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DATE/ 2021.08.13

日本に馴染みのある「外資系企業」とは

 外資系企業と聞くとどんなイメージでしょうか。海外出張が多いセレブ、エリートでお金持ち、成果主義でしのぎを削る場所などなど、少し私たちの日常から離れたところにある企業という感じもします。だからこそ憧れるような響きでもあります。しかし、身近な企業も実は外資系企業だったりします。

西友(アメリカ)

 スーパーマーケットは私たちの日常にかなり近いところにあります。いわばドメスティックな場所の代表のように捉えられますが、実は「西友」は外資系企業。1963年創業の「西友」は旧西武グループの一員でしたが、2003年にアメリカのウォルマートの子会社となります。しかし、経営はあまりうまくいかなかったようです。2020年末にウォルマートは所有していた株式のうち85%を売却することになりました。20%は楽天に、65%はアメリカ・ニューヨークの投資ファンドKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が持ちます。経営はウォルマートからこの投資ファンドに変わりますが、外資系であることは変わりません。

すかいらーく(アメリカ)

 ガスト、バーミヤン、ジョナサンといったファミレスを運営しているすかいらーくグループは1970年、東京都府中市にファミリーレストランすかいらーく1号店(国立店)を出店したところからファミレス事業をスタートさせます。その後2003年には全国で1,000店目のガストをオープンさせています。2021年6月末時点ではガスト1,333店、バーミヤン340店、しゃぶ葉274店などなど合わせて3,104店を経営しています。2011年、株主だった野村プリンシパルファイナンスが、アメリカの投資ファンド・ベインキャピタルに売却し、外資系企業となっています。

シャープ(台湾)

 世界でも有数の液晶モニタ開発技術を有する企業シャープが、台湾の鴻海(ホンハイグループ)に売却されたのは2016年のこと。記憶に新しいのではないでしょうか。ちなみに鴻海(ホンハイグループ)は電子機器受託製造の業界で世界1位です。シャープはその後、急激に業績を回復し、2018年には不正会計事件で大混乱した東芝のPC事業を買収しています。東芝と言えば、1989年、世界ではじめてのノートPC「Dynabook」を発売した会社です。このあたり、容赦ない時代の荒波を感じるところでもあります。

「身近な会社が外資系になる」ことの意味

 日本経済は1980年代後半のバブル後、1990年代の失われた時間を経て、現在では緩やかに推移しているように思えます。この間に中国や台湾といったアジアの企業が急成長を遂げた一方で、アメリカはITの中心地としての地位を確立します。日本の企業は優秀な技術力を有してさまざまな技術や製品を開発し、一時代を築きました。また、西友やすかいらーくは、私たちの生活が豊かになるとともに成長した企業の代表と言えるでしょう。日本は戦後右肩上がりで急成長したのち、1989年にバブルが崩壊します。こういった激しい浮き沈みを経験しながら国産企業は奮闘してきました。しかしもしかしたら、日本はもうすでに新たな局面に入っているのかもしれません。「身近な企業が外資系になる」という事実の裏には、こういった国境を超えた時代や経済の大きなうねりがあるのかもしれません。

<参考サイト>
ウォルマートの「西友切り」は遅すぎた? それなのに今、楽天が西友とタッグを組むワケ|
ITmediaビジネスオンライン
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2012/24/news024.html
スーパー「西友」を子会社化するKKRってどんな会社|M&A Online
https://maonline.jp/articles/kkr_rakuten_seiyu20201118
グループ店舗数|すかいらーくグループ
https://www.skylark.co.jp/company/group_number.html
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