テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.03.30

なぜ夕方に「夕焼け小焼け」の曲が流れるのか

 夕方になると街のスピーカーから流れる「夕焼け小焼け」、通称「夕焼けチャイム」。外で遊んでいてもその音がなると家に帰る、という子どもの頃の懐かしい記憶を思い起こす人も多いでしょう。しかし、流れる曲は「夕焼け小焼け」に限りませんし、自治体や季節によって時間が違うなど、そのルールは決まってないようにも感じられます。子どもの頃は家に帰る合図と思っていた夕焼けチャイムですが、なぜ毎日決まった時間に流れるのでしょうか?

夕焼けチャイムは「防災無線の点検のため」

 その理由は「試験放送のため」とのこと。というのも、街中に設置されているスピーカーは、防災無線の役割を持っています。もしもスピーカーの故障に気付けなかったら、必要な情報を伝えられずに住民を危険な目に遭わせてしまうかもしれません。そこで、試験放送として夕焼けチャイムを毎日同じ時間に流すことで、スピーカーに問題がないかを確認しているのです。

 ではなぜ夕方の放送なのでしょうか。それは住民の生活の邪魔にならない時間帯だからといわれています。また、毎日サイレンが鳴ると不必要に不安を煽ってしまったり、いざというときに緊急性が伝わらない恐れがあるため、夕焼けチャイムにはサイレンではなく音楽やチャイムが採用されているのです。

夕焼けチャイムがない地域も

 ここまで読んできた人の中には「昔から夕焼けチャイムなんて聞いたことがない」という人もいるでしょう。夕焼けチャイムは義務化されているものではないので、夕焼けチャイムを導入していない自治体もあります。また、そもそも防災無線を整備していない自治体もありますので、夕焼けチャイムに馴染みがないことは珍しいことではないのです。

自治体ごとにさまざまな夕焼けチャイム

 夕焼けチャイムは時間や曲(もしくはチャイム)も特にルールがあるわけではないので、自治体によってさまざまな曲やチャイムが流れてきます。通年同じ時間、同じ曲の自治体もあれば、季節によって時間を変える、季節によって曲を変える自治体もあり、その特色はさまざまなのです。

 チャイムであれば「ウエストミンスターの鐘」が、曲であれば「夕焼け小焼け」や「ふるさと」などが定番ですが、その他にも市歌を流すなど、地域ならではの選曲の場合も。その他にも全国にはさまざまな夕焼けチャイムがあります。

 福島県須賀川市では、夕方5時半には「帰ってきたウルトラマン」が聞こえてきます。これはウルトラマンの故郷「M78星雲 光の国」と姉妹都市提携を結んでいるため。朝には「ウルトラセブン」が響き渡り、住民にとってはウルトラマンが身近な存在になっています。

 X JAPANのリーダーYOSHIKIさんが出身の千葉県館山市では「Forever Love」が採用されています。ちなみにこの曲は館山駅の発車メロディーにもなっています。館山市民は聞かない日はないメロディーとなっているようです。

 宝塚歌劇団が本拠地を置く兵庫県宝塚市では、宝塚の名曲「すみれの花咲く頃」が流れるそうです。この曲は宝塚歌劇団の父ともいわれる演出家の白井鐵造の故郷、静岡県浜松市天竜区春野町で先に採用され、のちに宝塚市でも採用されるようになりました。

夕焼けチャイムを楽しむ人も

 調べてみると、各地の夕焼けチャイムのみならず、防災無線チャイムを調査している人や、映像に収めて動画を公開している人も。上記で紹介したように地元の人にとっては当たり前でも、知らない人にとっては新鮮なものがたくさんあることが分かりました。いつもと違う土地にいったときには「ここではどんな夕焼けチャイムが流れるんだろう?」と聞いてみるのも面白いかもしれません。

<参考サイト>
・意外と違う「夕焼けチャイム」 緊急事態宣言でコロナ対策も:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/82621
・X JAPANのリーダーYOSHIKIさん(館山市出身)作曲の「Forever Love」が市内のあちこちで流れています! | 館山市役所
https://www.city.tateyama.chiba.jp/kikaku/page100022.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

人間はどうやって「理解する」のか?『学力喪失』から考える

人間はどうやって「理解する」のか?『学力喪失』から考える

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
3

軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか

軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか

クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策

台湾でのクーデターを想定したとき、重要になるのがその成功後の民政移管である。それは民主主義を標榜する民進党の正統性を保つためであるが、それはいったいどのように果たされうるのか。一度は民主化に成功した李登輝政権時...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/11
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
4

仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考

仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考

『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない

新著『還暦からの底力』のなかには、「人生100年時代」を幸せに送るためのヒントが詰まっている。今回のシリーズでは、その本をもとに考え方の軸を根本から変える秘訣を伺った。その一つが「定年型社会」に対する提言だ。本人が...
収録日:2020/06/30
追加日:2020/08/01
出口治明
立命館アジア太平洋大学(APU)学長特命補佐
5

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授