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DATE/ 2021.12.19

書類送検と逮捕の違い、前科はつくのか?

 犯罪に絡むニュースでは「誰々が〇〇の疑いで書類送検されました」といった言葉を目にします。ここでの「書類送検」とはどのような意味なのでしょうか。また「逮捕」とはなにが違うのでしょうか。

「書類送検」とは警察が検察に書類を「送致」すること

 「書類送検」とは、警察が「事件記録や捜査資料を検察官に送る手続き」のことをいいます。日本の法律では、犯罪の疑いがある場合にはまず警察が取り調べを行います。そこで事件に関するさまざまな書類や資料などが作成されます。こうした書類や資料が検察官に「送致」され、検察官が起訴するか不起訴とするか(裁判の開廷を提起すべきかどうか)を決めます。こうして起訴された場合には裁判が行われ、その上で有罪か無罪か、また有罪である場合はその罪の軽重が確定します。こうして裁判で有罪が確定すると「前科」となります。ちなみに「書類送検」とは罪に問われるかどうかを検察が判断するための大事な手続きなのですが、法律の専門用語ではありません。

逮捕でも書類送検(送致)は行われる

 「書類送検」と並んでよく聞く言葉に「逮捕」があります。「書類送検」と「逮捕」はどう異なるのでしょうか。逮捕とは、犯罪の被疑者を警察署内に留置することをいいます。ニュースなどで「身柄が拘束されました」といった場合は逮捕が行われています。また逮捕は「逃亡のおそれがある場合」と「証拠隠滅」のおそれがある場合の2つの場合に限定されています。例えば薬物犯罪などの場合は、放っておくと薬物を処分されてしまう、つまり証拠隠滅のリスクが高い事案なので、逮捕される可能性が高いということのようです。

 逮捕と聞くと書類送検よりも罪が重いように感じますが、逮捕されても逮捕されなくても罪の重さ自体には関係がありません。問題は逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかという点のみです。逮捕された場合も、「書類送検(送致)するかどうか」は警察が判断し、またその後「起訴するかどうか」は検察が判断します。ただし一般的に報道などでは、身柄を拘束する事件(身柄事件)の場合「逮捕された」事実がまず報道されます。一方、身柄を拘束する必要のない事件(在宅事件)の場合、書類送検された段階で報道されることが多いようです。

逮捕には制約がある

 また、逮捕は人の自由を奪う行為であることから、さまざまなルールがあります。警察は基本的に「現行犯逮捕」もしくは、「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」を犯したと疑うに足りる充分な理由がある場合に行われる「緊急逮捕」の場合を除いては、裁判官の発行する逮捕状がなければ逮捕することはできません。また警察は、被疑者拘束から48時間以内に書類や証拠物などとともに検察官に送致する必要があります。こののち検察で起訴するかどうか、もしくは勾留請求するかどうかといった判断がなされます。この判断は3日間(72時間)以内に行う必要があります。「勾留」とは、逮捕後「逃亡や証拠隠滅を防ぐために、検察官からの請求で被疑者を警察の留置場などに留置しておくこと」です。

逮捕後起訴されるまでの身体拘束期間は最大23日間

 その後勾留が認められると、原則として10日間以内の身柄拘束が行われます。またやむを得ない場合、さらに10日間延長される場合があります。つまり、逮捕後起訴されるまでの身体拘束期間は最大で23日間です。もし捜査が23日間を越える場合は、被疑者は釈放され、在宅事件として手続きが行われます。

ちなみにもし起訴された場合、日本での有罪率は99%以上と言われています。この理由は、検察官が今ある証拠で証明できるかどうかを真剣に検討したのち、証明できると判断した事件だけを起訴しているから、ということのようです。

<参考サイト>
書類送検とは 前科はつく?逮捕との違いとその後の流れを解説|刑事事件弁護士ナビ
https://keiji-pro.com/columns/161/
起訴/不起訴ってなんですか?|刑事事件弁護士アトム
https://atombengo.com/qa/kiso
逮捕の種類は3パターン!通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕の違いとは|刑事事件弁護士相談ナビ
https://wakailaw.com/keiji/4586
勾留請求が行われる理由は? 逮捕後の拘束を回避する方法について解説|弁護士コラム
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/5724/
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