社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.06.28

少しの飲酒ならOK?世界の仰天「交通ルール」

 日本の高速道路の制限速度は、基本的に100km/hです(2022年現在、120km/hの実験区間を除く)。一方、世界を見渡すと制限スピードはさまざま。特にドイツの高速道路「アウトバーン」の一部区間では無制限(推奨は130km/h)となっています。実際に現地では200km/hオーバーで日常的に走行しているひとたちもいるようです。ということで、ここでは日本では考えられない世界の交通ルールを見てみましょう。

少しの飲酒なら捕まらないフランス

 フランスは日本に対して飲酒運転に対する基準がだいぶ緩く設定されています。日本では呼気中アルコール濃度が0.15mg以上で酒気帯び運転となり処罰の対象となりますが、フランスでのこの基準は0.25mg以上とけっこう緩いです。このあたり、フランスでは「男性はワイン2杯、女性は1杯までなら運転可能」と言われているそうです。

ちょっと怖い気もしますが、一般的に西洋人は日本人よりも体質的にアルコールに強い人が多いことも関係しているかもしれません。またフランスはワインと美食の国、お酒についての価値や感覚は日本とは異なることも想像できます。身体的相違や文化的相違による交通ルールの相違なのではないでしょうか。

線路の手前で一時停止してはいけないアメリカ

 「踏切前での一時停止」は日本では必須です。踏切の前では必ず「一時停止したのち窓を開けて音を確認する」と教習所で皆さん教わります。しかし、アメリカでこれをやると逆に危険行為とみなされます。ただし、バスや大型トラックは一時停止が義務付けられており、またもちろん一般車両でも警報機が鳴っているときは停止します。

 これはアメリカにとどまらず、ほかの多くの国でも共通しているルールのようです。むしろ日本が特殊と考えていいかもしれません。ではなぜ日本ではこのような一時停止が求められるのでしょうか。これは日本では鉄道網が街中を細かく走っていることと関係するようです。このことよって日本では警報機がない踏切も多く、踏切の先で渋滞する場所もあります。海外の都市部は地下鉄が発達していることも多いことから、そもそも都市部に踏切が少ないという事情もあるようです

欧米の道路は路駐していいように作られている

 日本は路上駐車に対する取り締まりが厳しい国です。特に2006年6月の道路交通法の改正以降、違法駐車の取り締まりは強化されています。また、日本では新車中古車を問わず、自動車購入時には車庫証明が必要です。つまり日本では、駐車場でなければ駐車できず、駐車場がなければそもそも車を保有することもできません。一方、欧米では路肩がそのまま公的に認められた駐車スペースだったりします。また、駐車場を借りなくとも路上駐車を基本として車を保管することも可能です。

 この背景には、欧米ではそもそも道端に車を置くことを前提として、街づくりされているという点があります。その代わり裏道などの駐車禁止エリアに止めると、すぐに取り締まられるようです。またこのことから、ヨーロッパでは狭い隙間に止めることができるような、全長の短い車が重宝されるとのこと。

狭い島国ならではの法律

 日本は山が多い島国です。ここで1億人以上が暮らしています。つまり限られた平地に多くの人が住み、都市部がうまれています。こういった事情が、欧米諸国とは大きく異なる点と言えそうです。日本では広くてまっすぐな道路を作るにはお金がかかります。直線で大きな道路作ることは容易ではないことから、速度無制限とはいきません。

 限られた土地に張り巡らされた道路を有効に活用するには、路上駐車も取り締まる必要がうまれ、線路はどうしても街中を通ることになります。こういった特殊事情の中で、日本の交通ルールの一部は独自の進化を遂げてきたとも言えそうです。ということで、海外を訪れる際には、日本と海外の交通ルールの違いを事前にしっかり確認しておくことは忘れずに。

<参考サイト>
世界の「交通ルール」は驚きがいっぱい!欧米とアジアにはこんなルールが|GAZOO
https://gazoo.com/column/daily/21/01/31/
ワインを飲んでも運転してよい?!世界の意外な交通ルールをご紹介!|CarMe
https://car-me.jp/articles/17906
クルマ好きなら死ぬまでに1度は走れ! レーシングドライバーが推すドイツのドライブルート3選|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2019/11/448382/
ヨーロッパ各国における自動車の安全要件(世界の交通ルール)|JAF
https://jaf.or.jp/common/global-support/global-traffic-rules/equipment
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味

「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味

逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者

西洋には逆境は神が与える運命という考え方があり、その運命をいかに克服するかを考えたのがストア派だった。しかし、神道が説くように「ヒトもカミ」であれば、それに気づく瞬間は逆境の中にこそ存在するはずである。「他者で...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/20
2

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会

渡部昇一氏には、若き頃に留学したドイツでの体験を記した『ドイツ留学記(上・下)』(講談社現代新書)という名著がある。1955年(昭和30年)から3年間、ドイツに留学した渡部昇一氏が、その留学で身近に接したヨーロッパ文明...
収録日:2021/08/06
追加日:2021/10/23
渡部玄一
チェロ奏者
3

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
4

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない

「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会

アメリカが日本の運命を左右する国であることは、安全保障を考えても、経済を考えても、否定する人は少ないだろう。だが、そのような国であるにもかかわらず、日本人は、本当に「アメリカ」のことを理解できているだろうか。日...
収録日:2022/11/04
追加日:2023/01/06
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
5

大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは

大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは

大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み

大谷翔平選手は今や野球界だけでなく世界中のスポーツ界の象徴的存在だが、本人は「自分も最初からこの体と技術があったわけではない」と努力と練習の成果を強調している。いったいどんな出会いやプロセスが彼を育ててきたのか...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/03
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト