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DATE/ 2021.12.03

「エリア51」はなぜUFOの聖地になったのか

謎多き「エリア51」とは何か?

 アメリカ合衆国西部のネバダ州といえば、合法カジノで栄える娯楽都市・ラスベガスのきらびやかなイメージをまっさきに思い浮かべる方も多いでしょう。しかし実際には、州内のほとんどの地域に砂漠が広がっており、昼は暑くて夜は寒いうえに乾燥も厳しいため、人が快適に活動できるところはあまり多くありません。この点に着目して設置されたのが、「エリア51」と呼ばれる施設です。

 人がほとんど寄りつかない、広大な土地に位置するエリア51。アメリカ政府は長年にわたってその存在を認めてきませんでしたが、2013年にアメリカ中央情報局(CIA)が存在を認める文書を発表。その内容によると、エリア51は軍事関連の研究開発と試験を行うための基地とされています。

 第二次世界大戦後にソビエト連邦(現在のロシア)と冷戦状態になったアメリカは、ソ連の動きをこっそり偵察できるよう、極秘でスパイ用偵察機の開発を決めました。そのテスト飛行を行うとき、ネバダ州の砂漠の中なら誰にも知られないだろうというわけで、基地の建設地に選ばれたのです。

 エリア51という名前の由来ははっきりしていません。一説では、近隣のネバダ核実験場にエリア52と呼ばれる核実験エリアがあったことから、核実験のナンバリングに関係しているのではないかといわれています。偵察機開発のリーダーだったケリー・ジョンソンは、親しみやすさを与えるために「天国のような牧場」を意味する「パラダイス・ランチ」と呼びましたが、部下たちにはウケが悪かったようで、定着しなかったそうです。

軍事施設がミステリースポットになったわけ

 エリア51は現在もしっかり稼働しており、グーグルアースを参考にすると、建物の増築が行われている様子も見て取れます。しかし、その内部でどんな研究が行われているのかは公開されていません。軍事の研究家やジャーナリストは「新種のステルス戦闘機の開発」や「新たな通信技術、レーザー技術の研究」などの可能性を指摘していますが、あくまで憶測の域を出ないのです。

 存在が認められた現在でもこのように謎多き施設なのですから、極秘とされていた当時に「このあたりは何かがおかしい」と思われてもしかたのない話ですよね。実際のところ、偵察機のテスト飛行が開始された1955年から、エリア51周辺では“未確認飛行物体”つまりUFOを目撃したという人が急激に増えたのです。

 目撃者の大半は、航空機のパイロットでした。当時の航空機は、現在の航空機の半分くらいである2万フィート(1フィートは約0.3メートル)ほどの高さまでしか飛べませんでした。その一方、エリア51で開発された偵察機は6万フィートほどの高さまで飛べたのです。パイロットにしてみれば、見たこともない高度で高速移動する偵察機は、UFOとしか思えなかったでしょう。

 こうして「未確認飛行物体が多発するネバダの砂漠地帯」は、アメリカでも有数のミステリースポットになりました。最初に開発された偵察機のテスト飛行は1950年代のうちに終了しましたが、その後も新たな軍用機のテスト飛行が続けられたため、エリア51周辺でのUFO目撃談はずっと絶えなかったのです。

現在も語られているエリア51の都市伝説

 不思議なものを見てしまったら、さらなるミステリアスな想像を止められなくなるのが人というものですよね。エリア51も例外ではなく、UFOが飛んでいるなら宇宙人も近くにいるはず……と多くの人が考えるようになりました。そして、エリア51の内部にはUFOや宇宙人が保管されているという都市伝説が今なお語られているのです。

 1947年、アメリカのロズウェル陸軍飛行場(現在のウォーカー空軍基地)が「墜落したUFOを回収した」と発表したのちに、「観測用気球だった」と訂正したことがありました。これを聞いたアメリカの人々は、アメリカ軍がUFOや宇宙人を回収して“ネバダの砂漠”に保管していると噂するようになったのです。エリア51でUFOや宇宙人の研究が行われているという都市伝説は、UFOやオカルトのマニアの間では現在も根強い人気を保っています。

 このほかにも、「ロズウェル陸軍飛行場が回収したのは宇宙人ではなく、ソ連が遺伝子操作で作成した小人のパイロットだった」とか、「1969年にアポロ11号が果たしたとされる月面着陸の写真は、エリア51で撮影されたもの」などの想像力豊かな都市伝説が語られています。

 エリア51近隣では、このような都市伝説を生かしてUFOや宇宙人のイメージで観光客にアピールしており、「地球外生命体ハイウェイ」と名づけられた道路も通っています。しかし、エリア51が極秘の研究を扱う軍事基地であることは変わりません。周辺には監視カメラはもちろん、トラックや軍用機を配置して厳重な警備態勢を敷いています。また、自然環境が厳しい砂漠地帯でもあります。エリア51を観光で訪れるなら、立入禁止区域には近寄らないように注意して、装備も万端にして臨みましょう。

<参考サイト・参考文献>
・カラパイア そうだ!エリア51に行こう!今尚人々の興味をそそる「エリア51」に関する歴史と陰謀説と観光案内
https://karapaia.com/archives/52231245.html
・乗りものニュース UFO聖地 エリア51の裏門へ突撃! 謎の黒い郵便受けに例のトラック…噂は本当だった!
https://trafficnews.jp/post/84565
・ギズモードジャパン 「エリア51」名称の由来とは
https://www.gizmodo.jp/amp/2015/01/51_5.html
・『U-2秘史――ドリームランドの住人たち』浜田一穂 パンダ・パブリッシング 2019年

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一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事