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消滅の危機にある日本の「方言」とは
2013年に社会現象にもなったNHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」。主人公が驚いたときに口にする「じぇじぇじぇ!」は、その年の流行語大賞にも選ばれました。この「じぇじぇじぇ」は岩手県沿岸の方言のひとつです。岩手県内だけでも、「ざざざ」「さささ」「ばばば」など、驚きを表す方言はさまざま。
このように、日本にはじつにたくさんの方言があります。しかし近年、そんな方言が消滅の危機にあると言われているのです。どうして方言は使われなくなってしまったのでしょうか?
なかでも、もっとも深刻なのが日本列島北部、とくに北海道の先住民族であるアイヌの人々が使用する「アイヌ語」。続けて危機が大きいものは、石垣島などが含まれる八重山列島で使用されている「八重山語(方言)」と、与那国島で使用される「与那国語(方言)」。そして、「八丈語(方言)」「奄美語(方言)」「国頭語(方言)」「沖縄語(方言)」「宮古語(方言)」とされています。
また、言語の危機にあるのは上に述べたような言語・方言だけでなく、日本各地の方言も消滅の危機にあるのです。
方言学者である佐藤亮一氏の著書「滅びゆく 日本の方言」(新日本出版社)によると、「方言(dialect)とは、それぞれの地域の人々が話している言語である。厳密に言えば、その地域に生まれ育った人が、同じ地域の親しい人と話すときのことば(の総体)である。」としています。
日本語をベースにしていても、独得の発展をしているため、その方言を知らない人には聞き取れない、何を言っているかわからないという事例もあります。過去には、秋田弁で歌った「大きな古時計」が「フランス語に似ている」と話題になったり、第二次世界大戦時には、鹿児島弁が暗号代わりになっていたというエピソードもあるなど、方言は多種多様な存在です。
「共通語があるのだから、方言なんてなくしてもいいじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。しかし、方言は各地に根付いている文化と同様に、それぞれの地域を象徴する存在です。言葉と文化は強く結びつき、方言を守ることは、各地の文化を守ることにも繋がるのです。
また、方言を観光業と結びつけ、近年は観光誘致に活用するという例も増えています。「めんそーれ」(沖縄)、「おいでやす」(京都)、「来(か)さまい」(青森)、「きんさい」(島根)など、観光PRに方言を使うことはその土地らしさをアピールすることにもつながっています。
きれいな共通語、または標準語を話せることがステータスという時代もありましたが、いまは自分のルーツや、生まれもってのアイデンティティを、個性として見せていく時代。自分の生まれ育った地域の方言を、見直してみるのはいかがでしょうか?
このように、日本にはじつにたくさんの方言があります。しかし近年、そんな方言が消滅の危機にあると言われているのです。どうして方言は使われなくなってしまったのでしょうか?
消滅の危機にある日本の8つの言語・方言
平成21年に、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が消滅の危機にある言語をまとめた「Atlas of the World’s Languages in Danger」を発表しました。これによると、世界には約2,500に上る言語・方言(ユネスコは言語と方言を区別せず、言語で統一しています)が消滅の危機にあるとされています。この約2,500言語のなかには、日本の8つの言語・方言も含まれていました。なかでも、もっとも深刻なのが日本列島北部、とくに北海道の先住民族であるアイヌの人々が使用する「アイヌ語」。続けて危機が大きいものは、石垣島などが含まれる八重山列島で使用されている「八重山語(方言)」と、与那国島で使用される「与那国語(方言)」。そして、「八丈語(方言)」「奄美語(方言)」「国頭語(方言)」「沖縄語(方言)」「宮古語(方言)」とされています。
また、言語の危機にあるのは上に述べたような言語・方言だけでなく、日本各地の方言も消滅の危機にあるのです。
同じ地域に生まれ育った人々が共有する言葉
アイヌ語は日本語とは異なる文法を持ち、「日本の方言の一種」か「独得の言語」かというのは議論がなされている言葉です。そんなアイヌ語のなかでも方言があり、地方によって発音や使用している単語が違うのだそう。ではそもそも、方言とはどういったものなのでしょうか?方言学者である佐藤亮一氏の著書「滅びゆく 日本の方言」(新日本出版社)によると、「方言(dialect)とは、それぞれの地域の人々が話している言語である。厳密に言えば、その地域に生まれ育った人が、同じ地域の親しい人と話すときのことば(の総体)である。」としています。
日本語をベースにしていても、独得の発展をしているため、その方言を知らない人には聞き取れない、何を言っているかわからないという事例もあります。過去には、秋田弁で歌った「大きな古時計」が「フランス語に似ている」と話題になったり、第二次世界大戦時には、鹿児島弁が暗号代わりになっていたというエピソードもあるなど、方言は多種多様な存在です。
方言コンプレックスと隠される方言
一方で、方言を話すことに抵抗のある若い世代が多いことも事実です。「時代遅れ」「カッコ悪い」「田舎者と思われたくない」といった理由から、少しずつ方言離れが進んでいきました。戦前は方言しか話せない人もめずらしくありませんでしたが、ラジオやテレビの普及によって、共通語を耳にする機会が増え、話す相手に合わせて方言と共通語を使い分けることが一般的になっていったのです。そんななかで、方言に対してマイナスなイメージを抱く人は増えていきました。〝方言コンプレックス〟を感じ、方言を隠そうとする人も少なくないのです。「共通語があるのだから、方言なんてなくしてもいいじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。しかし、方言は各地に根付いている文化と同様に、それぞれの地域を象徴する存在です。言葉と文化は強く結びつき、方言を守ることは、各地の文化を守ることにも繋がるのです。
方言も自分の個性になる時代
〝方言コンプレックス〟がある一方で、〝方言コスプレ〟という言葉をご存じでしょうか? 近年、その地域出身でなくても、SNSや日常会話のなかで「○○だべ」「○○やろ」といった言葉を使う人は少なくありません。むしろ、共通語と大きな差がない方言地域では、くせの強い方言に憧れるという人もいます。そうした、出身者でない人が使う方言を、〝方言コスプレ〟と呼ぶのです。また、方言を観光業と結びつけ、近年は観光誘致に活用するという例も増えています。「めんそーれ」(沖縄)、「おいでやす」(京都)、「来(か)さまい」(青森)、「きんさい」(島根)など、観光PRに方言を使うことはその土地らしさをアピールすることにもつながっています。
きれいな共通語、または標準語を話せることがステータスという時代もありましたが、いまは自分のルーツや、生まれもってのアイデンティティを、個性として見せていく時代。自分の生まれ育った地域の方言を、見直してみるのはいかがでしょうか?
<参考サイト・参考文献>
・文化庁・消滅の危機にある言語・方言
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/index.html
・『誤解されやすい方言小辞典』(篠崎晃一著、三省堂)
・『滅びゆく 日本の方言』(佐藤亮一著、新日本出版社)
・文化庁・消滅の危機にある言語・方言
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/index.html
・『誤解されやすい方言小辞典』(篠崎晃一著、三省堂)
・『滅びゆく 日本の方言』(佐藤亮一著、新日本出版社)
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