社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.10.18

日本と世界の「教育」の違いとは

こんなに違う日本と世界の義務教育期間

 現在はコロナ禍で難しくなってしまいましたが、海外旅行を楽しんだり海外留学で学んだりした経験をお持ちの方は多いでしょう。実際に外国へ行けなくても、インターネットで調べたりコンタクトを取ったりすることが可能です。もはや外国は身近な存在であり、友人やビジネスパートナーとして協力しあうことが当然になっていますよね。

 外国人との信頼関係を築くには、相手の文化を深く知ることが大切です。外国には日本と全く異なる食文化や生活習慣がたくさんあります。そしてそれは、教育に関しても同じこと。日本の義務教育は6歳から15歳の計9年間となっていますが、外国では次のような違いがあります。

・フランス:6歳から16歳の10年間。日本と似た期間です。
・イギリス:5歳から16歳の11年間。こちらもやや日本に似た期間です。
・フィンランド:7歳から16歳の9年間。年数は日本と同じですが、開始時期が遅めです。
・オランダ:5歳から18歳の13年間。4歳から基礎教育を受ける人も多いです。

 アメリカやドイツのように、州ごとの裁量で決められている国もあります。また、中国や韓国のように日本と同じ期間の国もあります。義務教育の期間だけを見てみても、国ごとに多種多様なのです。

教育の進め方もこんなに違う

 さらに、授業やテストの形式も日本と異なる国が多いです。日本では、クラス分けされた教室で学生全員が同じレベルの授業を同時に受ける形式になっていますよね。また、高校・大学は入学試験を受けて合格すると入学できる仕組みになっています。外国ではどのような教育を行っているのでしょうか。代表的な国の特徴を見てみましょう。

・オランダ:子どもの個性を尊重する教育法・イエナプランを導入しています。時間割はなく、いつなにを勉強するかは学生自身が決めて、学習の進行は学生の理解度に合わせます。クラス分けもなく、年齢の違う生徒たちがいっしょに勉強して教えあいながらコミュニケーション能力を育てていきます。

・フィンランド:学費は大学院まで公費負担。教科書代や文房具代も公費で出ます。授業で特徴的な点は、順位や点数で他人と比較するためのテストがないこと。結果として学生間での競争が起こりにくくなっており、学生たちは「自分のための勉強」という意識を持って学習します。

・イギリス:複数の地域や島からなっているイギリスは、イングランド・ウェールズ・北アイルランド・スコットランドでそれぞれの教育形式を行っています。義務教育が定められていますが、学校に通うことは義務ではないため、自宅で学習する生徒もいます。

 制度の差はありますが、フィンランドのように無償で教育が受けられる国はドイツ、フランス、スウェーデンなどたくさんあります。日本では貧困家庭の子どもが進学できなかったり、奨学金を返済できなかったりすることが社会問題になっています。外国のような教育無償制度の充実を期待したいですね。

各国の特色が出る教育方針

 日本と諸外国では義務教育期間や教育制度にさまざまな違いがあることがわかりましたが、これは教育方針の違いによって生まれたものといえます。教育には「国が求める人材の育成」という側面があり、教育方針からそれぞれの国のお国柄がわかるのです。

・フランス:飛び級制度が最も一般的に認識されている国といわれます。大学入学にも年齢制限はありません。より高度なことを学びたい生徒にはどんどん機会を与えます。個人の権利を尊重するフランスらしさが感じられるといえるでしょう。

・アメリカ:州ごとの自治の権限が大きく、義務教育の開始年齢などが同じアメリカ国内でも異なります。初等中等教育は12年間とされていますが、その区切りは6・6年生だったり5・3・4年生だったりとさまざま。大学入学の年齢制限もなく、自由を大切にするお国柄が出ています。

・ドイツ:義務教育修了後は、大学進学者向けの高等学校のほかに職業訓練校や専門学校も用意されています。就職後に見習いとして職業訓練校に入学した生徒は、3年間の通学を義務づけられます。職人育成に力を入れるドイツならではの教育制度です。

 日本は伝統的に協調性を大切にするため、学校でも生徒全員が同じペースで同じことを学びます。もちろんこの教育方針にも長所がありますが、ペースに追いつけない“落ちこぼれ”が発生してしまうなどの問題点もあります。日本の教育界は世界にも目を向けて、このような短所をなくしていってほしいですね。

<参考サイト>
日本と海外での教育の違いとは?世界の教育制度や特徴を徹底比較!│にほんご日和 
https://haa.athuman.com/media/japanese/world/2891/?doing_wp_cron=1633896662.3474369049072265625000
海外の学校と日本の学校の違いは?世界の教育制度まとめ│Education Career
https://education-career.jp/magazine/data-report/2020/world-edu/
世界の教育の制度を比較し日本の教育について考えよう│gooddoマガジン
https://gooddo.jp/magazine/education/4082/
イエナプラン教育とは?オランダで発展!コエテコおすすめスクールも│コエテコ
https://coeteco.jp/articles/10535

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
3

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
4

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本

「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
5

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12