のイメージ”からきているのではないでしょうか。

孤独“になるため”の準備

 孤独の負のイメージが見えてきましたが、社会で生きるためには相対的な自己が必要なことと同じかそれ以上に、人生にとっての絶対的な自己の価値を知ることは、どんな人にとっても有益です。

 つまり、自分の人生にとっての絶対価値に気づくためには、孤独が必要なことがわかります。

 しかし、喧噪の中や他者に承認を求める心持ちでは、なかなか孤独にはなれません。

 さらに逆説的ではありますが良質な孤独を担保するためには、(1)社会性を持ち他者とのいたずらな対立を防ぐこと、(2)客観性を育み活用することで自己の社会的価値を高めること、(3)一人の時間を意識的に確保すること、――が必要となってきます。

 以上は、孤独“になるため”の準備です。

孤独“であるため”の条件

 では、孤独“であるため”の条件はあるのでしょうか。

 明治大学文学部教授で教育学博士・臨床心理士の諸富祥彦氏は、孤独の価値に注目し、【孤独であるための八つの条件】を挙げています。

【孤独であるための八つの条件】
1)「わかり合えない人とは、わかり合えないままでいい」と認める勇気を持て。
2)人間関係についての「歪んだ思い込みやこだわり」に気づけ。
3)自分の人生で「ほんとうに大切な何か」を見つけよ。
4)「自分はまもなく死ぬ」という厳然たる事実を見つめよ。
5)「たった一つの人生という作品」をどうつくるか、絶えず構想しながら生きよ。
6)ソーシャルスキルを身につけよ。他人の話を聴き、他人を認めよ。
7)「この人だけは、私を見捨てない。どこかで見守ってくれている」。そう思える人を見つけよ。
8)自分だけは自分の味方であれ。「自分を見守るまなざし」を自分の中に育め。

孤独の真価・孤独のメリット

 孤独“になるため”の準備を経て、孤独“であるため”の条件を自分で体験することによって、孤独の中で自己と対話し、自己を傾聴し、自己を見つめ直すことができます。

 そのとき、あるときは内界から沸き起こる自分だけの楽しみや喜びを感じ、あるときは外界から去来する自身の役割を感じ取り、そして絶対的な自己の価値を知る――。それこそが、孤独の真価といえるのではないでしょうか。

 加えて、孤独“になるため”、孤独“であるため”には、前段階として一人の時間を建設的に構築する必要があります。その際に、内省の習慣や創造的な思考の訓練をすることもでき、結果として相対的な自己の価値を高めることにつながる――。こちらは、副次的ではあるものの、重要な孤独のメリットといえるように思います。

 孤独は、良し悪しも善悪も超えた自己の核ともいえます。ぜひ極上の孤独を、何よりも大切な自分に与えてあげてください。それができるのは、自身だけです。

<参考文献・参考サイト>
・『41歳からの哲学』(池田晶子著、新潮社)
・『孤独であるためのレッスン』(諸富祥彦著、NHKブックス)
・『知的生活』(P.G.ハマトン著、渡部昇一・下谷和幸訳、講談社学術文庫)
・人間はチンパンジーよりもアリに似ている。巨大な群れ(社会)をつくる生き物は自然界に社会性昆虫とヒトしかいない【橘玲の日々刻々】
https://diamond.jp/articles/-/256033
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