社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.05.11

その価値2億円!?盆栽はなぜ高額なのか

〝一流芸能人〟も悩む盆栽の目利き

 お正月恒例のTV番組、「芸能人格付けチェック」を毎年楽しみにしている方は多いのではないでしょうか。お肉やワイン、音楽などの〝本物〟と〝偽物〟をチーム分けされた芸能人たちが当てていく人気番組ですよね。

 この番組内で多くの芸能人を悩ませてきたおなじみのチェックが「盆栽」です。2014年の放送では、1億円の盆栽をアーティストの西川貴教さんだけが見抜いて、「盆栽マスター」と呼ばれました。また2019年の放送では、アーティストのYOSHIKIさんが1億円の盆栽のチェックに正解し、チームを組んでいたアーティストのGACKTさんが、「自分だったら間違えていた」という発言をしています。この番組で不動の〝一流芸能人〟に君臨してきたGACKTさんでも悩んでしまうのですから、盆栽の真価を見抜くことがいかに難しいのかわかりますよね。

 盆栽は確かに風流で趣のある芸術品ですが、1億円などといわれてしまうと「なぜそんなに高価なんだろう?」と疑問に思うのも事実ではないでしょうか。盆栽の値段が高くなる理由を探ってみましょう。

盆栽の値段はどうやって決まる?

 高価なものがメディアに取り上げられやすいため、すべての盆栽が非常に高価と思っていらっしゃる方も多いかもしれません。しかし実際は、5000円以下で買えるものもたくさんあります。「ミニ盆栽」と呼ばれる、てのひらに乗る程度の小ぶりなものなら、1000円台で買えることも。盆栽の値段はとても幅広いのです。これは、盆栽の値段を決める要素に幅があるからといえるでしょう。その要素には、次のようなものがあります。

 樹齢:盆栽の価値を決める最大のポイントが樹齢といわれます。何人もの手で大切に世話をされてきた年月と希少性には、なにものにも代えがたい重みがあるのです。数百万や数千万円の値段がつく盆栽には、樹齢百年を超えているものが多いです。

 樹形:幹の湾曲や枝ぶりに芸術性があるかどうかも価値を決める重要なポイントです。基本的にはうねりや偏りが少なく、枝の曲がり具合や張り出しが左右でそろっていると高評価になります。なかには、極端に偏った造形が逆に高く評価されるものもあります。

 制作者:権威や人気のある盆栽職人が制作した盆栽は高価になる傾向があります。これは腕が確かな職人が制作した結果、芸術性が高くなるからともいえます。

 所持者:歴史上の偉人など、有名な人が所持していた来歴のある盆栽は箔がつくため、高価になります。

 鉢:樹そのものだけでなく、樹を植えている鉢に骨董品としての価値があれば、そのぶん高価になります。

 盆栽の値段は、さまざまな要素から決められているのですね。特に樹齢は幅が広く、古いものほど希少価値とともに値段が上がるため、仰天するほど高価な盆栽になることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

こんなに高額の盆栽も

 冒頭でお話しした「1億円盆栽」の制作者は、日本を代表する盆栽職人の小林國雄さん。2014年の作品は黒松の「翔鶴」、2019年の作品は真柏の「清風」といい、どちらも小林さんが館長を務める春花園BONSAI美術館で見学できます。1億円の盆栽が複数存在しているなんて、驚きですよね。しかし実は、もっと高価な盆栽も実在するのです。

 それが、2019年から2020年にかけてはままつフラワーパークで開催された大物盆栽展に登場した、黒松の「小豆島」。なんと2億円もの値段だとか。推定樹齢が200年とされていますから、江戸時代から大切に育てられてた盆栽なのですね。

 そして、日本からワシントンの国立樹木園に寄贈された盆栽には、値段がつけられないとされています。その盆栽は樹木園内の盆栽・盆景博物館に展示されている樹齢約400年の五葉松で、「ヒロシマ・サバイバー」という名前です。1945年に広島に原爆が投下されたとき、爆心地の近くで育てられていながらも枯れることがありませんでした。樹齢が高いことはもちろん、このような奇跡的な来歴を持つため、値段がつけられないのです。

 盆栽はひとつひとつが手をかけて育てられた、唯一無二の美術品だからこそ高価になります。近年はすぐに盆栽を始められるキットなども販売されていますから、唯一無二の盆栽を自らの手で育てるのも楽しいですよ。

<参考サイト>
・盆栽Q 盆栽は本当に高いのか!?盆栽の値段の決め方とお得な入手方法紹介
https://bonsaiq.jp/archives/1178
・盆栽エンパイア 盆栽の価格
https://www.bonsaiempire.jp/blog/kakaku
・盆栽なび 盆栽の値付け・格付けされる際のポイントとは「樹齢?樹形?手間費用?」
https://bonsai-navi.com/archives/514
・2億円の大物盆栽が圧巻!オリンピックでもお披露目!? in はままつフラワーパーク│旅女レポ
https://tabijodo.com/japan/shz/flowerpark_bonsai.html/amp
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
2

『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価

『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価

歴史の探り方、活かし方(5)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈下〉

豊臣秀次事件に対する見方を変えた『武功夜話』だが、実は偽書疑惑もある。今回は、そのことに鋭く迫っていく。『武功夜話』は、豊臣秀吉に仕えて大名まで上り詰めた前野長康の功績を中心に記された史料だが、その発表・出版の...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/28
3

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
4

歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方

歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方

編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる

この人生を生きていくうえで、「歴史」をひもとくと貴重なヒントにいくつも出会えます。では、実際にはどのように歴史をひもといていけばいいのか。

今回の編集部ラジオでは、歴史作家の中村彰彦先生がご自身の方法論...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/27
5

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使